2010年は、スイスレーシング(SRT)で荒聖治らとともにニッサンGT-Rを駆りFIA GT1世界選手権にフル参戦した元F1ドライバーのカール・ベンドリンガー。ドイツのウェブサイト、Motorsport Totalでファン向けに寄稿しているコラムで、新年のメッセージと共に、SRTでの2010年プレイバックを語っている。

 かつてミハエル・シューマッハーらとともにメルセデスのジュニアチームで過ごし、レイトンハウス/マーチやザウバーで活躍した後スポーツカーレースに再転向したベンドリンガー。2009年までにFIA GT1では数々の優勝経験があるだけに、最後尾争いをしていた2010年は、ベンドリンガーにとって苦渋のシーズンそのものだったに違いない。

 そんなベンドリンガーだが、レースウイーク中はいつも平常心を失わず冷静沈着、不運な時も一度たりとも声を荒らげる事はなかった。シーズン開幕当初は荒と言葉を交わす事もほとんどなかったが、徐々に打ち解け最大の理解者となったようだ。レースウイーク中に荒と一緒に行動し、ピット内でも意見交換をしている姿を見かけた。

 Motorsport Totalに掲載されたコラムの中でベンドリンガーは、「いつも自分の名前をリザルトの下の方を探さなければならなかったことについて説明しよう」と切り出し、ニッサンGT-Rは2010年の新しいレギュレーション用に開発された車であり、それらは結果的には条件的に不利であった事を挙げている。

「世界選手権になるまでのFIA GT1車両と2010年モデルの新型車の性能差が出ないように“バランス・オブ・パフォーマンス”が行われたが、実際は必ずしも公平にはならなかった。なぜなら、マセラティやアストンマーチンらの古い車には、2010年用にバージョンアップすべく開発がなされていたからだ」とベンドリンガー。

「2010年レギュレーションで作られたGT-Rは、我々ニッサンチームが望んだような利点はなかった。GT-Rは文句なしに良い車だと言える。ただ問題だったのは、SRTはこのシーズンを通して車を完成させる事は出来なかったこと。スモーパワーは、SRTよりも随分と良いポジションをキープしていたのは、1年以上前からニッサンワークスのオフィシャル開発チームとしてテストを繰り返し、それらのプロジェクトの立ち上げ段階からミハエル・クルムは参加しているのだから、チームもドライバーもGT-Rを熟知していているのは当然の事だろう」

「SRTはイチから全てゆっくりとGT-Rと向き合う事から始めなければ行けなった。それは、僕達ドライバーだけではなく、監督のオットマー・ヴェルティやクルー全員もそうだ。レースウイーク中に、チーム全体が懸命に車について勉強し、開発しようと努力をしていたけれどそれらはとても難しかった」

「さらに、レースウイーク中に使用出来るタイヤはたった4セット。フリー走行や予選で存分にタイヤを使用してしまったら、予選レースや決勝レースでは全く太刀打ち出来ない」と、タイヤの使い方についての難しさにも触れている。

「SRTのGT-Rは確実にポテンシャルのある車だと言い切れるのだが、色々なセットアップの可能性を試すにはあまりにも時間が少なすぎた。セットアップが決まったと思ったら、次のレースでは全くダメだったり……この繰り返しばかり。93年のF1時代のザウバーC12も全く同じようなシチュエーションだったから当時を思い出したよ。フリー走行の時はとても好感触だったのに、数時間後には突然調子が狂った。理由は太陽だ。突然気温が上昇すると、当時のF1のマシンはちょっとした外気の差でもとても敏感に反応してしまったから」

 ベンドリンガーは、今のGT-Rを褒めつつも、ダウンフォースの不足を指摘している。
「GT-Rはあと少しダウンフォースを増やすと、まるでアレルギーのようにすぐに車全体が反応することはなくなるだろう。これらはニッサンによって改良されるだろうし、それによってコンスタントにより良い結果が出せると思う」

 今季もFIA GT1世界選手権に参戦すると明言するベンドリンガーだが、「去年と同じシートにおさまるかどうかはまだ分からない」と、SRTからの参戦についての明言は避けている。ベンドリンガーは今季も引き続きF1を中心にオーストリアの放送局のコメンテーターとしても活動する予定だ。

 FIA GT1のエントリー締め切りは1月31日。今季もSRTとスモウパワーの両チームの4台のGT-Rがスタートラインに立つのだろうか!? 

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