これまで以上にオーバーテイクの頻度は高まり、走る側も見る側も熱くなれるレースが、コースを選ばず実現される期待大ということである。各テストでのラップタイムは公表されていないが、いずれも今年のレースでのポールポジションタイムを更新することはなかったようだ。

 それは、ロードコースではハードコンパウンドのプライマリータイヤのみが使用されたこと、コースにタイヤラバーが十分に乗っていないコンディションだったこと、更には、秋も深まってタイヤが性能をフルに発揮するには気温が低いことも影響していたようだ。それにプラスして、どのコースでもドライバーたちは、ファイアストンが今シーズンに供給したタイヤとは異なるスペックを用意する必要があるとの意見を述べていた。大幅なダウンフォース減がなされるのだから当然だ。

 9月末のセブリングでは、インディカー主催による最後のテストが開催され、両メーカーが2台のマシンを走らせることを許された。2台目をシボレーはエド・カーペンター・レーシングに、ホンダはチップ・ガナッシ・レーシングに用意させた。そして、ドライバーはモントーヤとセルビアに加えて、チャンピオンになったばかりのジョセフ・ニューガーデン、スペンサー・ピゴット、現役最多勝ドライバーで4度のタイトル獲得経験を持つスコット・ディクソン、ジェイムズ・ヒンチクリフが2018年パッケージを試す機会を手にした。

 この後は出場2メーカーそれぞれが2セットずつのエアロキット装着マシンを使い、10月2日から12月中旬という期間にテストを5日間行った。

ロードアメリカでテストを行うシモン・パジェノー

 シボレーが最初の独自テストを行なったのはロードアメリカ。ドライバーは2016年チャンピオンのシモン・パジェノーとピゴット。対するホンダはミド・オハイオでテストした。8月初旬にインディカーが2メーカーのマシン両方を走らせたコースだ。シボレーがひとつでも多くのコースのデータを集めに行ったのに対し、ホンダは一度走らせているコースでラップを重ねることで新エアロへの理解度を高めようと考えた。

 シボレーは次にショートオーバルのフェニックス、更には1.5マイルのテキサスモータースピードウェイでテストし、12月12、13日にセブリングを走ってメーカーテストを完了させた。

 セブリングでの2日目にはAJフォイト・エンタープライゼスに用意させたマシンでトニー・カナーンに走るチャンスを与えることもした。

「3時間のテストで良し悪しを判断するのは難しい」と走行直後に話していたカナーンだったが、「ダウンフォースが少ない2018年パッケージでは、エンジンパワーをいかに路面に伝えるかが重要。それは良い傾向だ」とポジティブなコメント。他のドライバーたちも意見は同じだ。そして、同じインプレッションをスーパースピードウェイやショートオーバル、ロードコースでも彼らは受けている。

スーパースピードウェイ用のエアロをテストするスコット・ディクソン

 ホンダは10月23日のテキサスモータースピードウェイ(全長1.5マイル)がテスト2日目で、10月26日にはインディアナポリス・モータースピードウェイでテスト。12月7日にはフェニックス・インターナショナルレースウェイ(全長1マイル)で走り、12月14日にはセブリングでテストした。

 フェニックスのテストでは終盤にヒンチクリフがクラッシュ。原因が完全に判明していない点は少々不安だが、そのマシンを修復し、2018年に初のフルシーズンエントリーをシュミット・ピーターソン・モータースポーツから果たすロバート・ウィケンスが新エアロ装着マシンをセブリングで初めて走らせた。

 チームへのエアロキットのデリバリーは11月末にスタート。チーム毎のテストは年明け後に解禁される。なお、2017年中のマニュファクチャラーテストに加わることのなかったチームには、初テストの前に1日(=5時間)の走行時間が与えられる。アンドレッティ・オートスポート、レイホール・レターマン・ラニガン・レーシング、デイル・コイン・レーシングはテストに一切参加しなかった。新規参入のハーディング・レーシング、カーリン、ユンコス・レーシングなども同様だ。

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