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海外レース他 ニュース

投稿日: 2023.07.14 14:19
更新日: 2023.07.14 14:20

連続ポール獲得も勝利が遠いハータと低迷するグロージャン。苦心するアンドレッティチームの障壁はF1参戦計画か

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海外レース他 | 連続ポール獲得も勝利が遠いハータと低迷するグロージャン。苦心するアンドレッティチームの障壁はF1参戦計画か

 一方のハータは、フルシーズン参戦5年目を迎えているが、安定性の確保がいまだに果たせていない。ハードなプライマリー・タイヤでは速いが、ソフトのオルタネート・タイヤではデグラデーションの進行が速い、といったレースになりがちなのは、異能と評されるドライビングにあるのではないだろうか。

 持ち前の優れた感覚に依拠した走りにおいては、マシンが常に高い限界点でコントロールされ、タイヤに大きく負担をかけてしまうのではないだろうか。また、集中力がたった一瞬でも途切れた時にはミスに直結してしまうという欠点もある。

 開幕戦では早過ぎる1回目のピットインによって順位を落とし、セカンドスティントではウィル・パワー(チーム・ペンスキー)と争って彼の強引なドライビングの被害者となった。

 ロードアメリカでは、PPからスタートしレースの大半をリードしたが、2回目のピットストップをライバル勢より1周早く行う作戦に足を引っ張られ、5位でのフィニッシュが精いっぱいだった。

第8戦ロードアメリカ レース序盤に隊列をリードするコルトン・ハータ
第8戦ロードアメリカ レース序盤に隊列をリードするコルトン・ハータ

「自分たちのマシンが最速だった。余力を残した状態でトップを走っていた」とレース後にハータは語っていたが、2回目のピットストップに早く入らざるを得なかったのは、セカンドスティントでの彼の燃費セーブが不十分だったからだ。

 これはドライバーのミスというより、チームが無線で燃料セーブの指示を出し続けなかったことがこのレースの敗因だろう。さらに、ハータは最終スティントの序盤にプッシュトゥパスを多用しており、チームとして戦い方がかなりちぐはぐになってもいた。

 ミド・オハイオでもハータは2戦連続となるPPを獲得し、決勝序盤をリードした。しかし、ここでも彼は勝てなかった。

 プライマリー・タイヤを使ったアタックでのPP奪取という予選の戦い方では、ライバル勢の鼻を明かしたアンドレッティとハータだったが、レースでは逆にプライマリータイヤでのスタートをチョイスしたアレックス・パロウ(チップ・ガナッシ・レーシング)に勝利をさらわれた。

 そして、自らはピットスピード違反を冒して11位フィニッシュ。勝利を狙えたレースとしては、惨憺たる結果しか得られなかった。

ピットレーン速度違反で順位を失ったコルトン・ハータ(アンドレッティ・オートスポート)
ピットレーン速度違反で順位を失ったコルトン・ハータ(アンドレッティ・オートスポート)

■安定した走りを見せるライバルらに勝つためには

 第2戦テキサスは予選10番手/決勝7位、続く第3戦ロングビーチは予選7番手から4位フィニッシュとハータは手堅くまとめていた。

 第4戦アラバマは予選決勝とも14位、インディアナポリスのロードコースで行われた第5戦では予選14番手/決勝9位と振るわず、波に乗れず。

 次に来たシリーズで最も重要なインディ500では、予選21番手と沈んだものの、決勝レースでは9位フィニッシュと粘りを見せた。

 まだ23歳の彼の頭には、安定感の獲得に向けた意識があることは認められる。現在のインディーカーシリーズには、パロウやパト・オワード(アロウ・マクラーレン)といった若くても確かな安定感を兼ね備えているドライバーがいる。

 彼らのドライバーとしての完成度は、ハータよりも明確に上だ。また、参戦2年目のクリスチャン・ルンガー(レイホール・レターマン・ラニガン)にもスピードとスマートさは備わっているように見て取れる。今後もそうした若いドライバーたちが次々と参戦してくるだろう。

 ハータが持つ生来のスピードがトップレベルにあることは間違いない。彼はあとひとつの要素として少しの安定感を手にしただけで、タイトルへ突っ走ることさえ可能だろう。

 ただし、そのためには彼を成長させる力を持ったチームスタッフ、不利をもカバーするチームの作戦力、確実な仕事をするクルーたちが必要だ。

チームのメンバーと話すコルトン・ハータ
チームのメンバーと話すコルトン・ハータ

■低迷の発端はF1進出へ向けたチーム改造計画か

 F1進出に向けて巨大ファクトリーの建設に取り掛かり、従業員の大幅増員も進めているアンドレッティ・グローバル、そして、その一部であるアンドレッティ・オートスポート。

 かつてない転換点を迎えている彼らは、メガチームとして成功するために新しい組織の構築を迫られており、現場でのパフォーマンス向上と同時に進めねばならない新たなチーム作りの難しさに直面している。

 F1進出に勢いをつけるためにも、彼らは自らのルーツであるインディカーシリーズで確固たる成績を残したいはずだ。しかし、現場の補強はまだ不十分で、アロウ・マクラーレンという新たなライバルにナンバー3の座を脅かされ、さらにインディライツでも新興のHMDモータースポーツに主導権を奪われてしまっている。

 チームがインディカーで再び成功するためには、アンドレッティ・オートスポートはより具体的かつ明確な目標を設定し、多くの優れた人員を主にマネジメント部門に迎え入れる必要があるのではないだろうか。

 マイケル・アンドレッティを中心としたプロジェクトは、サポートする企業も結束しており資金も潤沢だ。彼らはすでに来シーズンに向けた改革に着手しているので、それらがハータとグロジャンのパフォーマンス向上に繋がることと期待される。

アンドレッティ・オートスポートの会長兼CEOであるマイケル・アンドレッティ
アンドレッティ・オートスポートの会長兼CEOであるマイケル・アンドレッティ


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