GAZOO Racing 86/BRZ RACEの第1戦が30日、ツインリンクもてぎで開催され、阪口良平(AREA86倉敷)が谷口信輝(コウベトヨペット86)を振り切り開幕戦勝利を収めた。
2年目のGAZOO Racing 86/BRZ RACEが、ツインリンクもてぎから幕を開けた。今年は全10戦での開催となり、そのうち7戦のポイントが有効に。ポールポジションやファステストラップの獲得にもポイントがつくなど、ポイント制度に変更があった。
また、A・Bの2レース開催に加え、タワーバーやGPSロガーが装着可能になり、クラッチの選択が自由になるなど、レギュレーションにもいくつかの改訂が見られるが、そんなことなど一切忘れさせるほどの突風が開幕戦では吹き荒れていた。
現在、GR 86/BRZ RACEにタイヤを供給するのはブリヂストン、ヨコハマ、ダンロップ、グッドイヤーの4社。そのすべてがニュースペックのタイヤを投入し、全体的な底上げが予想されたのだが、突出していたのがヨコハマのポテンシャル。予選第1グループでは昨年のチャンピオンであり、BSユーザーの山野直也(CABANA BS μ 86)が2分20秒845をマークしてトップに立つが、第2グループでは谷口信輝の19秒343を筆頭に、青木孝行(ケーエムエス86レーシング)も20秒の壁をクリア。もちろんレコードを更新し、またトップ10のうち谷口と青木を含む、7人がYHユーザーだったのだ。
「練習より温度が上がっていたから19秒台に入るとは思っていなくて、僕は『入ったらカッコいいね』って言ってたの。そしたら、すっごい走りができて! タイヤもすごく進化した。レースのライフと雨は分からないけど、レースは絶対面白くなるよ」と谷口。
決勝レースが行われる日曜日は、朝からあいにくの雨模様。それでも予選46番手以下のドライバーによるBレースは、いったん雨がやんでDLユーザーの手塚祐弥(栃木スバルDLモチュールBRZ)が優勝を飾る。続いて行われたAレースのスタート時も雨は降ってはおらず、セミウェット状態となっていた。結論から言えば、濡れた路面でのYHタイヤのポテンシャルはドライ以上。フロントローからスタートした山野がオープニングラップだけで、5番手へと順位を落としたからだ。同じBSユーザーでも蒲生尚弥(ASICS Blue 86R)が気を吐き、4列目から2番手に浮上するが、その健闘は3周目までしか続かなかった。
スタートを決めた谷口が1周目終了時点でコンマ8秒のリードを奪い、後続の激しいバトルもあって3周目までは逃げ続けたものの、蒲生を攻略して2番手に上がった阪口良平が、その後ジワリジワリと迫ってくる。「予選の一発はなかったけど、雨ならいけるかと思っていて、実際ピットからグリッドに向かう間に、『これは絶対』と確信しました」という阪口は、6周目に谷口を完全に捕らえ、次の周のV字コーナーで前に出る。
ラスト2周で雨は再び降り始め、阪口はわずかにタイムを落としたものの、谷口を抑えたままトップでチェッカー。「セッティングがぴったりで、リヤが守られているかのような安定感があった。それで特に4コーナーが速かったんです」と阪口。一方、2位に甘んじた谷口は、「なにかあったわけじゃなく……。セッティングの差じゃないかな」とポツリ。確かに、上位の顔ぶれを見れば、これだけのメンバーで同じ道具を与えられたなら、ほんのわずかなセッティングの違いでスピードにも差が出るのは確かだが。
3位は青木が獲得し、終盤は単独走行。4位にはこれが初レースながら、ジムカーナの全日本N3クラスチャンピオンの若杉将司(mountain K-one 86)がつけ、この激しいバトルに高い適応力をみせていた。蒲生が5位でBSユーザーの最上位ながら、徐々に順位を落としていった山野は12位と、入賞すら許されず。「あまりにも悔しくて、その後のS耐にも影響を及ぼしそうだった」という。
何はともあれ、大幅な戦力図の変化があったGR 86/BRZ RACE。次回のレースは4月26〜27日のスポーツランドSUGOが舞台となる。このままYHユーザーが猛威を振るい続けていくのだろうか。