チーム・スズキ・エクスターはスズキのMotoGPクラスにおけるファクトリーチーム。スズキとしては、1980年代後半から1990年代前半にかけて活躍したケビン・シュワンツが1993年に、2000年にはケニー・ロバーツJr.が当時の最高峰クラスであった500ccクラスでライダーズタイトルを獲得した。
スズキ(当時のMotoGPクラス参戦チーム名はリズラ・スズキMotoGP)が参戦休止を発表したのは2011年シーズン終了後のこと。2008年のリーマンショックに端を発した厳しい世界的な経済状況、さらに2011年に発生した東日本大震災の影響などがその理由だった。リズラ・スズキMotoGPは2011年シーズン、アルバロ・バウティスタの1台体制で戦っていた。
こうしたなか、MotoGP参戦休止と同時に、スズキは2014年の復帰を目指すと発表。実際には2014年シーズンの最終戦バレンシアGPに参戦したのち、2015年から正式復帰となった。チーム名は『チーム・スズキ・エクスター』。『エクスター』はスズキの純正エンジンオイルブランド、つまり自社製品である。
休止前にはV型4気筒のGSV-Rで戦ってきたスズキは、復帰後からは直列4気筒のGSX-RRを投入。ライダーはこのシーズンからMotoGPクラスデビューを果たしたマーベリック・ビニャーレスと、アレイシ・エスパルガロ。チームマネージャーには2020年現在に至るまでダビデ・ブリビオが起用されている。
チーム・スズキ・エクスターに初優勝をもたらしたのは、ビニャーレスだった。2016年シーズン第12戦イギリスGPで、最高峰クラス参戦2年目のビニャーレスが優勝を飾ったのだ。この優勝は、スズキにとって復帰後初、クリス・バーミューレンが2007年フランスGPで挙げて以来の勝利となった。
2017年はビニャーレスとアレイシ・エスパルガロが移籍し、替わってルーキーのアレックス・リンスとアンドレア・イアンノーネが加入した。ここから2シーズン、優勝は逃したものの、それぞれのシーズンで数度の表彰台を獲得。表彰台の獲得回数から、翌年よりコンセッション(優遇措置)を外れている。
2019年はリンスに加え、ルーキーのジョアン・ミルが起用された。このシーズンはリンスが第3戦アメリカズGPでチーム・スズキ・エクスターに2年ぶりの優勝をもたらした。さらに第12戦イギリスGPでは、マルク・マルケス(レプソル・ホンダ・チーム)と最終ラップの最終コーナーまで接戦となったレースを制し、2勝を挙げてシーズンを締めくくっている。2019年シーズンはリンスがライダーズランキングで4位につけた。次第にホンダ、ヤマハ、ドゥカティの3強ファクトリーチームに食い込みつつあるチーム・スズキ・エクスター。2020年シーズンも引き続きリンスとミルのふたりで挑む。
(TEXT:Eri Ito)