スーパーGT第7戦は4日、タイのチャーン・インターナショナル・サーキットで予選が行われたが、ポールポジションを獲得したアイモバイル-AASのポルシェの他にも、トヨタ・チーム・タイランドから参戦しているGT300マザーシャシー使用のトヨタ86が、地元チームとして大いに注目を集めている。このマシンをドライブする土屋武士に、ここまでの状況を聞いた。

 このGT300マザーシャシーは、これまで購入してすぐに速さをみせることができる市販レーシングカー、FIA-GT3車両に対し、日本のモノづくりを守り、レースエンジニアリングを育て車種バラエティを増やしたいと言う意図で、GTアソシエイションが中心となって開発したもの。このトヨタ86ベースのプロトタイプは、8月の第6戦鈴鹿でお披露目され、土屋が中心となってステアリングを握り9月11日に岡山でシェイクダウンされた。

 その後、マシンはタイに空輸され、積極的にモータースポーツ活動を行うトヨタ・チーム・タイランドからのエントリーとして、第7戦タイでデビューを迎えた。お披露目からシェイクダウンではシルバーのカラーだったが、トヨタ・チーム・タイランドのホワイト、レッド、シルバーのカラーに彩られ、金曜走行では16番手につけたが、予選日は少しずつタイムが周囲から置いていかれる形となり、予選でもフロントカウルが緩んでしまうトラブルで、満足に走行できなかった。

「昨日から順調に滑りだしたんだけど、最後にちょっと壊れ、今日は走り出しで壊れ……。初期トラブルなので仕方ないんですが」と予選後、土屋は語った。

 まだまだトラブルは出てきそう……という状況ながら、土屋の表情は明るいままだ。それというのも、今回土屋はエースドライバーとしての役割の他に全体のマネージメントやエンジニアも任されており、「個人的には超面白い。こんなオモチャを与えてくれてありがとうございます……みたいな(笑)」と、GT300マザーシャシーを育てる状況が楽しいのだという。

「エンジニアを目指していたり、やっていたりする人にとっては、FIA-GT3はあまり面白くないでしょ? GT500はある程度メーカーの縛りがある。でもこれは自由だもん。やればやるほどいろんなことが見えてくるし、いろんな人に聞けるからね。トムスの東條(力)さんやルマンの(山田)健二さん、童夢の(田中)耕太郎さんなんかにも聞いて、あの人たち教えたがりだから(笑)。『いいな〜』って言いながら教えてくれる」

「自分もエンジニアの駆け出しみたいなものだけど、こんないいものをやらせてもらえるなんて最高ですよ(笑)」

 土屋はスーパーGTのみならず、日本のモータースポーツ史に残る名ガレージであるつちやエンジニアリングを引き継ぎ、チーム・サムライとしてGT300復帰を目指している。そんな土屋にとって、このGT300マザーシャシーは「レーシングガレージ、レース屋としては切望していたものだね」と言う。

「コストも安いし、骨格がしっかりしているから、なんとでもなる。今、仕事でこれを触らせてもらっているのは素晴らしい。今はなんとかしてこれで“遊べる”方法を考えたいね。みんなすごくお金かかると思っていると思うけど、ウチみたいなレーシングガレージにとっては、GT3を買うより圧倒的に安いよ。情熱があるんだもん。ホントにちゃんと作るとしてどこかに任せたいんだったら、ウチとジョイントするなら安いよ。だってやりたい人がいるんだから」

 トヨタ・チーム・タイランドの情熱にも支えられ、土屋は86マザーシャシーを鍛え続けている。作業を続けるタイ人メカニック、熟練の日本人スタッフの下にはGTA坂東正明代表をはじめ、多くのスーパーGTの歴史を支えてきた“レース屋”たちが訪れ、様子を見守っていた。日本のレース界の未来を切り拓くマザーシャシー、その緒戦はいかに。

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