FIA-F4選手権シリーズの最終大会が、ツインリンクもてぎを舞台に11月14日〜15日に行われ、第13戦、第14戦ともに牧野任祐(DODIE・インプローブス・RN-S)が優勝。しかし、第14戦で坪井翔(FTRSスカラシップF4)が2位でフィニッシュし、初代チャンピオンに輝くこととなった。

 レースウィークの木曜日、金曜日はドライコンディションが保たれ、両日ともにトップタイムを記録していたのはポイントリーダーの坪井翔(FTRSスカラシップF4)。「金曜日はユーズドタイヤでもトップタイムが出せましたし、一発だけのタイムでもなかったので、まぁ大丈夫でしょう。土曜日のうちに(チャンピオンを)決めます」と語っていた。

 しかし、土曜日午前の予選は、一転してウエットコンディションに。直前までは雨も弱まっており、ドライタイヤでのアタックを望んでいた者もいたが、開始が近づくにつれて再び雨足は増してしまう。結局、全車が新品のウエットタイヤでの走行となった。

 先頭でコースインした坪井は、走り始めこそ順調にタイムを縮め続けていたが、やがて伸びを欠くように。逆に短縮し続けて、坪井を上回ることとなったのは牧野と根本悠生(GUNZE F110 KCMG)だった。牧野が最初に2分10秒台に乗せ、2分10秒304を記すると、その直後に根本は2分10秒218をマークしてトップに躍り出る。

 さらなる短縮が期待されたものの、それから間もなく赤旗が。降りしきる雨に足を取られ、コースアウトする車両が続出したからだ。約7分間の中断の後、残り13分強で計測は再開される。なかなかタイムアップが許されない状況の中、ひとり再び2分10秒台に入れたのが牧野だった。根本の最速タイムは上回れなかったものの、2分10秒630はセカンドベストタイムとしてはトップ。その結果、第13戦では根本が初めてのポールポジションを獲得し、第14戦は牧野がポールポジションを獲得することとなった。

「もともと雨は得意ですし、それにもてぎはスーパーFJや去年のF4-FCクラスで、いっぱい走って、何度も勝っているコースなので、イメージをしっかり作れて走れました。今年はまだ一度も表彰台に立っていないので、もし頂点に立ったら、座り込んでしまうかもしれません」と根本。そして、「特別なことはしていませんが、セッティングが今回はすごく合っていて、久しぶりにいい感じで走れました」と牧野。このふたりでフロントロウが独占される。

 3番手以下の順位は、第13戦が阪口晴南(DUNLOP SUTEKINA F110)、川端伸太朗(SUCCEED SPORTS F110)、大津弘樹(HFDP/SRS-F/コチラレーシング)、天野翼(Leprix Sport F110)で、第14戦は大津、川端、天野、番場琢(埼玉トヨペットGreenBrave)。坪井は「2、3周するうちに『ああ、これは出ないな』と感じて。赤旗が出たから、ピットで調整もしたんですが、それもあまりうまくいきませんでした。まぁ、予選よりも落ちることはないでしょうし」と、2戦とも9番手に甘んじたものの、すぐに気持ちを切り替えていた。

 決勝レース第13戦は、引き続きの雨。ポールシッターの根本はスタートの反応こそ良かったものの、その後の加速には優れず、牧野にトップを明け渡してしまう。これに続いたのは阪口で、川端をかわして大津が4番手に浮上。また、その後方では8番手の番場がエンジンストールで動けず、後続車両に追突されたことから、セーフティカーが導入されることになる。先導は2周で終わり、リスタートを完璧に決めらなかった牧野の背後にはピタリと根本が。そしてヘアピンでは大津が阪口の横に並んだものの、逆転するまでには至らない。一方、坪井はオープニングラップのうちに順位を上げて6番手。川端の真後ろにつけていた。

 4周目のV字コーナーで大津を川端がパス。次の周には川端が間隔を開け、ペースを思うように上げられない大津に坪井が襲いかかり、V字コーナーで5番手に浮上する。さらに順位を上げたい坪井ながら、先行する川端は少しも隙を見せず。結局、坪井は5位に留まった。そして、トップの牧野は最後には根本を引き離して、富士での第5戦以来となる5勝目をマーク。「首の皮一枚の差が、これぐらい広がりました」と指で1cmほどの幅を示してみせた。2位の根本、3位の阪口は、それぞれ初めて表彰台に上がることとなった。そして、川端と坪井に続く6位でフィニッシュしたのは、予選12番手だった山田真之亮(B-MAX RACING F110)となった。

 日曜日には天候が回復するとの予報はやや遅れ、雨は早朝まで降り続いてしまう。決勝レース第14戦が始まる頃にはやんだものの、まだ路面は濡れたまま。全車再びウエットタイヤを装着しての走行となった。今度は根本のスタートが良く、ポールシッターの牧野より先に1コーナーへ飛び込んだものの、アウトから大外刈りをかけられてしまう。トップを奪われた根本は、3コーナーで大津にも迫られるが、ここでの逆転は阻止する。

 そして、そのふたりの後ろに早くもつけていたのが、9番手スタートの坪井だった。スタートを決めたばかりか、オープニングラップのうちに華々しくオーバーテイクショーを披露して、4番手に浮上。その勢いで2周目のV字コーナーでは大津をかわして3番手と、チャンピオン獲得の必須条件を満たすこととなった。

 一方、その間にも逃げ続けていたのが、牧野だった。逆に根本は徐々に坪井との差が詰まっていき、防戦一方に。坪井の激しいチャージからは、勝ってチャンピオンを決めたいという強い意志がはっきり見てとれた。そして、8周目のV字コーナーで、ついに坪井は2番手に躍り出る。その時点で牧野との差は3秒強。残り4周とあっては、逆転は至難の技かと思われたが、勢いに衰えのない坪井は、みるみるうちに牧野との差を詰め、ラスト2周は完全にテール・トゥ・ノーズ状態にしてしまう。最終ラップのヘアピンでは横に並ぶも、完全には前に出られず、ダウンヒルストレートの先、90度コーナーでは黄旗も提示されていた。

 最後は、牧野がコンマ2秒差ながら逃げ切って最終大会の連勝を果たし、6勝目をマーク。そして、2位でのゴールとなったものの、坪井がチャンピオンに輝くこととなった。マシンを降りるなり、ふたりとも号泣。思いは対照的だったのは言うまでもない。3位は根本が獲得し、4位は自己最上位となる上村優太(HFDP/SRS-F/コチラレーシング)。5位は川端が、そして6位は予選11番手から5ポジション上げた河野駿佑(グッドスマイル 初音ミクF110)が獲得した。

「最後に連勝できましたけど、やっぱり悔しいです。チャンピオンを獲らなかったら、意味ないですから……。最後に坪井選手が抜きに来ていた時は、絶対に負けられないと。あれで抜かれていたら、この先の自分のレース人生は終わっていたと思います」と牧野。

「2戦とも今回は予選9番手で、何としても前に出なくちゃいけなかったのに、昨日はセット変更がうまくいかなくて。それで今日に向けては、昨晩じっくりミーティングをして、朝にガラッとセット変えてもらったんです。これがうまくいったので3番手まですぐ上がれたのですが、前半勝負のつもりだったのが、その後も案外タイムが落ちなくて。そうなったからには3位で十分とは思わなくなって、必死にプッシュし続けました。もう少し周回あったらとは思いますが、今はすごくうれしいです!」と坪井。表彰式が終わってからの表情は、非常に晴れやかだった。

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