2012年に18歳で全日本F3選手権チャンピオンに輝き、現在は21歳ながらスーパーフォーミュラとスーパーGT500クラスというふたつの国内トップカテゴリーに参戦している平川亮。スーパーフォーミュラでは、KYGNUS SUNOCO Team LeMansに所属し、2013年からシリーズを戦っている。

 3年目のシーズンとなる今年は、12年ぶりに国内復帰を果たした小林可夢偉をチームメイトに迎えるとともに、エンジニアリング体制も変更となり、取り巻く環境にも変化があった。そんな中、平川自身はスーパーフォーミュラでの今シーズンをどのように捉えているのだろうか。また、可夢偉をチームメイトに迎えたことで“得たもの”とは。

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●序盤戦の自己採点は“0点”
Q:それではまずはじめに、今シーズンの序盤2戦を振り返って頂けますか。(※このインタビューはスーパーフォーミュラ第3戦富士の現場で収録しました)

平川:開幕戦は全然うまくいかずという感じでしたが、第2戦では良くなりだして、予選でも6番手と、チームメイトの小林選手とほとんど差がない状況にできました。調子はだんだん良くなってきている感じはありますね。鈴鹿と岡山ではピットでミスがあったので、そのあたりが上手くいけば結果はすぐに出るのではないかと思います。

Q:今季からエンジニアが田中耕太郎さんに変わりましたが、新たな体制での手応えはありますか?

平川:あります。鈴鹿はちょっと違う方向にいってしまって結果も出なかったのですが、岡山はなんとなく歯車がかみ合ってきた感じで、富士はすごくいい方向にクルマがあるのではないかという感触はあります。(※直後の富士戦の結果は予選7番手/決勝6位)

Q:参戦3年目のシーズンとして、開幕2戦の自身の結果に点数をつけるとすると、何点くらいになりますか。

平川:0点ですかね。(開幕2戦の)どちらかで優勝していればもっと高かったかもしれませんが。

Q:平川選手のこれまでのキャリアを見てみると、全日本F3では開幕勝利を挙げて参戦初年度でチャンピオンを獲得、スーパーGTでもフル参戦初年度の初戦でポール・トゥ・ウインなど、各カテゴリーに参戦後すぐに優勝など結果を出してきた印象があります。一方、今年で参戦3年目となるスーパーフォーミュラでの最高位は2位となっていますが、その要因についてご自身ではどう考えていますか。

平川:F3までは、参戦ドライバーのレベルもそこまで高くはないので、なんとかいけていたのだと思います。また、スーパーGTはすごく自分の走り方に合っているクルマなので、それがうまく噛み合っているのではないかなと。一方でスーパーフォーミュラは、クルマのセッティングに関してできることがたくさんあるので、初年度や去年はまだ勘違いしている部分があったりもしました。ただ、今年に入ってどういうセッティングのクルマが速いのかというのがようやく見えてきたかなという気がしています。それと、スーパーGT開幕戦でポールポジションを獲って優勝したことで、自信がまた戻ってきたかなと感じていますね。

Q:セッティングが今年になって分かってきたというのは、エンジニアなど体制が変わったことも影響しているのでしょうか?

平川:スーパーフォーミュラでの体制もそうですし、スーパーGTではチームにドライバーが4人いて、その中でもいろいろな走り方やセッティングもあるので、その中で「こういうのがあるんだな」と学習した上で自分が成長していっていると感じています。

●可夢偉をチームメイトに迎えたことで“得たもの”
Q:今年からチームメイトが可夢偉選手となりましたが、レースを戦ったりともにイベントに参加したりする中で、どのような印象をもちましたか。

平川:サーキットでは、もちろんいちばん負けたくない選手ですね。でも、イベントなどでは特に意識せずにやっています。

Q:開幕前には、可夢偉選手から「盗んだり学んだりしたい」というお話もしていましたが、実際に得られたものはありましたか。

平川:もちろんありました。でもそれよりも、自分のスキルが通用するという自信がついたことの方が大きいと思います。小林選手はF1を何年も経験してきた選手ですが、僕も意外と戦えるスキルがあるなと逆に自信になりました。小林選手がクルマにもう少し慣れてきたらどうなるのか分からないですが、そうなったらそうなったで、また自分が成長できる機会にもなるはずですし。

Q:「自分のスキルが通用する」というのは、具体的にはどういった点でそう感じたのでしょうか?

平川:1周を走ったタイムのことですね。(小林選手と)1周の走り方は全然違うので、自分の走り方で全然通用するのだという点です。例えば岡山では、予選Q3のタイムはほとんど一緒でしたが、僕は6番手、小林選手は4番手でした。ただレースでは、僕はスタートで失敗しピットでもロスしたためそのまま後ろ、小林選手はスタートがうまくいって前に出られたのでそのまま前という結果になりました。でも、それだけなので、1周走る分においてはそんなに自分の技量がしょぼくはないと。(今後も)それをもっと磨いていけばいいかなと感じました。

Q:では逆に、チームメイトの可夢偉選手と比較してみて、現時点で足りていないと感じる点はありますか。

平川:やっぱり小林選手の方がセッティング能力はあると思いますね。クルマのこともよく知っていると感じます。僕はまだそこまでできていないなと。やっぱり経験値の差が大きいなとは思いますが、でもその分を埋められるように自分もエンジニアも努力しています。唯一、そこだけかなと思っています。

Q:ちなみに、平川選手と可夢偉選手のセットアップは近い方なんですか。

平川:全然とまでは言いませんが、結構違います。僕はどちらかというとブレーキングからハンドルを切るときにリヤが出ないクルマを求めていますが、話を聞いていると小林選手は立ち上がりで(アクセルを)踏めるクルマにしているような感じがあります。ドライビングスタイルの日本式とヨーロッパ式でいうと僕らふたりは似ているかなとは思いますが、求めるものが違うのかなと。鈴鹿のS字などは運転の仕方が全然違いますね。

●現在の目標はSF&SGT制覇
Q:ところで平川選手といえば、かねてからF1への目標を語っていましたが、将来的には現在もF1という目標はあるのでしょうか。

平川:今は、F1という目標はあまりないです。海外の方がレベルが高いのかというと、それもちょっとクエスチョンマークですし。もともとは(F1を)目指していましたが、その途中でトヨタがF1から撤退してしまったという状況もあり、ちょっと現実的ではないかなと。どちらかというと、今は日本で、スーパーフォーミュラとスーパーGTで両方のチャンピオンを獲れるように努力をしています。でも逆に、トヨタの中でいちばん速く走っていれば、何かしらの声があるのではないかと思っているんです。トヨタはWEC(世界耐久選手権)にも参戦していますしね。

Q:それでは最後に、今季スーパーフォーミュラでの意気込みをお願いします。

平川:ポールポジション獲得ですね。レースは運も絡んできますが、予選はやっぱりドライバーとチームとエンジニアの力なので、ドライバーとしてはポールポジションを獲ることで速さを証明したいと思います。優勝は……どうでもいいですね(笑)。

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 最後は21歳の若者らしくおどけてみせた平川。ただ、開幕2戦の結果を「0点」と斬り伏せるなど、口数こそ多くはないものの、“最速”を目指す意気込みが言葉の端々から伝わってきた。

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