F1チャンピオンながら、今季のスーパーGTの大注目ルーキー、ジェンソン・バトンは実は悩んでいたという。初めてのハコ車のシリーズ参戦、そして異国の日本でのレース、スーパーGTという特殊なカテゴリー……RAYBRIG NSX-GTの伊与木仁エンジニアが話す。
「チームもJB(バトンの愛称)とコミュニケーションを取るなかでどうしたらいいのか苦労していたけど、おそらく、JBの方が一番悩んでいたんだと思う。GTマシンの走らせ方、チームとのコミュニケーションなど、いろいろ苦しんでいたんだろうね」
開幕戦と同じサーキットで行われる岡山公式テスト。実戦に向けてのタイヤ選択やセットアップの確認がメニューの中心になり、開幕を迎えるにあたって、非常に重要な位置づけとなるのは言うまでもない。
その貴重な2日間の1日4時間の走行時間を、RAYBRIGは文字どおりバトンのための占有時間とした。
今までバトンがNSXで走行したサーキットはマレーシアのセパン、鈴鹿、富士とコース幅の広いサーキットばかり。しかも、テストはほとんど単独走行でGT300とのシビアな混走は昨年8月の鈴鹿1000km以来、経験していない。コース幅が大きくなく、1周の距離が短い岡山サーキットは、GT300との混走を練習するには絶好の機会となる。
さらにGT300との混走以外にも、今回の岡山テストを迎えるに当たってもうひとつのテーマがあった。それが冒頭にあった、バトンの不安、そしてチームとのコミュニケーションの仕方だ。テストの進め方については、バトン側から提案があったようで、それをチームが受け入れ、メニューを作成したという。
「一度、JBのやり方で進めてみて、それで僕らも何かを変えなきゃいけないかもしれないよねという形で進めました」と伊与木エンジニア。
そして貴重な2日間のテストの初日をすべてバトンが担当することになり、そしてバトンは最終的に91周を走り、総合6番手のタイムで初日を終えることになった。
ホンダの佐伯昌浩GTプロジェクトリーダーも、「トップからのタイム差(コンマ4秒)を見ても、全然、ホンダのトップレベルのドライバーと変わらない。山本とほぼ同じレベルで走れるというのは分かった」と、わずか数回のテスト期間で順応が早いバトンのパフォーマンスを改めて評価している。
チームにとっては、翌日の2日目にもうれしい出来事があった。初日にバトンが進めたセットアップのまま山本尚貴に乗り替わった途端、山本は走り始めで2番手タイムをマークしたのだ。