鈴鹿サーキットで6月最初の週末に開催された2023年スーパーGT第3戦は、決勝77周レースも残り17周となった時点で表彰台争いを演じていた23号車MOTUL AUTECH Zによる現場を凍りつかせる事故で幕を閉じた。そこから約2カ月を経て、この第4戦富士はニスモ陣営と23号車にとっても復活を期すラウンドとなる。現地金曜搬入日に、改めてニッサンの松村基宏総監督に車両リペアの状況を聞いた。
「ご存知のとおりほぼ全損状態のクラッシュで戻ってきたので、モノコックから始まり、ほとんどの部品を交換しました。モノコックも(強度測定の)テストはしましたけど、やはり“おっかない”部分もあります。危険性も考慮し、そこはGTA(GTアソシエイション)に申請を行い交換の判断をしました」と松村総監督。
決勝59周目のシケイン手前。130R攻略から続くブレーキングゾーンに向け、GT300クラスの車両に接触する格好となった松田次生の23号車は、映像で確認できる限り車体右後方を他車に引っ掛けるようにして180度反転、進行方向にリヤを向けた時点で宙を舞い、コースイン側のキャッチフェンスにボディを預けるようにして激突、そこで一気に速度を落とし、止まった。
車重1トンを超えるGTカーでも、同じ車速ならウイングやフロア、ディフューザーの効果が反転しただけで浮き上がる事実に、やはりダウンフォースの大きさを実感するところだが、これだけの重大事故だったにも関わらず、ドライバーにとっても車体後方からルーフに掛けてがフェンスに包まれるようなかたちで接触したことで「頚椎側が完全にシートで守られている状態」となった。
ドライブしていた松田は精密検査の結果、一部筋肉の裂傷や足首にヒビが入るなどの怪我は負ったものの、松田自身もリハビリを経て第4戦への復帰が叶った。
その“不幸中の幸い”は車両の損傷具合にも現れ、共通カーボンモノコックと一体化されている上部ロールケージ部こそ「変形があった」ものの、エンジンには奇跡的にダメージがなく、年間2基の運用に支障は出なかった。つまり今回は無交換だという。
「以前のクラッシュのときにも言いましたが、どう当たるかで必ず『そういうふうに設計しています』とか言えるわけではありません。ただいろいろなツキがあり、ドライバーの体は守られた、ということだと思います」