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F1 ニュース

投稿日: 2020.07.26 06:30
更新日: 2020.07.26 06:31

【中野信治のF1分析第3戦】もはや別カテゴリーのメルセデス。見習いたいフェルスタッペンとマグヌッセンの図太さ

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F1 | 【中野信治のF1分析第3戦】もはや別カテゴリーのメルセデス。見習いたいフェルスタッペンとマグヌッセンの図太さ

 フェルスタッペンは先ほどお伝えした『カートのようなドライビング』がレース前半の半乾き路面でも活きていたと思います。あのコンデションは本当に難しいと思います。常にリヤが出るか/出ないかというギリギリの状況なので、神経をすり減らしながらドライバーも走っています。

 それが10~20周も続けるというのは本当にすごく大変なことです。100パーセントの力で発揮してマシンコントロールするか、それを90パーセントくらいでコントロールするかの差は圧倒的に大きくて、90パーセントだと20周走れても、100パーセントだと10周ももたないと思います。

 でも、だからといって「ここのコーナーは抑えて走ろう」となると、その部分でコーナーごとにコンマ1秒ずつ差が広がってしまいますし、10個のコーナーで1秒、10周すれば10秒の差になってしまいます。モータースポーツというのは非常にシンプルで、そういったところの積み重ねです。あの100パーセントの連続走行を見て、改めてフェルスタッペンの凄さを感じましたね。

 その後方では今回もマ『ピンク・メルセデス』といわれているレーシング・ポイントがかなり好調でしたが、前戦もクルマ自体の動きは良かったですから、どのサーキットに行ってもあのマシン速いかなとは思いました。ですのあのパフォーマンスは予想どおりといいますか、この順位くらいには来るかなというところにちゃんと来ましたね。ピンク・メルセデスは今回の小回りのハンガロリンクでも速かったですから、これからもいろいろなタイプのサーキットでも速いということになります。今後も見る側としてはにとても楽しみな存在です。

 あと、ちょっと面白いなと思ったのはハースの2台の作戦ですね。ウエットタイヤを履いてフォーメーションラップに出て、グリッドに戻らずにピットスタートを選んで早めにドライタイヤに変えるという作戦ですが、もちろん、勇気がいる作戦だと思いました。でもあの予選順位(16番手、18番手)から大きく順位を上げるには、そういった作戦しかないでしょうし、チームの判断にドライバーも難しい路面のなかできっちりと応えてくれてくれました。

 特に僕が注目したのは(ケビン)マグヌッセン(ハース)ですよね。ああいう波乱気味の展開のときの図太さというか、図々しい強さを持っているドライバーの真骨頂を見せてくれました。早めのドライタイヤ交換で一時3番手まで順位を上げて、堂々と上位で戦っていた。あれは見ていて痺れました。ああいうメンタルは日本人にはなかなかない部分なので、ぜひとも世界で戦う日本人ドライバーには、ああいう図太さがほしいですね。

 あの図太さがないと世界では戦えないですし、マグヌッセンがF1に結構長い間残り続けていられるのも、その図太さが理由のひとつだと思います。何かあった時に『コイツなら何かをやってくれるかも』と思わせてくれるドライバーです。

 もちろん全員ではないですが、日本人ドライバーはパフォーマンスを発揮できる幅が狭いようなイメージがあります。日本の国内レースで、荒れた展開やウエットコンディションで外国人ドライバーが強いというのもそういうところですよね。難しい路面ではドライブする技術だけでなく、メンタルの部分もすごく大きい。ウエットコンディションでのポジティブ思考とネガティブ思考では、それだけでタイムが2~3秒変わってしまいます。

 次のイギリスGP、シルバーストンはテクニカルサーキットで低速から中速コーナーもあり、中高速コーナーも結構連続しているので、メルセデスに関しては弱点になるような隙が見えないですね。おそらくマクラーレンも速いと思います。3連戦のあとで1週空くので、レッドブルとフェラーリに関しては、どれくらい修正してこれるか。

 当然、フェラーリやレッドブルは今、ファクトリーでいろいろなことを試していると思います。それに対応したアップデートが間に合うかはわからないですけれど、経済的・人的に余裕があるチームはできてしまうんです。

 フェラーリやレッドブルが速さを取り戻してくれたほうが、我々見ている側としてはもっと面白くなりますので期待したいですね。サーキットの特徴もこれまでの2戦とは違うので、そういった意味でもどのような流れになるのか見てみたいですね。

<<プロフィール>>
中野信治(なかの しんじ)
1971年生まれ、大阪出身。無限ホンダのワークスドライバーとして数々の実績を重ね、1997年にプロスト・グランプリから日本人で5人目となるF1レギュラードライバーとして参戦。その後、ミナルディ、ジョーダンとチームを移した。その後アメリカのCART、インディ500、ル・マン24時間レースなど幅広く世界主要レースに参戦。現在は鈴鹿サーキットレーシングスクールの副校長にスーパーGT、スーパーフォーミュラで無限チームの監督、そしてF1インターネット中継DAZNの解説を務める。
公式HP https://www.c-shinji.com/
SNS https://twitter.com/shinjinakano24

2020年スーパーGT Red Bull MOTUL MUGEN NSX-GTの中野信治監督
Red Bull MOTUL MUGEN NSX-GTの中野信治監督


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