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F1 ニュース

投稿日: 2021.06.02 10:37
更新日: 2021.06.02 11:18

英国人ライターのF1ルーキーペア観察日記:自己過信でミス? シューマッハーが3000万円以上のクラッシュ

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F1 | 英国人ライターのF1ルーキーペア観察日記:自己過信でミス? シューマッハーが3000万円以上のクラッシュ

 2021年F1にデビューしたミック・シューマッハーとニキータ・マゼピンは、ともにハースF1チームで初めてのシーズンを送っている。ふたりはどのように学び、つまずき、成長していくのか。キャラクターの異なるふたりのルーキーのデビューシーズンを、英国人ジャーナリスト、クリス・メッドランド氏が観察していく。今回は第5戦モナコGP編だ。

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 ハースF1チーム代表ギュンター・シュタイナーは、モナコGPの週末を前にドライバーたちに対し、ひとつのアドバイスをしていた。それは「決してバリアに近づくな」ということだ。

 当たり前の指示だが、彼のそのアプローチには明確な理由があった。ハースのマシンはダウンフォースが高くないため、モナコでは他のチームより苦労することが分かり切っていた。この特殊なサーキットでは、多くのチームが特別なハイダウンフォースパッケージを使用する。だがハースにはその余裕がなかった。

 そのため、ハースはモナコで他のチームと比較して圧倒的に遅いだろうと、シュタイナーは予想していた。だからこそ、ドライバーたちに愚かなことをしないよう釘をさしたのだ。競争力のないマシンで走っていると、他のチームと戦うなかで、限界を超えてしまう。だが、モンテカルロではそれは絶対に許されない。

 スペインの週末、シュタイナーはドライバーたちに対してこう警告した。F1で走る初のモナコでリスクを取りすぎると、クラッシュする羽目になるかもしれない。そのミスは非常に高くつくし、せっかくのモナコの思い出がクラッシュということになってしまうぞ、と言い聞かせたのだ。

 今年ここまでニキータ・マゼピンが多くのミスを犯してきたことを考えると、このメッセージは主に彼に向けられたものと思われていたが、実際には、彼はシュタイナーの要求に忠実に従った。

 FP1は特に問題なく終了し、ハースは比較的競争力があるように見えた。だがFP2でミック・シューマッハーはミスを犯した。マスネでワイドになり、バリアに接触したのだ。モナコの割には、比較的軽い事故で済んだといっていいだろう。それでも右リヤタイヤがパンクし、サスペンションが壊れ、シューマッハーはヌーベルシケインまで辿り着いた後、マシンを停めた。

 クラッシュするのはマゼピンの方だと予想していた人が多かっただろうが、シューマッハーもまたルーキーだ。シューマッハーは、モナコではミスが大きな結果につながるということを、FP2でのクラッシュによって思い知ったはずだった。

 だがその警鐘に、シューマッハーは耳を傾けなかった。

2021年F1第5戦モナコGP ミック・シューマッハー(ハース)とギュンター・シュタイナー代表
2021年F1第5戦モナコGP ミック・シューマッハー(ハース)とギュンター・シュタイナー代表

 FP3でハースは好調に見えたが、それを鵜呑みにすべきでないことをチームは承知していた。それに、最終プラクティスで良いラップタイムを出すことは重要ではない。ここでミスをすれば取り返しのつかないことになり得るからだ。シューマッハーはそのことを、大きな失敗を通して知ることになった。

 14番手に位置し、さらに自己ベストタイムを更新しようとしていたシューマッハーは、カジノ・スクエアの出口でリヤのコントロールを失い、バリアに激突した。マシンは大破し、2時間後の予選までに修理できないのは明らかだった。この事故による競技上の損失は、シューマッハーもチームも予選で戦うチャンスを失ったことだ。そして金銭的には、シュタイナーから聞いた話では、修理に30万ドル(約3300万円)から50万ドル(約5500万円)の費用がかかる見通しであるということだった。

 FP3でいいラップタイムを出そうとプッシュしたことで、50万ドルが一瞬にして失われたわけだ。

2021年F1第5戦モナコGP ミック・シューマッハー(ハース)がFP3でクラッシュ
2021年F1第5戦モナコGP ミック・シューマッハー(ハース)がFP3でクラッシュ

 もちろんシューマッハーはルーキーであり、ルーキーはミスを犯すものだ。マックス・フェルスタッペンも、かつてモナコのプラクティスでクラッシュしたことがあるし、シャルル・ルクレールも今年の予選Q3でクラッシュした。だが、シューマッハーは最近のパフォーマンスから少し自信を持ちすぎていたのではないか。そして自分の力をはっきり証明したいという気持ちを抑えられなくなったのかもしれない。そういうことをすべきでないと、シュタイナーは事前に警告していたのだが。

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