いよいよ11月4日に迫ってきた、WEC世界耐久選手権最終戦バーレーン8時間レース。トップカテゴリーのドライバーズタイトル争いは、トヨタGAZOO Racingの7号車陣営がチームメイトの8号車を追いかける展開となっており、この2台がタイトルに近い位置にいることは間違いない。
だが、忘れてはならないのが、ランキング3位と4位につける2台のフェラーリ499P陣営だ。今年、シリーズにデビューした彼らだが、100周年記念大会となったル・マン24時間では51号車が優勝を飾っており、(ややトヨタからポイント差は離れているものの)ル・マン・ウイナーとして最後までシリーズ争いを面白くしてくれることを期待したいところ。
さて、このフェラーリのハイパーカーチーム、そのチーム名称『フェラーリAFコルセ』からも分かるように、実際には現場オペレーションをAFコルセが担当している。AFコルセと言えば長らくGTEクラスに参戦しており、富士のレースでは初年度からずっと日本人サポートメカニックをチームに招き、和気あいあいと仕事をしてきた「日本LOVE」のクルーたちだ。
とはいえそこはハイパーカークラス、少し不安だったのでル・マンに行った際にチームをまとめるバティ・プレリアスコ氏に「今年のハイパーカーはワークス体制みたいな感じだし、富士で日本人サポートメカニックは雇わないんでしょう?」と聞いてみた。
すると「雇うに決まっているだろう。オレはダイキが大好きなんだ!」と即答されてしまった。
“ダイキ”とは、イタリア語ペラペラの日本人、青田大樹メカニックのこと(英語もOK)。青田メカだけでなく、富士の現場では10人近い日本を代表するメカニックたちが、AFコルセの現場を手伝っている。なお、青田メカは普段、国内レースの現場でも仕事をしている。
しかしいざ実際に富士の現場に行ってみると、今回青田メカが手伝っていたのは、LMGTEアマクラスの方。残念、ハイパーカーじゃなかった。だが、これには理由があるとバティは言う。
「ハイパーカーはハイブリッドを使っていて危険なものがピットの中にあるし、中に入れる人数が22人までと決まっているんだ。だから、決められた人間以外は、ピットの中に入れないんだよ。もちろん、僕らはこれまでと同様、みんなに対してオープンでありたいと思っている。本当ならもっといろいろな人にピットの中にも入らせてあげたい。ただ、そう言う規則があるから。だけど、人間としての僕らは今までとまったく同じだよ」
つまり、別にハイパーカーに移っても、AFコルセは相変わらず『うまい棒』大好きの陽気な連中、ということだ。ただし、現在のAFコルセには、イタリア人だけでなく、元OAKレーシングのメンバーとか、スペイン人スタッフとかもいて、かなりインターナショナル。もちろん青田メカはそんなハイパーカーのメカニックたちとも仲良しとのことで、今回は青田メカにどんな人たちがいるのか、一部紹介してもらった。
■2ドアのスバル・インプレッサが欲しい
まずはこちら、50号車を担当するクルーたちの写真をご覧いただきたい(リクエストにより、それぞれのお名前のカタカナ表記を書いてあげました)。
この中で、面白エピソードを持っているのは、前列・左から2番目のベテランメカニック、オスカル・マンテガーリ氏だ。スマホ全盛時代にも関わらず、オスカルはデジタルゲームには見向きもしない。出張でも何でも常に持ち歩いているのは、ルービック・キューブ。しかも、名人級の速さで6面揃えることができるそう。飛行機の中でもずっとやっているらしい……。
またオスカルは今年、御殿場到着後、速攻で青田メカにお願いごと。「友達の息子に頼まれたから」と言う理由で、青田メカに運転&案内を頼み、御殿場プレミアム・アウトレットのポケモンショップへGO! 設営より何より、まずはポケモンカードを手に入れることが重要だったのである。
ちなみに、WEC前後に、青田メカは他の希望者にもせがまれ、合計3回もポケモンショップに足を運んだという。後列の左から3番目にいるタイヤ担当の女性メカ、ラウラはピカチューのぬいぐるみを手に入れて満面の笑みだった。
次に前列の真ん中あたり、ちょうど青田メカの真ん前にいるのが、やはりタイヤ管理をしているスイス人、ニック・モンティ。ニックは、スバル・インプレッサの2ドアが大好きで、ヨーロッパで手に入れたいと本気で言っているらしい。夏はレースの仕事をしているのだが、実はスキーのインストラクターということで、冬場はスキー場が仕事場になったりしているのであった。
さらに、一番右端にいるのが、AFコルセのマネージング・ディレクターであるジュゼッペ・ペトロッタ氏。この方、サーキットで会うといつもにこやかに挨拶してくれるのだが、フェラーリ関係一筋44年の大ベテラン。かつてはフェラーリF1のチームマネージャーだったこともある。その当時はおっかなかったのかもしれない。