ここまでデンマーク出身のルンガーにとってオーバルレースが大きな課題となっている。その理由は、チームのオーバル用セッティイングに戦闘力がないということが大きいだろう。
ここまでルンガーが参戦したオーバルレース7戦での成績は、予選20番手以下が5戦、決勝も6戦で18位以下という結果だ。救いは、予選の自己ベスト=17番手、決勝の自己ベスト=10位がどちらも次戦の舞台アイオワで記録されている点だ。
オーバルレースを習得する近道は、オーバルに特化したセッティングが施された良いマシンで走ることなのだが、RLLRはそういった環境にない。この状況を打破するためには、これからルンガー自身が経験を積み、良いマシンへの理解を深めて少しずつ進歩していくことしか道は残されていないのかもしれない。
ルンガー自身はと言えば、レース中にミスをすることが非常に少なく、苦しい展開でもゴールまでマシンを運ぶ率が非常に高い印象がある。ライバル勢の間でも“フェアに戦うドライバー”としての評価は高い。走りで無理をしてライバルを妨害をしたり、マシンを壊してしまうということが自分自身やチームに与える悪影響を深く理解し、その考えの通りにレースすることができているのだ。
さらに、コメントの仕方や、その言葉自体にも21歳とは思えない落ち着きぶりが現れている。
初優勝を果たしたトロントでも、チームのクルーたちに迎えられてマシンを降りたところでは少し興奮した姿を見せたが、テレビのインタビューには、「エネルギーを使い果たした。レース前に、“自分たちのマシンには勝てるスピードが備わっている”と言っていたが、その通りの走りを実現し、10秒ちょっとの差をつけて優勝できるとは……。これはチームの奮闘によるもの」
「昨年の今頃の自分たちを振り返れば、今とは程遠いレベルにあった。チームのみんなのために勝つことができ、すごく嬉しいよ」と冷静に答えていた。
走りやコメントにもベテラン手前の落ち着きを見せるルンガーは、意外な趣味を持ち合わせている。彼の趣味その1は“ピックルボール”。
バドミントンサイズのコートで、卓球用のものを少し大きくしたようなラケットを使うミニチュアテニス的スポーツは、誰にでも親しみやすいものとしして普及して行っているようだ。ピックルボール自体はどちらかというと高齢者用向け……なのかもしれないが、彼のインタビューでの冷静な答えぶりを思うと、彼の好む趣味として腑に落ちるところもある。
趣味その2はネットフリックス鑑賞=ジャンル問わず。そして、趣味その3は“コール・オブ・デューティ”というプレイステーションの戦闘ゲーム。このラインアップにも21歳らしいところと、そうでないところが混在しているようだ。
今シーズンの開幕前に“優勝するまで口髭を剃らない”という願掛けをした彼は、シーズンが後半戦に入ったところで初勝利に到達。ビクトリーレーンで髭を剃り落とした。残り7戦で彼がどんなレースを戦うか、おおいに楽しみだ。アイオワとゲートウェイというふたつのショートーバルでどれだけの進化を見せているのかに注目したい。
そして、得意のインディアナポリスのロードコースで行われる第14戦では、キャリア2勝目が挙げられる可能性も大いにあるだろう。続く最終2戦のポートランドとラグナセカでも、優勝争いに絡んで来る可能性を秘めている。
