FIA-F4が初めて本州を離れて九州に上陸し、オートポリスを舞台にシリーズ第11戦、第12戦が10月31日〜11月1日に開催された。第11戦はスタートで前に出た坪井翔(FTRSスカラシップF4)が優勝、そして第12戦は山田真之亮(B-MAX RACING F110)が初優勝を飾っている。
30日の予選は、日差しは鋭いものの空気は冷たく、およそ九州らしくない雰囲気の中でスタートした。先頭でコースインしたのは坪井。完全にクリアラップが取れる状態で、2周目には1分51秒735に入れるなどさらなるタイムアップが期待されたが、3コーナーでコースアウトした車両があったため直後に赤旗が提示される。5分ほどの中断で再開されたものの、そこで坪井はポジショニングに失敗。集団に巻き込まれる形となって満足にクリアラップを取ることができず、1分51秒398を出すに留まってしまう。そんな坪井を上回って第11戦のポールポジションを決めたのが、1分51秒346をマークした大津弘樹(HFDP/SRS-F/コチラレーシング)。初めてのPP獲得に「納得の走りができました。何よりミスがなかったのが大きかったですね」と大津は嬉しそうに語る。
一方、セカンドベストタイムで決まる第12戦は、平木湧也(GSR初音ミク ホリデー車検F110)が1分51秒513のタイムをマーク。1000分の6秒差で山田を従える形で、こちらも初めてのポールポジションを奪う。ただし平木は「ポールを獲れたのは嬉しいですけど、走りには納得がいきません。練習とはフィーリングがガラッと変わってしまったこともあるんですけど……」と、眉を歪めていた。第11戦でポールポジションの大津は、第12戦では3番手。坪井は宮田莉朋(RSS TAKAGI RACING)に続く5番手に。その坪井とタイトルを争う牧野任祐(DODIE・インプローブス・RN-S)は第11戦が9番手、第12戦が8番手という結果に終わっている。
予選終了から3時間あまりで、第11戦のスタート進行が開始された。1台がピットスタートとなったものの、31台ものフォーミュラがオートポリスのスターティンググリッドに並んだのは、近年ではなかったこと。圧巻の風景に、スタンドの観客も固唾を飲んだに違いない。注目のスタートを決めたのは、2番手の坪井だった。逆にポールシッターの大津は「反応は良かったんですが、クラッチをつないだ時に回転が落ちてしまって」と、坪井の先行を許す。
その後は坪井のひとり舞台に。というのも、中盤までファステストラップを連発して、早々と独走態勢に持ち込んでいったからだ。「予選は失敗しただけで、決勝は51秒台で走れる自信がありました。だから、スタートで前に出られれば大丈夫だと思っていて、実際その通りになりましたね。実は今回からスタートのやり方を変えていて、練習でいい感じだったんで自信もあって。トップに立ててからは自分の走りができました」と、坪井は6連勝に満足そうな表情を見せた。さらに、続く第12戦で牧野の前でフィニッシュした上で、3位以上であれば早くもチャンピオンが決まる状況にもなった。
2位の大津に続き、山田と平木は予選のままのポジションを保ってフィニッシュ。これにスタートでひとつ順位を上げた阪口晴南(DUNLOP SUTEKINA RACING)が続いた。6位は石坂瑞基(HFDP/SRS-F/コチラレーシング)、7位は篠原拓朗(VSR Lamborghini SC)が獲得。そして、終盤のハイライトとなったのが牧野と小高一斗(FTRSスカラシップF4)による8番手争いだった。それぞれスタートで順位を上げた後、緊張感に満ちたバトルを繰り広げたが、12周目の1コーナーで小高が前に出ることに成功し、8位フィニッシュを果たした。
明けて11月1日に行われた第12戦の決勝レースは、コンディションが今ひとつ。それまでの青空はどこへやら、上空には灰色の雲が立ちこめていた。ひとつ救いだったのは、レース中には雨は降り始めなかったことだ。
当然、路面温度は低く、多くのドライバーが十分にタイヤを温め切れずにスタートを切る中、「熱の入りには自信がありました」という坪井が5番手グリッドから鋭いダッシュを決め、2番手で1コーナーに飛び込んでいく。前にいるのはもはやポールシッターの平木のみ。早めに仕掛けようと3コーナーでアウトから抜きにかかったものの、その直後に平木のタイヤから白煙が上がる。坪井は、ブレーキがロックした平木を避け切れずに接触。2台ともにコースアウトしてしまう。
これでトップに山田が浮上し、大津、宮田、石坂、そして阪口が続くことに。1周目の終了時点でコンマ6秒だった大津は、トップと差を次の周にはコンマ1秒詰め、接戦となることが期待されたものの、3周目以降のペースは明らかに山田の方が上回る。
山田は、その後もじわりじわりと差を広げ、6周目にだめ押しとなるその時点でのファステストラップをマーク。独走態勢へと持ち込んでいった。逆に激しくなっていたのが、大津と宮田の2番手争いだ。第11戦を序盤早々にリタイアしていてタイヤのライフも十分に残っている宮田のプッシュは激しく、大津も防戦一方。これも山田が独走にできた理由のひとつでもあった。
またその後方では、石坂が牧野との対決にケリをつけて単独走行に。代わって牧野に迫ってきたのが、小高だった。11番手グリッドからオープニングラップのうちに7番手に浮上した小高は、9周目の1コーナーで阪口を仕留めた勢いを維持し、13周目にファステストラップを更新しつつさらなるポジションアップを狙う。しかし、牧野も鉄壁のガードで逆転を許さず、5位でフィニッシュしている。
一方、レース続行はなったものの、「接触の影響でバランスが崩れて、満足に追い上げることができませんでした」という坪井は17位に留まったため、チャンピオン決定を2週間後のもてぎに持ち越すことに。「首の皮一枚残りました」と語る牧野にも逆転の可能性は残されているが、坪井は2戦のいずれかで3位以上になれば、牧野の連勝を許しても初代チャンピオンが決定する。
第12戦を独走で逃げ切った山田は、これが初優勝。「正直、“やっと”という気分です。思い起こしてみると、本当は岡山でいちばん勝つチャンスがあったと思うんです。あれから上位にはつけられたけど、なかなか勝てなかったので。ただ、レース内容には100%満足していません。スタートだって失敗しているし。とは言え、普通にスタートしていたら、また違った展開にもなっていたでしょうし、今回は運もありました。もてぎでも連勝して、ランキング3位を狙いたいです」と感情を込めて語っていた。大津に続いて3位でゴールの16歳の宮田が、デビュー4戦目にして早くも表彰台に。4位の石坂は自己最上位を更新した。
