更新日: 2024.02.12 17:13
アストンマーティン、新型バンテージGT3を正式発表。基本価格は1億円超え
アストンマーティンは2月12日、アップデートが施された、いわゆるエボ(Evo)仕様のバンテージGT3を正式発表した。2024年シーズンより、WEC世界耐久選手権やIMSAウェザーテック・スポーツカー選手権、GTワールドチャレンジの各シリーズ、そしてスーパーGT GT300クラスなど、GT3規格の車両が戦うレースシリーズに投入される。
■空力とサスペンションを改良
正式名称としてはこれまで同様の『アストンマーティン・バンテージGT3』とされる今回のアップデート車両は、バンテージのロードカーの最新バージョンとともに発表された。
なお、正式発表に先立ち、2024年1月のIMSA開幕戦デイトナ24時間レースでは、ハート・オブ・レーシングとマグナス・レーシングの手により、この新型GT3車両はすでにレースデビューを済ませている。
今回の新型車両は、2018年にデビューした先代バンテージGT3の『総合的な進化』版と位置付けられるものだ。4.0リッターツインターボチャージャー付きV8エンジンを搭載し、まったく新しい空力パッケージと改良されたサスペンションを備えている。
この車両は、アストンマーティン・レーシング(AMR)と、ヴァルキリーLMHプログラムにも取り組んでいるシルバーストンに本拠を置くアストンマーティン・パフォーマンス・テクノロジーズ(AMPT)部門との共同作業の一環として開発された。
「新しいGT3は、アストンマーティンのさまざまな中枢の機能、姿勢、方法論を活用する役割を果たすためにAMPTを使用する最初の機会であり、それらをAMRの比類のないGTプログラム管理の専門知識と組み合わせた」と アストンマーティンのエンデュランス・モータースポーツ責任者、アダム・カーターは述べている。
「GTレーシングプログラムは、将来のアストンマーティンのロードカーへの知識とアプローチのさらなる伝達につながる開発ラボとして機能する」
30時間の耐久テストをハイライトとするこの車両の開発は、アストンマーティンのファクトリードライバーと、選抜されたアマチュアドライバーによって行われた。
デイトナでのデビューの際にも、そのフロントエンドの造形に注目が集まっていたが、再設計によってブレーキダクトの冷却空気容量を増やすことに成功し、より安定したパフォーマンスを実現できるようになったという。
ノーズ部分はカーボンファイバーで作られた一体型のクラムシェルで、最新世代のGT3マシンでは一般的になってきているクイックリリース設計を備えている。これにより、レース中に損傷が発生した場合の迅速な取り外しと交換が容易になっているほか、短いスプリッターによって圧力中心が後方に移動したことでピッチ感度が低下、安定性向上に寄与しているという。
車両のフロントとリヤの両方に新たなルーバーが装備されている。フロントのルーバーは揚力を低減することを目的としており、リヤのルーバーはドラッグに対処するように設計されている。
「これらの新世代GT3マシンは、これまで以上に空力ダウンフォースに依存しているため、ブレーキング時のマシンをより安定させたいと考えた」と AMRのパフォーマンス責任者のガス・ベテリは述べている。
「先代の車両はブレーキをかけると大きくフロントが沈み込むので、リヤサスペンションのセットアップでピッチをコントロールする必要があった。しかしこれは、剛性が高くなり、非常にきびきびしており、タイヤを酷使することを意味していた」
「ダンパーのチューニングに重点的に取り組んだ結果、新しいクルマとのバランスがより良くなったので、サスペンションのセットアップを損なうことなくダウンフォースを生み出せるようになった」
「その結果、大幅に改善され、あらゆる状況での安定性が向上した。また、タイヤへの影響もより均一になるため、チームにとっては戦略の選択肢が増える」
「テストしたドライバーからのフィードバックは圧倒的に好意的だった。特にアマチュアレーサーは、プロにはるかに近いラップタイムを達成することができている。さあ、レースをしよう!」
アストンマーティンによれば、2024年末までに最大30台のバンテージGT3が世界中のレースに出場することを予期しており、基本価格は57万5000ポンド(約1億836万円)になるという。