1週間前に同じレッドブルリンクで開催されたF1第8戦シュタイアーマルクGPでは、スタート直後にピエール・ガスリー(アルファタウリ・ホンダ)とシャルル・ルクレール(フェラーリ)が接触事故を起こし、ガスリーはリタイアを余儀なくされた。レース直後のルクレールは「ピエールが左に寄ってきた」と憤慨し、ガスリーは「シャルルにぶつけられた」と主張。ふたりの見方は、まったく相反するものだった。
木曜会見に出席したガスリーは、その事故について真っ先に訊かれた。「その質問だけはしてほしくなかったよ」と、ガスリーは苦笑いするしかない。
「今週末は、もうちょっとうまくいくことを願っている。とにかく先週は悲しかった。う〜ん、この話はもうやめようよ」
よほどのトラウマになっているようだ。それでも司会者は「いや、もう少し聞かせてください」と、追求の手を緩めない。「あなたとシャルルは、私生活では非常に仲がいいですよね。その意味であの接触事故は、一種の友情試験だったのでは?」
かなりキツい質問である。事故によってふたりの友情にヒビが入ったのではないかと訊いてきたわけだ。ガスリーは少し真面目な顔つきになって、こう続けた。
「いつかはそういうことが起きると思っていた。そして今回の事故は、想像以上に傷つくものだった。レースでの上位入賞のチャンスも、一気にフイになってしまったからね。相手がシャルルでなくても、すごく悲しい事故だった。でもこれもレースの一部だということもわかっている。前に進んで行くしかない」
あのあとふたりで話したのだろうか?
「もちろん。レース後にシャルルが会いにきてね。その時点での僕はまだ、全然あの事故に納得がいっていなかった。でもシャルルのレースの仕方は昔からよく知っているし、本来はすごくフェアな戦い方をするやつだ。わざとあんなことをするなんてことは、絶対にない。F1に来てからだけでも、もう4年目になるわけで、その間シャルルと何度もバトルしてきたしね。今回はたまたまリタイアしてしまった。それだけのことだし、二度とこういうことが起きないようにしたいね」
ではもしあの事故がなかったら、どこまでいけていたのだろう?
「初日から絶好調だったし、ユウキのレースペースもすごくよかった。クルマのポテンシャルが高かったことは確かだね。フェラーリがあそこまで速かったのは予想外だったし、おそらく彼らには追いつけなかっただろう。でも8位入賞は十分可能だった」