全日本F3選手権は27日、岡山国際サーキットを舞台に第10戦/第11戦の予選と第10戦決勝レースが行われ、2戦ともにポールポジションを獲得したのは山下健太(PETRONAS TOM’S F312)。同じくF3-Nでも小河諒(KeePer TOM’S F306)が2戦連続で予選トップとなった。第10戦決勝レースでは高星明誠(B-MAX NDDP F3)がスタートを決めて、逆転を果たしそのまま逃げ切って今季2勝目をマーク。F3-Nでは小河が違反スタートのペナルティで遅れ、三浦愛(EXEDY RACING F307)が今季3勝目を飾った。
金曜日の専有走行は、2セッションとも雨に見舞われ、特にひどかった午前中のセッションは走らなかったドライバーもいたほど。午後のセッションは、やや雨足も弱まって全員が走行したが、その雨も夜半のうちに上がって、土曜日の予選はレースウィークで初めてのドライコンディションで競われた。
まずは第10戦の予選で、前半をリードしたのはニック・キャシディ(PETRONAS TOM’S F314)だったが、後半は伸び悩んで高星、そして1分23秒677を記録したチームメイトの山下の逆転を許してしまう。続いて行われた第11戦の予選も、同じような状況に。後半にしっかりまとめ上げて1分23秒403にまで短縮を果たした山下、そして高星に続く3番手にキャシディは甘んじた。山下は「クルマのバランスも良く、予選は2回とも1周きっちりまとめられました。決勝はスタート次第です」と語った。
一方、F3-Nでは小河が2戦ともトップ。小河は「チームが完璧なクルマを用意してくれたので、最初の予選は僕のミスもありましたが、それでもトップになれて。2回目はミスもなく、走りもアジャストしたら、さらにタイムを縮めることができました」と予選後に語った。F3-Nの2番手と3番手は2戦ともに三浦愛、DRAGON(B-MAX Racing F308)が獲得している。
予選終了から約3時間を経て、早くも決勝レース第10戦のスタート進行が開始された。相変わらずサーキット上空には灰色の雲が浮かんでいるが、降り出す気配はまったくなし。注目されたスタートだが、山下も決して悪くなかったものの、絶妙のダッシュを決めたのが高星だった。そして、1コーナーでインを刺し、高星がトップに。このふたりにルーカス・オルドネス(B-MAX NDDP F3)がひとつポジションを上げて続き、7番手から福住仁嶺(HFDP RACING F312)が4番手にジャンプアップしたのに対し、キャシディは5番手に後退。
間もなく4台でのトップグループが形成され、それぞれ等間隔で続いていったのに対し、キャシディはついていくことができず単独走行に。その上、誰も大きなミスを冒さず、均衡状態が続いていたため、山下はファステストラップを獲りに行く。11周目に狙いどおり獲得するも、それを知った高星も13周目に更新。だが、次の周には山下が再更新を果たし、貴重な1ポイントを追加した。
結局、スタート直後を除けば、上位陣に一切順位の変動はなく、逃げ切った高星が第1戦以来となる、今季2勝目をマークすることとなった。2位でゴールの山下は、ランキングトップのキャシディに2ポイント差にまで接近。そして、3位のオルドネスは、第6戦の岡山以来となる表彰台を獲得した。
「いつも以上にスタートに集中して、うまく1コーナーで前に出ることができました。同じペースで走られても抜き返されることはないだろうと思っていましたが、想像以上に山下選手は速くて、中盤にやっと間隔が空いたと思ったら、ファステストラップを獲りに行っていて。僕もタイヤを傷めてもいいから、取り返そうと思ったんですが、ダメだったのがちょっと悔しいですけど、第1戦以来勝てずにいたので、優勝できたことは素直に嬉しいです。クルマのポテンシャルはどんどん上がってきているので、明日も勝てるように頑張ります」と高星はレース後に語った。
一方、F3-Nでは好スタートを切って、三浦愛を抑えたと思われた小河だったが、スタート違反があって、ドライブスルーペナルティを科せられることに。3周目に最後尾に落ちるも、そこからの激しい追い上げで11周目には3番手に再浮上。その時点で9秒ほどあったDRAGON(B-MAX Racing F308)との差も徐々に詰めて、最終ラップのWヘアピンで2番手に浮上する。その間にもトップの三浦愛は、まったく危なげない走りを見せて、逃げ切りに成功。今季3勝目をマークした。
「小河選手がペナルティを受けたこともあり、今回も運が良かったなと思う部分はありますし、まだまだクルマもドライバーも差はありますが、今できる自分のベストは尽くせたので、優勝できて良かったです」と三浦愛。そして、「人生の厳しさを、(小河に)もっと教えておけば良かった」と、DRAGONは定位置脱出となる2位獲得ならず、苦笑いするのみだった。