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F1 ニュース

投稿日: 2020.11.12 11:12
更新日: 2020.11.13 01:27

【F1チームの戦い方:小松礼雄コラム第15回】トラブル発生もパーツ交換の許可は下りず。悔しさと充実感のあった2日間

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F1 | 【F1チームの戦い方:小松礼雄コラム第15回】トラブル発生もパーツ交換の許可は下りず。悔しさと充実感のあった2日間

 2020年シーズンで5年目を迎えたハースF1チームと小松礼雄エンジニアリングディレクター。F1史上初めて2日間で開催された第13戦エミリア・ロマーニャGPは、新型コロナウイルスの影響で急きょ無観客レースとなった。トラブルに見舞われた状態で予選とレースを迎えたが、一体どれほど影響があったのだろうか。現場の事情を小松エンジニアがお届けします。

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2020年F1第13戦エミリア・ロマーニャGP
#8 ロマン・グロージャン 予選16番手/決勝14位
#20 ケビン・マグヌッセン 予選17番手/決勝リタイア

 14年ぶりにイモラでのF1開催となりましたが、実は僕がF1で働き始めて最初に行ったレースがイモラでのサンマリノGP(2004年)でした。当時はB・A・Rホンダに所属していて、この年はジェンソン(バトン)が予選でポールポジションを獲得し、レースでは表彰台に乗りました。

 すごく懐かしいのですが、当時のことは結果以外あまり覚えていません。初めての仕事だったので、いっぱいいっぱいだったんだろうなと思います。今回イモラに行って、ほぼすべてが新鮮に感じられました。

2004年F1サンマリノGP
2004年F1サンマリノGP表彰式 ミハエル・シューマッハー(フェラーリ)、ジェンソン・バトン(B・A・Rホンダ)、ファン・パブロ・モントーヤ(ウイリアムズ・BMW)

 モンツァやムジェロもそうですが、イタリアのサーキットは景色がきれいです。イモラではアクア・ミネラリを立ち上がった右側に古い建物がそのまま残されていて、反対側には松の並木が広がっています。最後コーナーのリバッツァの外側では普通の家のベランダからレースを観ることもできます。そういうのも含めて、昔のサーキットには趣があるなと、思います。

 レースでは残念ながらケビンはギヤボックスに問題を抱えてリタイアすることになったのですが、問題はすでに予選で起こっていました。F1のクルマは最高の性能を発揮するためにいろいろなものがコンピューターで制御されていますが、ギヤボックスもそのひとつです。コンピューターで制御するためには、センサーで正確な状況を把握してコンピューターに送らなければいけません。そのセンサーのひとつに問題が出てしまったのです。

 通常ドライバーはアクセル全開のままステアリングに付いているギヤシフトパドルを操作してギヤを変えます。しかしセンサーに問題がある状態で(つまりギヤボックス内部の状態が正確にわからないまま)同じようにギヤを変えようとすると、上手くギアを噛み合わせることができずに壊してしまう場合があります。

 ですからセンサーに問題が出た場合は、ギヤを壊さないで安全にシフトアップできるような設定に自動的に変更されます。しかしこの場合、ギヤは安全に入りますが、一方で加速が鈍るのでタイムロスに繋がります。それがどれくらいの頻度で起こるのかによってロスの大きさは変わりますが、予選で起きたレベルだと1周で0.1〜0.2秒ほどです。特にあれだけ予選のタイム差が拮抗していたので、ケビンにとって申し訳なかったです。

 実はフリー走行でも、スタート練習の時と走行中に同じ問題が起きていました。でもトラブルが起きたと確認できる事象は走行中の1回だけだったので、ギヤボックスを管理しているフェラーリ側からは問題だとは言われていなかったのです。それが予選で悪化したので、予選後にセンサーを交換させてもらえるようにFIAに打診しました。

 ところが日曜日の朝にセンサーの交換は許可できないと言われ、そのままレースに臨むことになりました。パルクフェルメ規則下ではFIAの許可がないとパーツを交換できないのですが、もしレースであれだけ状況が悪化することが想定できていれば、ペナルティを受けてでも交換しておくべきでした。

2020年F1第13戦エミリア・ロマーニャGP ケビン・マグヌッセン(ハース)
2020年F1第13戦エミリア・ロマーニャGP ケビン・マグヌッセン(ハース)

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