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ル・マン/WEC ニュース

投稿日: 2022.09.08 16:50
更新日: 2022.09.08 17:31

小林可夢偉に聞くアルピーヌとのタイトル争い、プジョー9X8の印象、そして3年ぶりの母国【WEC富士プレビュー】

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ル・マン/WEC | 小林可夢偉に聞くアルピーヌとのタイトル争い、プジョー9X8の印象、そして3年ぶりの母国【WEC富士プレビュー】

 いよいよ今週末、3年ぶりに日本で開催されるWEC富士6時間レース。昨年より最高峰カテゴリーがLMP1からLMH(ル・マン・ハイパーカー)となった新しいWEC、そしてLMHになったトヨタGR010ハイブリッド、そしてプジョー9X8が日本に初上陸して実際に目にすることができる、貴重な一戦となる。

 走行開始を翌日に控えた富士スピードウェイで、今年からドライバーに加えチーム代表も兼任することになった小林可夢偉が取材に対応。前戦第4戦モンツァから富士にかけての変更点や、ひさびさの日本開催に向けた抱負を語った。

「初のハイパーカー日本上陸、僕たちはこのクルマで走ることは別に特別なことではないものの、日本のファンの人たちの前で走るというのは非常に特別なことで、楽しみにしてくれている人がたくさんいると思います。初めては、1回しかないじゃないですか。だから今回の初めての瞬間を楽しみたいなと思いますけど、まだお客さんが来ていないので、実感はありません(苦笑)」

 初見参のクルマはもちろん、注目の的となるが、チーム代表も兼ねる可夢偉にとってはクルマだけでなく、レース内容、そしてチームの戦いにも注目してほしいようだ。

「正直言うと、このハイパーカーのクルマはLMP1からは技術的にはアップグレードはされていない。でも、そこで走らせている意味は何かというと、やはり人の部分ですよね。スタッフやチーム力、耐久レースはまずはゴールすること、クルマが壊れないこと、ピットストップの作業も毎回安定して早い、そういうチーム力がこの耐久レースでは大事だと思っています」

 現代はどのカテゴリーでも同じだが、テストでの実走時間が短くなるのに比例して、シミュレーターを使ってのセットアップやプログラムに費やす時間が多くなっている。当然、TGR-E(TOYOTA GAZOO Racing Europe GmbH)でも次のレースに向けたシミュレーターでの作業が行われているが、今回の富士に向けてはチーム代表職を兼任する可夢偉は多忙を極めたこともあり、今年からレギュラー参戦している平川亮がその多くを担当したという。

「僕は忙しすぎて無理でしたので、今回は平川がシミュレーターをしました。そもそも僕はシミュレーターですごく練習してからサーキットに来るというタイプではなくて、知らないコースを走る時くらいしかシミュレーターはやらないですね。シミュレーターで完璧に走り込んだあとにサーキットに来たら、逆にコツをつかむのに時間がかかって、だいたい大変なことになる(苦笑)。だから、あまりそこまでシミュレーションはやりません」

 今週末の富士に向けては、まずはライバルのアルピーヌ、そしてプジョー勢との関係が焦点になる。チームランキングでトヨタはトップに立っているものの、ドライバーズランキングではアルピーヌ勢がトップに立っており、前回の第4戦モンツァでもアルピーヌに優勝を奪われている。今季の残りは今回の富士と最終戦バーレーンの2戦しか残っていないだけに、富士ではまずはアルピーヌの前でフィニッシュしなければならない。

「富士はやっぱりホームレースで、このチームでは富士を8戦中7回優勝している。ですので、まずは富士では強いんだというところをしっかりと見せられるように、ワン・ツーでゴールできたらいいなと思います。今まで富士でワン・ツーフィニッシュってないので狙っていきたいですね。アルピーヌだけでなく、プジョーもいますが(第3戦の)ル・マン24時間でワン・ツー獲って、この富士でもワン・ツーができれば、かなり上出来なシーズンと言えると思うので、そうなりたいと思います」

 そのアルピーヌは、今回、BoP(バランス・オブ・パフォーマンス/性能調整)で、前戦モンツァから約40馬力の出力抑制を受けることになり、さらにトヨタは今回、前回から18kgの軽量化が認められた。当然、前戦よりもアルピーヌとのギャップは縮まることになる。

「それはもちろん。前回のモンツァで何が一番の問題だったかというと、レース中の直線スピードは向こう(アルピーヌ)と僕らで2km/hくらいしか変わらなかったんですよ。それまでは8~10km/h近くの差があったのに、レースではいきなり向こうのスピードが上がった。そういうことになると、もともと向こうのクルマの方がダウンフォースがあってクルマも軽いので、こちらには勝ち目がなくなります」と可夢偉。

 ただ、ライバルはアルピーヌだけではない。前戦モンツァでは、プジョーが斬新な『リヤウイングレス』マシン、プジョー9X8を2台デビューさせた。デビュー戦のレースでは2台ともにトラブルが発生し、1台リタイア、1台は総合33位という結果に終わったが、予選では総合5番手を獲得する速さを見せた。

「おそらく、これからもっと速くなると思います」と、まずはライバルの初印象を語る可夢偉。

「リヤウイングがないですけど、実は彼らの方がダウンフォースが多いなという感じがしています。この富士の方がモンツァよりダウンフォースの効果があるので、そういうトレンドが見えてくるのかなという気がしています」と可夢偉。プジョー9X8については今回の富士の方が、よりトータルな戦力比較ができそうだ。

 アルピーヌとのタイトル争いに、ニューカマーのプジョー9X8とのパフォーマンス差などなど、今季のことだけでなく、可夢偉チーム代表にとって、今季の来季以降のチームの開発の方向性にも関わる重要な一戦。同じトヨタの平川亮とともに、可夢偉ドライバー兼チーム代表がどのような姿を富士で見せるのか、その一挙手一投足に注目したい。

TOYOTA GAZOO Racingの7号車トヨタGR010ハイブリッド(マイク・コンウェイ/小林可夢偉/ホセ-マリア・ロペス)
TOYOTA GAZOO Racingの7号車トヨタGR010ハイブリッド(マイク・コンウェイ/小林可夢偉/ホセ-マリア・ロペス)


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