F1モナコGP、インディアナポリス500マイルレースと並び『世界三大レース』のひとつに数えられる耐久レースの祭典、ル・マン24時間レースの2022年大会が6月11~12日、フランスのル・マンで開催される。過去2年を含む数回のイレギュラーを除けば、例年6月の夏至にもっとも近い週末に実施されるこのレースの歴史は長く、今大会で第90回を数える。そんなル・マン24時間を長年にわたって追いかけ、現地で取材を行ってきたJ SPORTSの解説者でもあり、日本モータースポーツ記者会会長の高橋二朗さんに今大会の見どころを聞いた。
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開口一番、「ようやくコロナ禍から元にル・マン24時間に戻ってきて、現地に行ける人間にとっては楽しいル・マンが戻ってきたのかな、というところですね」と、高橋二朗さん。2022年は観客数の制限がなくなったことに触れた。
そして、前戦のWEC世界耐久選手権スパ6時間で8号車トヨタGR010ハイブリッド(TOYOTA GAZOO Racing)が止まってしまったことにし、今年体制が変更されたトヨタチームがル・マンに向けてどのように改善を行っていくか、という部分を最初の注目どころに挙げた。
「(これまでと違い)トヨタがこの段階でも、まだポイントリーダーになっていません。それといくつかのトラブルが出ています。第2戦スパ・フランコルシャンでは本当に1台が止まってしまいました。トヨタの強みだったハイブリッドシステムの問題でしょうから、そのあたりがきちんと改善されているのか、というところですね」
「トヨタはレギュレーション的に、いつもすごく厳しい状況に置かれているわけで、そこで勝たなければいけないというところで頑張っているのでしょうが、体制が変わったというか、ドライバーだった中嶋一貴がTGR-E副会長になった途端にいろいろとトラブルが出ているというのは、なんだか嫌だなって気がしますよね(苦笑)。同時に、チームの新代表になった小林可夢偉も頭が痛いはず。よりにもよってね」
その可夢偉チーム代表については、判断力と実行力を高く評価しているという。
「J SPORTSさんで『ル・マン24時間レースの舞台裏(2022年も7月25日に放送予定)』という番組をやらせてもらっていて、『こんなことあったの!?』なんていう話を毎年聞きますが、去年にしてもポジションは異なるもののチーム内でのいろいろなことに対してアイデアを出したり、『ああしたらどうだろう、こうしたらどうだろう』と彼はすごく細かく思いつくんです」
「また、2020年のバーチャル・ル・マン24時間レースのときもTMG(現TGR-E)のエンジニアとものすごく細かいやりとりをしていました。メディアの前ではユニークなキャラクターだけど、レースのことになるとすごく細かく指示もするし『これだ!』という判断をするわけで、その判断力と実行に移す力という部分では、チーム代表として皆をまとめていく能力は高いんじゃないかなと思います」
「だからこそ、その進化というか、まだシーズンが始まって数戦ですが、ル・マンでの彼の采配という部分は面白いんじゃないかな、と。そこにTGR-E副会長がどれだけ絡んでくるのか楽しみです」
また、中嶋一貴TGR-E副会長に代わって8号車のメンバーに抜擢された平川亮のWECでの走りについても「問題なし」と太鼓判を押す。
「平川選手についてはアメリカ(開幕戦セブリング)でもそうでしたが、もう彼に関してはクルマにも慣れた様子で、むしろ日本に帰ってきてからの雰囲気には『WECを経験している』という自信があるように感じるほど。スーパーフォーミュラ第4戦のオートポリスの逆転優勝にしてもそうですが実にレースラップが安定している。それはWEC効果だと思うし、チームでどうクルマを作ってもらうにしても、自分の中で進め方が確立されてきているな、という印象を受けます」