更新日: 2018.02.16 23:19
【レースの焦点】急成長する次世代エースドライバー

それでも、課題はたくさんある。たとえば上海のフォーメーションラップでは最終コーナーの先で極端にペースを落としたハミルトンに翻弄され、偶数グリッドからの発進も災いしてベッテル、アロンソに先行された。第2スティント中盤には、タイヤに苦しんでペースを落としたベッテルを抜きあぐねた――レッドブルチームのコミュニケーション・ミスも影響した。リカルドに道を譲るようチームから告げられても、ベッテルには状況が把握できなかったのだ。そしてリカルドは、前のマシンの乱気流を受けるとフロントタイヤが一気に摩耗することを、よく知っている。
さらに、2ストップに集中したチームは、33周目にアロンソがピットインした際にも、第1スティントと同じように4周の間、リカルドをステイアウトさせてしまった。ラップタイムも最高速も互角のレッドブルとフェラーリ。アロンソの勝因は、マッサの接触をものともせず強気にスタート直後のポジションを勝ち取ったことと、34周から37周の間にフレッシュタイヤを履いてリカルドに対するマージンを広げた点にある。そして最終スティント、レッドブルが間隔を詰めてきた際にもアロンソは堂々と自己ベストを記録し、絶妙のコントロールで主導権を握り続けた。リカルドがアロンソを抜くのに必要だったのは“あと数周"ではなく“スタート"と“作戦"、自分中心のレース術だった。
王者ベッテルは若いチームメイトの力を認め、フェアに「何か学ぶべき点がある」と言う。「こんな大きな差は、微妙なセットアップの違いで生まれるものじゃない」と。
レース中、リカルドのエンジニアは「メルセデスを除けば、誰よりも速い」とドライバーに告げた。そしてYou are quicker than Alonso, AND Vettel――「アロンソと、ベッテルよりも速い」と加えた。去年までのウェーバー・チームは、どんどん士気が上がる。
4連覇を飾ったチームの誇りとリカルドの性格を考えても、チーム内に混乱が生じることはないだろう。今は打倒メルセデスあるのみ――アロンソと、レッドブルのふたりの対決が、上海のレースを引き締めた。ある意味メルセデスのふたり以上に、濃密なコンペティションは男前――だからゴールの後が、こんなに清々しい。