そう感じた金曜、開幕戦以来ハミルトンがトップタイムを出し切った。何度もコースを外れ、減速態勢を乱し、エスケープゾーンに逃げ込む。シューマッハーも、そうだった。“自分リミット”を検知するセンサーを磨き、通過できないと判断したらサッとあきらめる。フリー走行なのだから、それでいい。タイヤにフラットスポットを作ろうが返却するモノだから、惜しげなく試せばいいのだ。そうやって1年ぶりに再会するコースを愛でるように攻め、ポイントを抑えるハミルトンの行為が、はっきり見てとれた。
FP1でセクター1&3ベストタイム、FP2では1&2、あちこちで自分リミットを探った結果はオールトップ。昨年と同じようにドライビング・リズムを完調レベルに整えたハミルトン。しかし2日目からは、ソフト側のタイヤ3種類に合わせた走りをそろえ、万が一ウェットになったときも想定して、どこかにマージンをとっておく必要はあるだろう。
プライベートライフが何かと騒がれるハミルトンだが、北米カナダもアメリカも大好きなようで、ヨーロッパよりリラックスしているように感じる。カナダ4勝男はオースティンのアメリカGPでも4戦3勝の75%勝率、この大陸では滅法強い。
シューマッハが2002、03、04年に3連勝してから、誰も連覇できないカナダGP。ハミルトンは容赦なく襲うハプニングやサプライズやトラブルを、はねのけるか。24点差から挽回への階段を踏み上がる重要レース。ここが終わると全21戦シーズンの、ちょうど三分の一が終了する。ハミルトンにとって「オープン・エンド」な中盤戦に期待しよう。