FIA-F4選手権第5戦、第6戦が富士スピードウェイで8月8~9日に開催され、ポイントリーダーの牧野任祐(DODIE・インプローブス・Rn-S)が第5戦でポール・トゥ・ウィンを達成。しかし牧野は、続く第6戦は6番手スタートを強いられただけでなく、1コーナーの接触で順位を落とし連勝ならず。第3戦富士を制した坪井翔(FTRSスカラシップF4)が優勝し、今季2勝目をマークした。
FIA-F4は全戦がスーパーGTのサポートレースとして開催されるものの、前回のレースがタイ・ブリーラムで行われたこともあり、第5・6戦は3ヵ月ものブランクを挟んでの開催となった。もちろん、この間に練習を積むドライバーは少なくなく、ドライビングスキルを劇的に向上させてきた者も現れた。特に顕著だったのは金石勝英(SRS-F/コチラレーシング)で、決勝のスターティンググリッドを決める予選のファーストベストタイム、セカンドベストタイムともに最速。「前回の富士の後、ホンダさんにはいっぱい練習させてもらいました。これまで講師の方々や父のアドバイスは理解できていたのですが、いざという時に身体が反応しなくて。練習の結果、ようやく反応できるようになりましたね」と飛躍の理由を語っていた。
一方、かねてから「富士はあんまり得意じゃないんです」と語っていたポイントリーダーの牧野は、セカンドベストタイムで決まる第6戦の予選順位こそ6番手だったものの、第5戦のグリッド決定要素となるファーストベストタイムは「最後のアタックでは、奇跡的なタイミングでスリップストリームを使えました」と2番手タイムを記録。その上、最速タイム記録していた金石が、過去2大会のモラルハザードポイントによって第5戦のみ10グリッド降格のペナルティを受けたため、牧野はポールポジションから第5戦に挑むこととなった。
第5戦で牧野に続くこととなったのは、大津弘樹(HFDP/SRS-F/コチラレーシング)と高橋知己(点天&イーストアップwithフィールド)。ここ富士で、牧野に唯一土をつけている坪井は4番手からのスタート。苦手とするスタートを決めて、再び牧野に一泡吹かせることを誓っていた。
その第5戦スタート直後、1コーナーではアクシデントが発生。3番手スタートの高橋が接触で早々に戦列を離れ、さらにジャンプアップの期待がかかった金石がブレーキングでタイヤをロックさせ、コースアウトを喫してしまった。一方、好スタートを切った牧野は背後に続いた大津、そしてひとつ順位を上げてきた坪井とともに、難なく1コーナーをクリア。この3人が激しくトップを争い合う展開となった。
「ストレートにかけて向かい風が強く、ちょっとでもミスしたら逆転されると思っていた」と牧野。必死にガードを固めたことでペースが鈍る隙に、平木湧也(GSR初音ミクホリデー車検F110)が追いつき、トップは4人の争いに発展する。3番手の坪井は前を行く大津を抜き2番手へ浮上。しかし、7周目のダンロップコーナーで、大津からの猛攻を受け再び3番手へ後退すると、この間隙を突いてきた平木にもかわされてしまう。平木はここまでファステストラップを連発していたこともあり、いずれ牧野にも迫ることが予想された。
しかし10周目の1コーナーで接触があり、2台がコース上でストップ。即座にセーフティカー(SC)が投じられたが、SCランの間に100R出口で1台がスピン。予想以上にSCランが長引いた。この間も周回が重ねられていくが、FIA-F4選手権には“15周もしくは30分間で決勝レースは終了する”という規定があり、14周目にSC先導のままチェッカーが振られることとなった。
この結果、牧野が4勝目をマークし、大津が2位を獲得。平木が初めて表彰台に上がることとなった。「SCが入った時、正直もうダメだと思いました。再開されたら間違いなく抜かれるなと。でも、再開されずにセーフとなりましたね(笑)。予選同様、奇跡が相次いで勝利できました」と牧野。
日曜日に行われた第6戦では、今度こそ初めて金石がポールポジションからスタートを切ることとなった。しかし、「以前のレースでは普通にスタートが切れていたのですが、昨日のこともあって緊張していたみたいです」と、金石はスタートで3番手まで後退。代わって先頭で1コーナーに飛び込んだのは、2番手スタートの大津。2番手には順位をふたつ上げてきた坪井が続いた。
3番手スタートの平木がひとつ順位を落として4番手につけた一方で、1コーナーではまたしても接触が発生。このクラッシュでフロントウイングを曲げていたのは、6番手スタートの牧野。11番手まで順位を落としただけでなく、その後もペースを上げられず徐々に後退していってしまう。
一方、トップに立った大津も坪井から激しい追撃を受け、なかなか逃げ切ることができない。3周目までは毎周トップが入れ替わる展開となったが、4周目のダンロップコーナーで坪井がトップに浮上。坪井はペースをあげ、2番手大津をじわりじわりと引き離していった。
2番手に後退した大津は、3番手の平木、4番手の金石にも詰め寄られ、2位争いは三つ巴の展開となる。11周目の1コーナーで平木に抜かれた大津は、最終ラップの1コーナーで金石にも抜かれ、2戦連続の表彰台獲得はならず。その最終ラップには2番手の平木がトップを走る坪井に急接近したが、あと一歩のところで逆転ならず。平木は「あと1周あったら、とは思いますが、これでバトルにも強いドライバーだと認識してもらえたのでは」とレース内容には満足しているようだった。
今季2勝目をマークした坪井は、「苦手なスタートが過去最高と言えるほど決まって、1コーナーまでに2番手に上がれたことが、いちばん大きかったと思います。最初の3周は大津くんが速かったのですが、その後は後ろが競り合うよう仕向けました。この作戦がうまくいって、ギャップを生み出すことができたのは良かったですね。ここからチャンピオン獲得を目指して、巻き返しを狙っていきます!」と大喜び。3位は金石が獲得し、父・勝智氏を始めとする金石家のDNAをしっかり受け継いでいることを知らしめた。
スタート直後に他車との接触があった牧野は、26位でフィニッシュ。初めて無得点のレースとしてしまったが、「起きてしまったことは仕方ありません。この選手権は有効ポイント制を採用していますし、ここから先は好きなコースばかり。悔しさで言えば、(5月の)第4戦で2位に終わった時の方が大きかった」と語っていた。
次回のレースは鈴鹿サーキットが舞台。今回と同様、予想がつかないレース展開となるだろう。
