3月23日にJAFのマニュファクチャラー部会で、2015年に向けてスーパーGT500クラスとDTMの技術規則を統一する方向で意見がまとまったのは既報の通りだが、その直後のスーパーGT第2戦岡山に、DTMを運営するITRの技術規則担当者が来日した。そこで、オートスポーツwebではスーパーGT/DTMの技術規則統一の狙いについて、話を聞いた。

 今回、スーパーGT第2戦の舞台となった岡山国際サーキットを訪れたITRの技術担当者マイケル・ベルナール氏と、アドバイザーのドミンゴス・ピエダーデ氏は、昨年12月に行われたJAF/ITRのミーティングの際にも来日したメンバー。今回、岡山でふたりに来日の目的や、技術規則統一に向けた細かい内容について聞いた。

Q:まず今回の来日の目的を教えていただけますか?
マイケル・ベルナール(ITR技術規則担当者。以下MB):そもそも日本は、美しい女性が沢山いるとてもいい国だし、天候も素晴らしいからね(笑)。マジメに言うと、私たちは世界のモータースポーツがもう少し緊密にならなければならないと思っている。そのために、今回は日本のスーパーGTを見る必要があると思った。私たちがヨーロッパで知っているレースと見比べるためにね。私たちが走らせているクルマやレースのスタイルとスーパーGTは違っていて、実際に見てみると、その違いは非常に興味深かった。ドイツでも、多くの人々が日本のGT500マシンのことを知っていて、非常に素晴らしい魅力的なスタイルのクルマだと思っているし、有名なんだ。ドイツにはこういったシリーズはないからね。

Q:前回来日されたのは、昨年の12月だと思います。その時、あなた方は、JAFやGTAに対して、共通の車輌レギュレーションについての提案をしましたよね? その後、両者の間で何か進展はありましたか?
MB:もちろん。私たちがJAFやGTAと話し合いを続けていることは秘密でも何でもない。ただ私たちは、まだ交渉途中の段階にいる。両カテゴリーの違いがあるので、その違いの部分を見極め、その部分を埋めて、一緒にレースをやるということは簡単ではない。だから、今は将来に向けてどういう方法をとるのがいいのか探っている段階だけど、まだその方法は見つかっていない。

Q:でも、今回も技術規則について、何らかの話し合いはしたということですね?
MB:その通り。今回は、前回とはまた違うGTAの人たちやJAF、またいくつかのマニュファクチャラーの人々と話をした。日本のマニュファクチャラーがどういうアイデアを持っているか聞くと同時に、ドイツのマニュファクチャラーが持っているアイデアについて提案したんだ。いくつかのポイントでは、日独両者が同じ方向に進もうとしていることが分かったよ。でも、それは当然のことだ。私たちはお互いに過去20年間、技術的な部分で連携を取ってこなかったんだから。ただ、私たちはともにいい方向に向かっていると思う。日本のマニュファクチャラーがいかにオープンかということが分かって良かったし、ドイツのマニュファクチャラーのやり方もあるし、ともにやっていくことができれば、とても率直で良い話し合いができると思う。

Q:今回は日独双方、お互いにどんなアイデアを持ち寄ったんですか? できるだけ、具体的に教えていただきたいのですか?
MB:今の段階ではそれほど具体的な話にはなっていない。DTMは、2012年に向けて技術レギュレーションを改訂することになっているので、今、私たちはその作業をやっている真っ最中だ。それに関しては、およそ75~80%ぐらいの部分はすでに決まっている。でも、修正に関しては未だにオープンなんだ。だから、GT500のレギュレーションを検討して、DTMとの間の違いを見て、どの部分が修正できるか、これから具体的に考えなくてはならない。GT500のクルマは、DTMのクルマよりも10㎝車高が低いし、10㎝幅が広い。またホイールベースは、DTMのクルマよりも短いし、エンジンのシリンダー容量も違う。DTMがタイヤワンメイクなのに対して、GT500はタイヤに自由度がある。そうしたことが技術規則の中で、主に違っている部分だ。でも、リストリクターをふたつ使用して、エンジンの性能をコントロールしているのは私たちもやっていることだし、いくつかの技術的要素に関しては似ている。だから、その両者の妥協点を見つけなければならない。

Q:GTAや日本のメーカー関係者に聞くところによると、共通の技術規則をまとめられるとしたら2015年だろうということですが、それ以前、例えば2012年までに、共通のレギュレーションを作ることができると思っていますか?
MB:一緒に何かをやりたいと思ったら、そこにはふたつの方法がある。ひとつはDTMのクルマとGTのクルマを持ち寄って、そこで性能調整をするという方法。両方のクルマをテストで走らせて、どういう違いがあるかを見極めたうえで、パフォーマンスのバランスを取る。バラストやエア・リストリクター、または違う種類のエアロ・パッケージを使うなど、性能を調整するにはいくつかの方法がある。そして、もうひとつは共通の車輌レギュレーションを作って、それをそれぞれドイツでも日本でも使うという方法だね。性能調整に関しておかしな議論をすることを避けるためにも、私たちは共通の技術規則を作るという方に賛成だ。でも、それには長い話し合いが必要だ。日本では3.4リッターのエンジンを全車が使用する新しい車輌規則が始まったところだし、技術規則の存続期間というのは、最低でも2年はあるものだからね。今、2010年の半ばで、そこから3年先のことを考えれば、すでに2013年の半ばということになるよね。だから共通レギュレーションができるのは、論理的には2015年ということになる。でも、それよりも早く公開することができればハッピーだよ。ただ、両者はそれぞれ違った利害を持つマーケットと関係しているから、その点に関しては尊重しなければならない。

Q:あなた方ITRは、アメリカのグランダムシリーズとも話をしているという記事が出ていますが、それについては?
MB:それも秘密でも何でもないよ。自動車メーカーにとって、北米は非常に重要なマーケットだからね。アウディやメルセデスが国際的なマーケティングを模索していることは、秘密でも何でもない。だから、実際に私たちはDTMのクルマを使って戦うことができる他のシリーズを探している。その可能性を持つ20のシリーズのうちのひとつがグランダムシリーズだ。

Q:グランダムシリーズのオーガナイザーとも、すでに話をしましたか?
MB:ああ。グランダムと同じように、いくつかのオーガナイザーと話をしているよ。ただ話をして、交渉しているという段階だけど。

Q:彼らにも、何かしらのアイデアを提案しましたか?
MB:もちろん。誰かに会う時に、自分のアイデアを示したり、向こうの考えを尋ねるというのは、違うシリーズの間では当たり前のコミュニケーションだからね。例えば、DTMのクルマはFIAの国際規則に則っているものではなく、国内のレギュレーションで作られているものだ。その点は、GT500も同じ状況にある。今のGT500のクルマでは、日本でしかレースをすることができない。グランダムも同じ状況だ。つまり、私たち3つの国は、みんな同じ状況下にあるということなんだ。だからそれぞれの国のシリーズで、台数が15台前後ということになる。DTMは18台だけど、それでは充分とは言えないし、もう少し台数が必要だ。他のシリーズも似たり寄ったり。これは経済危機によるものだから、今は誰もが経費節減の方法を模索している。だから、私たちが意図していることの最大のターゲットは、劇的に経費を削減し現在かかっているコストを50%に引き下げることだ。その一方で、安全性に関しては100%まで引き上げたい。誰もが公平な条件の中で、勝てるだけのクルマを作ることができて、レースに参加することができるようにするためにね。

Q:GTAからは、統一するなら技術規則だけで、競技規則はお互いの物をそれぞれ尊重したいという回答があったのではないかと思いますが、実際そういう返答でしたか?
MB:技術規則はひとつの要素で、コストや安全性、平等性のために重要なこと。それは、FIAレギュレーションでホモロゲーションを取得するのと同じことなんだ。FIAのホモロゲーションを取得してクルマを作ったら、あとは長距離レースに出ようと、短距離レースに出ようと、ヒルクライムに出ようと、スラローム競技に出ようと、それは使う人の自由だし、別に世界のモータースポーツ界の中で珍しいことでも何でもない。共通の技術規則のもとに作られているクルマでも、競技規則はそれぞれだ。

Q:でも、もし実際にスーパーGTとDTMが一緒にレースをしようと思ったら、競技規則には違いがあります。GTは2クラス混走で、1台のクルマにつき2人のドライバーが乗ります。その点、DTMは1台につき1人のドライバーですし、GTよりも距離が短いですよね?
MB:いや。DTMマシンはもっと長いレースもできるし、ドライバー交代もできる。ドアがあるし、そこからドライバーが降りて、もうひとりのドライバーが乗ればいいだろう(笑)?
ドミンゴス・ピエダーデ氏(ITRアドバイザー):もし、日本のGT500マシンがドイツに来たら、ドライバー1人で戦うことができるし、DTMのクルマが日本に来たら、ドライバー2人で戦うことができる。もし一緒にどこかの国でレースをすることになっても、それは競技規則の問題だけ。50㎞のレースだろうが、500㎞のレースだろうが関係ないんだ。技術規則も同じだ。共通化すれば大きな自動車メーカーすべてが両方のレースに参加できるし、彼らは自分たちにとって最高のマーケットだと思う場所でレースをすることができる。ヨーロッパでも、日本でも、アメリカでも。日本のメーカーはアメリカとヨーロッパのマーケットに関心があるし、ヨーロッパのメーカーは日本とアメリカに関心がある。だから、それほどややこしい問題ではないんだ。

MB:技術的な問題に話を戻すと、DTMのクルマのフューエルセルは、長距離レースをするのに充分な容量がある。それに、クルマの両サイドにクイックリフューエル用の給油口が設けられている。あとは、それを使う人次第。もし市販車を買ったとして、1日20㎞走るのか、あるいは1日100㎞走るのかは、使う人が決めることだよね。競技に関してはそれと同じことなんだ。ただし、私たちのアイデアは、DTMを日本でやろうということではない。あくまで私たちのアイデアは、同じ技術規則のもとで作られたマシンを色々な違う国で使おうということだ。

Q:技術規則を統一する以前に、エキシビションレースのような形で、GTとDTMが一緒に走るというようなプランは考えていますか? また、今の段階でそれについて明かせることはありますか?
MB:いくつかアイデアはあるけど、今の段階で話せるようなプランはないね。ただ、11月には、チャンピオンシップが掛かっていないスーパーGTのレースが富士である。その時に、僕たちは何かを見せることができるかも知れないし、ひょっとしたら違う機会になるかも知れない。とにかく、今いくつかのアイデアがあるんだけど、違うパフォーマンスのクルマで一緒にレースをできるかどうかも含めて考えていて、今の段階ではまだ話せることはないんだ。いずれにしても、僕の担当は技術的なことだから、政治的なことだとか競技のやり方なんかについては、意見する立場ではないしね。

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