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スーパーGT ニュース

投稿日: 2021.06.03 21:53
更新日: 2021.06.03 22:29

HOPPY team TSUCHIYA 2021スーパーGT第2戦富士 レースレポート

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スーパーGT | HOPPY team TSUCHIYA 2021スーパーGT第2戦富士 レースレポート

HOPPY team TSUCHIYA
レース結果報告書
2021 SUPER GT Rd.2
富士スピードウェイ

■日時 2021年5月3〜4日
■車両名 HOPPY Porsche
■場所 富士スピードウェイ
■ゼッケン 25
■監督 土屋武士
■ドライバー 松井孝允/佐藤公哉
■チーム HOPPY team TSUCHIYA
■リザルト 予選22位/決勝13位

苦しくたってくじけない
もっと上手になりたいのは……

 つちやエンジニアリング創業者、土屋春雄さんが天国に旅立ったのは開幕戦の4月11日。決勝の前のことだったので、土屋武士監督はお父さんの訃報をチームスタッフはじめみんなには伝えなかった。だから今回の第2戦がお見送りしてから最初のレース。

 公式練習の前には全チーム、それにスタンドのレースファンの皆さんも春雄さんに向けて黙祷を捧げてくれました。チームにとってだけでなく、大きな存在だったのだと改めて感じました。ボクも『Pure racing heart forever』と書かれた鉢巻(バイザーステッカー)をして、このレースへの思いを表現して臨みました。

 こんにちはボクはホピ輔(本名HOPPYポルシェ)です。今回もボク目線でレースレポートしていきます。気持ちの面では春雄さんのことで整理がつかないところもあるし、なんか集中し切れない部分も正直言ってありました。でも、準備はぬかりなくチーフメカニックの武藤良明さんをはじめとするメカニックのみんなと、エンジニアの木野竜之介さんがやってくれました。

 今回のレース距離は500kmです。2回のルーティンピットを挟んで3スティントを走ります。だからいつも以上にロングランでのタイムが重要になってきます。そこで木野さんと武士監督がいろいろと考えてくれて、新しいことに挑戦しました。中身を詳しく言うと怒られてしまうので言えないけど、フロントまわりに関することです。

 開幕戦ではレース終盤に松井孝允くんが路面のタイヤカスを拾ってしまう現象、ピックアップに苦しんだし、ロングランのタイム安定だけでなく、そこにも効くみたいです。あと、バトルの時に前のクルマにくっついてしまうとダウンフォースが抜けてしまってうまく走れないという弱点もボクにはあったのですが、どうやらそれもカバーしてくれるとか。こうやって並べるといいことばかりのようですけど、オールマイティではなくて予選アタックには少し不向きかも……との武士監督の予想でした。

 普通にやっていても前にいけないし、いろんなトライをしていくのが木野さんの今年の方針で、開幕戦でも言ったことですけど、予選と決勝とでは完全にセットアップを分けて考えるようになっています。今回入れたアイテムも予選でも使えるかなと多少の期待があったものの、公式練習で孝允くんが走ってみると、やっぱりこれは決勝用だねということになり、これまでに築き上げた富士用の予選セットで予選Q1に臨むことになりました。

 決勝に向けては武器が増えたイメージですけど、予選に向けては武器の増強はなく、とにかく自分の力を精一杯出すしかありません。

 Q1を担当するのは孝允くんです。A組B組分かれてのQ1を突破してQ2を担当する佐藤公哉くんにバトンを渡せるか、ボクたちが走るA組に速いクルマが集まってしまった感もあり、けっこうギリギリの状況が予想されました。タイヤ選択も決勝を重視したハード系で条件としてはラクではありません。

 そのなかで孝允くんが計測4周目に記録したタイムは1’36.877。このタイムは昨年最終戦のQ1で孝允くんが出したタイムと1/100秒まで同タイム。「ボクらとしては100点のタイムです。やり切った予選でした」と孝允くん。暑さに対応したロングラン重視のタイヤ選択であることを考えれば、ボクも孝允くんも褒めてほしいタイムです。

 しかし結果としてはQ2進出に0.015秒足りませんでした。A組B組を合わせて23番グリッドからのスタートです。「今日に関してはパフォーマンスを出し切ってあのタイムなので、別に悲観はしていないです。組分けの問題もあったし明日をお楽しみにという感じですね」と木野さん。

2021スーパーGT第2戦富士 HOPPY Porsche(松井孝允/佐藤公哉)
2021スーパーGT第2戦富士 HOPPY Porsche(松井孝允/佐藤公哉)

 作戦面ではいつもいろいろ武士監督が考えてくれるし、新アイテムで決勝ラップは速くなっているはずだし、ボク自身もけっこう期待していました。基本レース戦略はこんな感じでした。

 スタートはいつも通り公哉くんが担当。1回目のピットではタイヤに問題がなければ、リヤ2輪のみ交換してピット時間を短縮。ここでポジションを回復。気温が下がる2回目のピットで4輪交換してペースアップしてさらにポジションを上げるというものです。スタートで履くフロントタイヤはかなりの周回数を使うことになりますが、このあたりは公式テストで確認ができていました。

 しかし、スタートしてみるとコーナーが速くて前のクルマに追いつくのに、ストレートで離されてしまって全然抜けません。コーナーが遅いくせにけっこうきついブロックをしてくるクルマもいて、ボクも公哉くんもけっこうイライラしてしまいました。ストレートエンドでスピードが伸びないだけでなくて、ボクは排気量が少ないNAエンジンを使っているから、コーナーの立ち上がりトルクでも大排気量のクルマや、ターボ車には負けてしまう。どうにも戦いようがなかったです。

 この状況をみてとって木野さんはアンダーカットを仕掛けることにしました。早めにピットインして空いている場所に戻り、ここでタイムを稼ぐ作戦です。給油量の問題で次のピットインタイミングに対しては自由度が減ってしまいますが、膠着状態を打開しないことには上位は望めません。19番手で23周目にピットイン。予定通りリヤ2輪交換として孝允くんに交代します。あと5周後だったらフルコースイエロー(FCY)が出ていて、かなりおいしい展開でしたが、それは結果論です。

 28番手でコースに戻り孝允くんは淡々と周回を重ねます。しかしスティントの後半に向けて路面温度が下がってくると、タイヤの適正温度レンジから外れた状態となりグリップが落ちてしまって孝允くんもボクもかなり苦労しました。タイヤに無理に負荷をかけてしまえば消耗を早めてしまうし、守ってばかりだとグリップが維持できないし、ドライバーの最小運転時間の規定もあって早くピットに入ることも許されません。なんとか70周目までガマンしてピットに飛び込みました。

 ピットに入る前はピットタイミングのずれによって5番手まで浮上していましたが、戻ったのは17番手。運悪くまた最初のスティントでえげつないブロックをしてきたクルマに前を塞がれてしまいました。それも相手は周回遅れなのに進路妨害と言えるぐらいの鬼ブロックをしてきて怒り心頭。せっかくのニュータイヤのオイシイところを使えるタイミングを台無しにされてしまいました。

 スプリントレースではないから、ちゃんと誰とレースしているのかチームからも無線で指示して欲しいところです。この“災難”をかわした後は順調で前の集団が近づいてきたところでフィニッシュとなりました。スティント終盤に1分38秒5のベストタイムも出せだし、バランスはすごくよかっただけに、周回遅れにつき合ってしまった数周のロスが痛かったです。

 13位でフィニッシュだったから、もう少し早く前の集団に追いついていたら、ヘロヘロになったライバルを尻目にポジションアップしてポイントを得られたかもしれません。順位は残念ですが、レース内容としてはポジティブなものでした。それだけにもっと直線が上手になりたい。

 エライ人たちが、現状の差をしっかりみていてくれれば『救いの手』が差し伸べられてもいいのにな……と少しボクは思います。あとは僕が生まれたドイツ本国のエンジニアが来てくれたら何かが変わったりするのかな。GT3勢も国産車のみんなは結構直線が得意なんだよね……こちらは新型コロナの流行が収まらないと期待できそうもありません。

「いまは予選のクルマ、決勝のクルマを完全に分けています。なおかつ決勝を見据えてタイヤ選択をせざるを得ない。そのなかで予選順位をどこまで上げられるか、決勝と予選の両立が次のテーマとなると思っています。ネタは頭の中にすでにいくつかあるので次までに用意してきます。またいろいろ面白いことを考えていますよ」と木野さん。木野さんのアイデアを楽しみにしつつ、次戦ではさらにボクもがんばります。

2021スーパーGT第2戦富士 HOPPY Porsche(松井孝允/佐藤公哉)
2021スーパーGT第2戦富士 HOPPY Porsche(松井孝允/佐藤公哉)
2021スーパーGT第2戦富士 HOPPY Porsche(松井孝允/土屋武士監督/佐藤公哉)
2021スーパーGT第2戦富士 HOPPY Porsche(松井孝允/土屋武士監督/佐藤公哉)

土屋武士監督のコメント

「今回、他車の速さについていけなかった。それが一番です。まずトータルで負けていたということを認めなければいけません。その一方では、自分たちのベストが出せたレースでもあります。ふたりのドライバーには本当に助けられました。やらなければいけないことは明確で、こういうレースをやっていければ確実に前進できると思うので、その点ではポジティブです」

「個人的なところで本音を言えば、親父がいなくなり、どのようにサーキットに来たらいいのか、心の置きどころがないような状態でサーキットに入りました。しかしレースが始まると、ドライバーふたりのがんばりが伝わってきて、純粋にレースへ集中することができました。順位としては入賞には届きませんでしたが、個人的な達成感が生まれて、スタッフ全員に対して今日のレースを誇らしく思います。今回得られた課題を次の鈴鹿に活かして上位を目指します。引き続き応援よろしくお願い致します」

松井孝允のコメント

「単独走行では、公式練習のフィーリングと変わらずいいペースで走ることができましたが、タイヤで苦しんだ部分もあります。路面温度が下がってくると急にグリップレンジを外れる面がありました。最後のスティントでタイヤ交換してからはよかったので、そこの境目がカバーできるともっと力強く戦えるように感じました。このあたりはヨコハマさんと確認をとりながら次に向けて準備したいです」

佐藤公哉のコメント

「スタートからクルマのバランスもタイヤもよかったのですが、去年から抱えている中低速域でのトルクの細さもあり、コーナーに関してウチのほうがバランスがよくて速いにも関わらず前のクルマを抜くことができませんでした。ストレートで離されて、コーナーで追いつく展開を繰り返して、ちょっと早めに松井選手に代わってもらいました」

「最後は4輪交換ニュータイヤでいきました。単独走行ではバランスがよくいいペースで走れたのですが、再び抜くのに手間取ってしまい、そこがもったいなかったです。タイヤ選択やセットアップ、戦略もよかったので、そこはチームに感謝したいです。ポイントは獲れませんでしたが、強いレースができたので、次戦もこの調子でボク自身のパフォーマンスも上げて臨みたいと思います」

2021スーパーGT第2戦富士 HOPPY team TSUCHIYA
2021スーパーGT第2戦富士 HOPPY team TSUCHIYA
2021スーパーGT第2戦富士 土屋武士監督と土屋勇太さん
2021スーパーGT第2戦富士 土屋武士監督と土屋勇太さん


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