インディーカーはヘルメットを取り囲むようにコクピット内側に衝撃を吸収するパッドがグルっとマウントされている。2015年のインディ500ではサスペンション・アームがモノコックを貫通してドライバーにダメージを与えたため、サスペンションピースが突き刺さりにくくなるよう出っ張りが設けられた。その他にも、ホイール&タイヤ、ウイング、ノーズピースなど、多くのパーツはアクシデント時にも飛散して観客席に飛び込むことがないようテザー(強靭な綱)でマシンに固定がされている。
F1はドライバー保護のために今年からHALOを導入しているが、インディカーは戦闘機のキャノピーに使用されている強固で軽量の素材を利用した背の高いウインドウスクリーンを現在開発している。
■ハイスピードのオーバルバトルを支える技術
コースの安全性向上も日々進められている。もっとも大きな進歩をもたらしたのはインディアナポリス・モータースピードウェイが開発に携わったSAFERウォールだ。
鉄製レールをコース側に並べ、その背後に発泡スチロール系素材を配する構造は、ヒットするマシンの衝撃を吸収しながら、マシンの急激な減速を防ぎ、ドライバーの身体に大きなダメージを与えることを防いでいる。
ウォールの上に設置されるキャッチフェンスも、金網はコース側、支柱を外側に配するよう多くのコースが改修を行なって来ている。フェンスの上部はマシンをコース外へと飛び出させないよう(ドライバー自身の安全と観客の安全のため)コース側に湾曲させたデザイン。金網がコース側にあることで、マシンがパイプに衝突してマシンが急激に減速することが避けられている。
今回のアクシデントではフェンスを支える支柱の一部が破壊され、2時間をかけて溶接作業などの修復が行なわれたが、その作業の不完全さをセバスチャン・ブルデー(デイル・コイン・レーシング)は非難し、リスタートをするか大いに戸惑っていた。
彼は昨年のインディ500予選で瀕死の大事故を起こしているため、コースの安全性に関する意識が多くのドライバーより高いのだ。同じ場所で同じような事故が起これば、空を飛んだドライバーはフェンスを突き破り、ウィケンス以上の悲惨な事態に見舞われていた可能性を心配してのことだった。
ハイスピードバトルが魅力のひとつであるインディカー・シリーズ。過去の悲惨なアクシデントを経験として今も安全対策を進化させている。