そして迎えた13周目のファイナルラップ。さらに雨量の増したコンディションがM1RAのエングストラーを味方し、ターン1でコロネルを抜き去り2番手へ浮上すると、そのまま首位のフィリピとのバトルに持ち込み、フィニッシュまで残り3コーナーを残したターン9でエングストラーがついにトップスポットを手に入れる。
このバトルでコンタクトを受けたフィリピはあえなくスピンオフしバリアにクラッシュ、レース後審議の対象となるもお咎めなしの裁定で、エングストラーがTCRヨーロッパ初優勝を決めると同時に、ポイントランキングでも2位に急浮上。
2位ファイルズに続き、3位チェッカーをくぐったのはコロネルだったが、彼のクルーがスタート開始5分前ボード掲示後に作業を続けていたことが発覚し、ドライブスルーの代わりに30秒加算ペナルティが下され無念の18位降格。代わってウォルフ-パワー・レーシングのアレックス・モーガン(セアト・クプラTCR)が続く表彰台となった。
しかしレース2波乱のドラマはここで終わらなかった。その主人公となったのはパンチャティッチとボルコビッチのふたり。スタートでストールを喫し、車列後方に下がっていたパンチャティッチは、レインコンディションを活かして鬼神の追い上げを披露し、ファイナルラップで4番手に浮上しフィニッシュした。
だがこの際、前方を走るボルコビッチのヒュンダイをプッシングし、スピンに追いやっており、このバトルの結末に憤慨したボルコビッチは、パルクフェルメで制止する妻でマネージャーのアドリアナ・ボルコビッチさんをマシンのボンネットに跳ね退け、左フロントドアをパルクフェルメで横に停まっていたMレーシングのマシンにぶつけようとしたため、「競技者は容認できない行動をとった」としてレース除外処分に。
さらに事態を重く見たスチュワードとシリーズプロモーターは、2018年のTCRヨーロッパ・モンツァ戦でも“非紳士的行為”で警告を受けていたボルコビッチに対し、残るシーズンに「彼を歓迎しない意」を通知する事態となった。
シリーズプロモーターのパオロ・フェレイラは、リリースの中で次のように述べている。
「こうした決断をしなくてはならないことに失望しているが、他に選択肢はなかった。我々はシリーズプロモーターとして、この不幸な出来事をただの第三者として見過ごすことはできない。ファンやメディアに開かれたイベントで、暴力を容認することはできない」とフェレイラ。
「多くの場合、ドライバーはモータースポーツの世界に参入しようとする若者のためのモデルであり、その哲学こそ暴力的態度を容認しない最大の理由だ。我々の倫理規範において、間違いを悔い改め謝罪した人には機会を与えるべく、昨年のモンツァでの出来事を容認したが、寛容の時間は終わったのだ」