全14ステージ15日間にわたって行われるダカールラリー。その期間中はアクシデントが頻発する。ライダーにはケアマネジャーのようなことをする担当者がつくが、それでも必要なものがなくなってしまうこともあるという。
「2018年はレギュレーションがいろいろ変わっていて、ライダーがカッパを持っていかなければいけない、とか細かいものがありました。でも、ライダーってそういうことにまったく関心がないんですよ。朝になると忘れてしまうんです。極端なことを言えば、次の日別の国に入らないといけないのにパスポートを持っていかないとか」
「映像だけ見ると結構うまく走ってますけど、その裏には世話をしてる人がいっぱいいるんです。子供が5人いるみたいな(笑)。携帯が必要なレインウエアをライダーが誰かに渡して行方知れずになったり、マシンにかけるカバーがなくなったり。それからは、カバーの代わりにゴミ袋を使いましたよ。いろいろ起きますよね、やっぱり」
「そういうのが普通すぎて、ひどいアクシデントだと頭を抱えたものはない」という本田LPL。しかし、大会期間中で唯一お湯のシャワーが浴びられるはずだったところで水が出てきたときはさすがにショックを受けた。
「我々スタッフも14日間、温かいシャワーは浴びられないんです。ビバークというラリーのキャンプ地が毎日移動していくのですが、シャワーは常に水。でも唯一サルタというところだけはお湯のシャワーが出るんです。我々のなかでは有名なところになっていて、みんな2週間のなかで非常に楽しみにしているんですよ。なのに、そこのシャワーに行ったら水だったという……。かなり衝撃的なことがありました」
過酷な環境下でレースを行うダカールラリー。ライダーたちにはロードレースとは違った素質が求められる。速さだけではダカールラリーで勝つことはできないと本田LPLは言う。
「当然、最低限のスピードは重要になってくると思うんですけど、それに加えてナビゲーションですね。ナビゲーション能力で、どれだけ間違えないかっていうところが非常に重要だと思います。もちろん、タフさも重要です。長く過酷なレースですから、ライダーも途中体調を崩したりします。それをいかにコントロールしながらやっていくかっていうところですよね」
「ダカールライダーはなんでも食べるんです。食べられる時に食べるだとかそういう所はしっかりしています。あと、ボリビアなどでは5000m近い山の上でレースをやるのですが、高山病になるライダーもいますよ」
さまざまな要素のタフさが必要とされるダカールラリーライダーだが、もちろんスタッフも同様だ。スタッフも含め、事前準備が重要になってくるのだという。
長く過酷なダカールラリーを戦い抜くには、心身のタフさとアクシデントにも臨機応変に対応できる柔軟さが必要なのだろう。そして、それらを存分に発揮するための事前トレーニングも。「速いだけでは勝てない」という複合的な強さが求められるダカールラリー。2019年こそ、ホンダがKTMの連覇を食い止めたいところだ。
