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国内レース他 ニュース

投稿日: 2023.03.23 11:38
更新日: 2023.03.23 14:34

iCraft 2023スーパー耐久第1戦鈴鹿 レースレポート

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国内レース他 | iCraft 2023スーパー耐久第1戦鈴鹿 レースレポート

MEDIA INFORMATION
2023年3月吉日

iCraftレースレポート
ENEOS スーパー耐久シリーズ 2023 Powered by Hankook 第1戦『SUZUKAS耐』
2023年3月18日〜19日鈴鹿サーキット(三重県)
予選:曇り/ドライ 入場者数:3800人
決勝:晴れ/ドライ 入場者数:8500人
OHLINS Roadster NATS(マツダロードスターND5RC)山野哲也/金井亮忠/野島俊哉

厳しいハンデを乗り越えトップに浮上するも接触行為を受けクラッシュ

 2023シーズンもマツダ・ロードスター(ND5RC)でスーパー耐久のST-5クラスにフル参戦するiCraft(監督:猪爪俊之)。昨年から体制を変更なく、iCraftと日本自動車大学校(NATS)のコラボを継続し、ドライバーも山野哲也、金井亮忠、野島俊哉の3名体制を継続する。

 昨年はシーズンを通して力強い走りをみせていたのだが、最終戦で不運なトラブルに見舞われてしまい、チャンピオンを獲得に手が届かなかった。その分、この2023シーズンにかける想いは並々ならぬものがある。

 開幕戦の舞台は鈴鹿サーキットの5時間耐久レース。シーズンのスタートではあるのだが、3月の開催ということで、NATS卒業を控えている学生もおり、集大成の1戦ということで、各メンバーも気合いが入っていた。

 スーパー耐久では、今年からAドライバー登録に関するレギュレーションが変更され、登録基準に満たない場合は、そのドライバーの実績等に応じてハンデキャップが付けられることとなった。スーパー耐久機構(STO)から出されたブルテンによると、山野がAドライバーとして登録した場合、決勝レース中に1度ピットレーンをドライブスルーしなければならないことが明記された。

 ピットレーン通過の際は制限速度を守らなければならないため、40秒以上のハンデを背負うこととなる。それでも、ハンデを乗り越えて好結果を掴み取るべく、チーム一丸となって開幕戦に臨んだ。

■公式予選

 今回はドライブスルーのハンデを受けることもあり、どちらかというと決勝レースで安定したペースを発揮することを重視したセッティングを模索。練習走行からさまざまなものを試し、ベストなものを探り、予選に臨んだ。

 この日は、朝から雨模様となり、午前に行われたフリー走行ではウエットコンディションとなったが、お昼になって雨は止み、路面コンディションも回復していったものの、コースの一部に水たまりが残っている中での予選セッションが始まった。

 通常ならばAドライバー予選から行われるのだが、路面状況も考慮してか、Bドライバー予選を先に行うスケジュールに変更。まずは金井がマシンに乗り込み、タイムアタックに向かった。濡れている路面に足元をとられれば、大きくタイムロスをしてしまうリスクもあったが、金井はきっちりとアタックをまとめ、2分31秒277を記録しクラス4番手につけた。

 続くAドライバー予選では山野が乗車。2分31秒485でクラス3番手タイムをマーク。2人の合算タイムで5分02秒764となり、ST-5クラス4番手からのスタートが決まった。

山野哲也
「フリー走行では、マシンのセットアップとしては足回りを中心に行なっていきました。そこそこのバランスは取れていましたけどパーフェクトな状態ではありませんでした。最終的に土曜日になって『このセッティングで行こう』というものが見つかりました。決勝ではドライブスルーのハンデを受けることが分かっていたので、それなりの順位で予選を終えられればと思っていましたが、その中で4番手をとれたのは良かったなと思います」

金井亮忠
「レースウィークを通して色々なセッティングを試しましたが、その中で一番ベストなもので予選を走れたのが大きかったと思います。決勝を見据えてのセッティングでもありましたし、決勝でドライブスルーのハンデを受けることも分かっていたので、予選から無理に攻めなくてもいいだろうというチームの作戦もあったので、その中で4番手で終えられたのは良かったかなと思います」

2023スーパー耐久第1戦鈴鹿 OHLINS Roadster NATS(山野哲也/金井亮忠/野島俊哉)
2023スーパー耐久第1戦鈴鹿 OHLINS Roadster NATS(山野哲也/金井亮忠/野島俊哉)

■決勝

 前日の不安定な天候から打って変わり、朝から青空が広がった鈴鹿サーキット。『OHLINS Roadster NATS』は、ST-5クラス4番手からスタートを切った。第1スティントは金井が務めたが、まずはAドライバーハンデを消化するため、1周目にドライブスルーのピットインを行った。これでクラス11番手まで後退し、トップとの差も大きく開いたのだが、金井は安定したペースで挽回を開始。開始1時間を経過したところで8番手までポジションを上げた。

 その直後、コース上でトラブル車両が発生し、フルコースイエロー導入からセーフティカー先導の状態に切り替えられた。ちょうど1回目のルーティーンストップのタイミングだったこともあり、72号車を含む大半のマシンがピットに入った。ここでNATSの学生たちが迅速な作業を披露し、このピットストップだけで、4番手まで浮上することに成功した。

 第2スティントの担当は山野。開始1時間30分のところでレースが再開されると、力強いペースで周回を重ねていき、1時間45分が経過した34周目には2番手に浮上。クラストップの2.7秒後方まで迫った。

 開始2時間を経過したところで2度目のルーティーンストップを行い、野島にドライバー交代。ST-5クラスはトップが接近している状態で、目まぐるしく順位が入れ替わるが、『OHLINS Roadster NATS』は表彰台圏内が狙える位置でレースを進めた。

 レース後半に入ると、コース上ではトラブルやアクシデントが続出。残り2時間を切ったところでは、同時多発的にコース各所でトラブル車両が発生し、この日4回目となるFCY導入と、その後2度目のSC出動と、波乱の展開となった。

『OHLINS Roadster NATS』は先述のFCY導入の直前にピットストップを行い、山野にバトンタッチ。義務となっている3回のドライバー交代を伴うピットストップを消化した。さらにSCが出たことで各車のギャップもリセットされ、トップから約8秒後方の4番手でレース再開を迎えた。

 ここで山野が一気にスパートをかけて、トップ浮上を狙った。まずは83周目に4号車ホンダ・フィットをパスすると、すかさず17号車マツダ・デミオと88号車マツダ・ロードスターのトップ争いに加わった。三つ巴の接近戦となるなか、山野は冷静に状況を判断し、86周目の1コーナーで2番手に浮上。その勢いで、17号車の背後につけ130R出口で並びかけて、ついにトップの座を奪った。

 しかし、その直後に17号車の接触を受けた『OHLINS Roadster NATS』は、挙動を乱してスピードが落ちないままシケイン前のイン側にあるガードレールにクラッシュし、マシンはリアセクションを中心に大破してしまった。この影響でFCYが出され、その後すぐに赤旗中断となった。そのまま再開されることなく、40分弱を残してレース終了となり、72号車は4位で今季初戦を終えた。なお、このアクシデントについて、大会審査委員会から17号車のドライバーがドライビングマナー違反をしていたとして、40秒加算のペナルティが同車両に与えられた。

『OHLINS Roadster NATS』をドライブしていた山野だが、意識はあるものの大きな衝撃があったということで、サーキット内のメディカルセンターに運ばれ、その後鈴鹿市内の病院に搬送された。検査の結果、脳震盪と肋骨骨折があり、脳については翌日に再度精密検査を行ったものの異常は確認されなかったため、3月21日に退院。山野の地元近くにある病院で、引き続き経過観察を行なっていく。

 マシンも大きなダメージを負ってしまったが、現在5月下旬の第2戦での復帰に向けて、チームは動き出している。

山野哲也
「決勝ではFCYやSCが後半に入ってかなり出るだろうと予想していましたが、その読み通りの展開となりました。それを見越して早めにピットインをする流れに持っていったことが功を奏する形になり、トップとの差を縮めることができました。最後の給油とタイヤ交換を終え、ちょうどトップに立ったところで、あのアクシデントに遭遇してしまいました。そこは少し勿体なかった感はあるけど、決勝の結果としては4位で終われたということは、次の富士24時間に繋げるという意味では悪くない順位だったのかなと思います。特に今回でチームに携わるのが最後となる学生たちもいて、彼らにとっては最後のレースでした。迅速かつ確実な仕事をするということで、みんなで努力して、優勝争いができるところまで来られたというのは、学生たちにとっても自信になったのではないかなと思います」

金井亮忠
「開幕戦ではあるのですけど、学生たちにとっては3月で区切りを迎えて、これが1年間の終わりとなるレースでした。それぞれが色々なポジションで作業ができるようになって、各自がベストを尽くせたのではないかなと思います。特に今回はドライブスルーのハンデがありましたが、最初のピットストップで学生たちも頑張って作業をしてくれて、上位勢よりも先にピットアウトできて、それがトップ争いに絡めた要因だったと思います。最後は残念な形にはなりましたが、まずは山野選手が無事だったということころで、ひと安心です」

野島俊哉
「決勝が始まってドライブスルーのハンデを受け、最下位に落ちた時は『このハンデは重すぎるのではないか?』と思いました。ただ、展開に恵まれて上位争いに絡むことができたと思いますが、あれがなければ上位に来ることはできなかったと感じています。このハンデで毎回戦っていくとなると、いつも上位争いをするのは厳しいものがあるのかなと思います。残念な結果にはなりましたが、特に決勝ではタイムの落ち幅がすごく少なくて、コントロールの幅が広いクルマに仕上がっていたと思います。ピットワークもNATSの学生さんたちが、集大成となるような完璧な作業をしてくれたのが、何より嬉しかったです」

猪爪俊之監督
「ちょうどトップに立った瞬間に、残念なアクシデントが起きてしまいました。まずは、山野哲也選手が大事に至らなかったということが、本当に何よりです。あのアクシデントについては接触してきた17号車のドライバーに対して、ドライビングマナーの違反行為があったとして、正式結果でペナルティが出されたということ。山野選手に非はなく、彼の名誉が守られたということは、しっかりとお伝えしたいと思います」


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