GAZOO Racing 86/BRZ Raceの第3戦が富士スピードウェイを舞台として6月7〜8日に開催され、グッドイヤーユーザーの服部尚貴(OTG GY 86)がシリーズ初優勝を飾った。クラブマンシリーズでは、遠藤浩二(CG ROBOTかえる君BS86)が2勝目をマークしている。
プロフェッショナルシリーズで激しいタイヤウォーズが繰り広げられているのは、もはや周知の事実。前回はブリヂストンユーザーの山田英二(CUSCO BS 86)がポールポジションを奪って話題を集めたものの、決勝レースではスタートの出遅れが響いて4位。谷口信輝(KTMS 86)が開幕2連勝を果たしただけでなく、ヨコハマユーザーが表彰台を独占していた。ヨコハマは、シリーズが二分化される前の昨シーズンにおいても、10戦すべて制するなど、たとえ予選一発の速さで引けはとっても、決勝では圧倒的な強さを誇っていた。
しかし、そんな状況についにストップがかかる可能性も出てきた。前回から新スペックを投入したグッドイヤーのユーザーである。今回は、金曜日の専有走行でも服部がトップに立っていたが、それがフロックでないことが予選で明らかになった。早々とアタックをかけた服部が2分5秒351をマークしてトップに立つと、そのタイムを誰も上回れなかったどころか、2番手の谷口ですらコンマ3秒の差をつけられたのだ。
「おっさんが頑張った! 去年はここ、Bレース行きだったんだよね(笑)。そのぐらい今までは勝負させてもらえなかったんだけど、前回からのニュータイヤにセットがようやく合ったという感じ。ただ、同じタイミングで走っていたヨコハマ勢は、次の周にセクター3で黄旗が出ていたから損していたのは間違いなくて、その点で言えばラッキーだったね。グッドイヤーの新タイヤは温まりが速いし、ロングもそう悪くないので、決勝も楽しみ」と予選を終えて語った服部。
一方、予選2番手に留まった谷口は「昨日の雨のせいでラバーが流れたのか、路面とセッティングが合っていなかったんで、ベストな走りができたわけじゃない。でも、フロントローだから良しとしたい。違うタイヤの人がまた前にいるから、どんな展開になるか分からないけど、いずれにせよ接戦なので、レースは楽しめそう」と語っていた。
3番手は近藤翼(神奈川トヨタ☆DTEC86R)で、新車投入の効果はてきめん。4番手は大西隆生(オートバックスG7 86ポテンザ)、5番手に今村大輔(Profi 86 T-MAN oil)が続き、6番手に阪口良平(AREA86倉敷)がつけた。
決勝レース開始前まではどんよりとした曇り状態だったものの、スタートではまるでタイミングを合わせたかのように雲の切れ間から強い日差しが注がれた。フロントローのふたりは、ほぼ同じタイミングでスタートを切るも、ポールポジションにつけた利で、服部がわずかに服部が先行して1コーナーに飛び込んだ。オープニングラップのうちに服部と谷口が抜け出し、後続を引き離していく中、3〜4番手の近藤と大西はそれぞれポジションキープ。そして、阪口と今村がポジションを入れ替え合う。
ほぼ毎周のように、コースのいたるところで揺さぶりをかける谷口ながら、服部もベテランらしく技を駆使してクリーンにガードを固め続ける。もし、ふたりに誤算があったとすれば、その激しさゆえに近藤の接近を許してしまったことか。やがてトップ争いは三つ巴へと変わっていく。
そんな中、自己最上位を目指し6番手を走行していた今村に、スタート違反があったとしてドライビングスルーペナルティが下る。また、その後方を走っていた蒲生尚弥(ASICS Blue 86R)も、リヤバンパーが外れかかっていたことからオレンジディスクが提示される。このふたりの後退によって森山鉄也(BRIDE ADVAN 86R)が6番手に浮上した。
最終ラップに突入してもなお激しいトップ争いが続き、いつ谷口が仕掛けるのか注目されたが、決め手を欠いていたのは事実。最後の勝負どころとなるパナソニックコーナーで服部のインを刺した谷口だったが、そのさらにイン側には近藤が位置していた。「谷口さんのタイヤが厳しそうなのは分かったので、ここで行くしかないと」(近藤)と、谷口は最後のストレートで近藤に並ばれたばかりか、先行を許してしまう。この攻防により、何とか服部が逃げ切り、自身にとってもグッドイヤーにとっても初の優勝に成功した。
「いや〜、嬉しいけど、本当につらいレースだった。本当のことを言うと、ラップタイムで谷口にかなわないのは分かっていた。ただ、4速からの伸びは、ほんのちょっとだけ良かったんで逃げられたというか。ブロックもしたかったけど、下手なことをすると、まわりから何を言われるか分からないからね、立場的に(笑)。大阪トヨペットに無理を言って、このレースをやらせてもらって3年目。1年目に一度だけ2位になって、それっきりだったし、グッドイヤーにとっても初。メカニックたちが一生懸命やってくれて、うちのクルマがほんのちょっと速かったのは、グリスやオイルをしっかり吟味してくれたから。本当に感謝しています!」と優勝の喜びを語った服部。
3位の谷口に続いてフィニッシュしたのは、大西と阪口。やや間隔を空けて森山が6位となり、平中克幸(GY RACING 86)が7位を獲得している。
クラブマンシリーズでは、ポールシッターの遠藤がスタートで松原亮二(N群馬FKマッシモGY.μ86)の逆転を許すも、2周目のヘアピンで再逆転。いったんは独走態勢に持ち込むが、終盤になって近づいてきたのが、3列目からスタートして徐々に順位を上げてきた小野田貴俊(N東埼玉T埼玉KND2和光86)だった。最後は遠藤の真後ろまで迫った小野田だったが、遠藤はコンマ3秒差で振り切り、開幕戦以来の2勝目をマーク。「前半でタイヤを使っちゃったんで、本当に厳しいレースでした」とレースを振り返った。3位は橋本洋平(カーウォッチ86ポテンザED)が獲得している。
また、エントリーが45台を超えたため、初めて設けられたBレースではヒロ ハヤシ(林テレンプ86 Racing)が優勝、元プロ野球選手の山崎武司(OTG TN滋賀 86)は最終ラップまで6番手を走行していたが、スピンでひとつ順位を下げ、7位でゴールしている。