更新日: 2018.02.17 07:42
ロータス小松礼雄コラム:臨機応変の戦術変更

ロータスF1チームで昨年、ロマン・グロージャンを担当していたレースエンジニアの小松礼雄氏。今シーズンはチーフエンジニアに昇格してグロージャン、そしてパストール・マルドナドの2台のマシンでF1を戦います。
これまで何度も入賞圏内に入りながら、トラブルやアクシデントに遭ってきたロータスF1チーム。第4戦バーレーンGPでは前戦に続く連続7位入賞を果たしました。が、マルドナドはまたしてもミスで……。現場でエンジニアリングをまとめる小松氏は、どのようにバーレーンの週末を振り返るのでしょうか。
F1速報サイトでしか読めない、完全オリジナルコラム、第6回目の一部をお届けします。
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小松礼雄コラム 第6回
臨機応変の戦術変更
リバースストラテジー
バーレーンGPは本当なら7位、8位を穫れるはずだったんですけど、パストール(マルドナド)がまた、レースでとんでもないポカを2つくらいやってしまいまして(スターティンググリッドで間違ったスロットに止めて5秒加算のペナルティ&ピットストップでエンジンストール)、結局ロマンの7位だけになってしまいました。この7位は現在出せうる最高の結果なので嬉しかったですが、2台揃って獲るべきポイントを獲れなかったのはとても悔やまれます。
ロマンはP1をジョリオン(パーマー/テストドライバー)に明け渡し、さらにFP2とFP3では両セッション共にクルマに問題があったので、まったく走れていませんでした。初めてクルマがまともになったのがQ1だったという始末です。これはチームとしてはもちろん、あってはならいことですが、残念ながらこれが現状です。
その中でロマンは素晴らしい仕事をしてくれました。Q1が想像以上に良かったのでQ2ではタイヤを1セット温存しようと思ったのですが、ロマンはそこまでの自信はなく、結局2セット使ってしまいました。チームのせいで予選までまともに走れていなかったことを考えると、これはドライバーを責められません。しかし、これが後のレース戦略の選択式を狭めることになるわけです。Q3ではちょっとミスがあり、8位になれるところを10位になってしまいましたが、予選前はQ2落ちも覚悟していたので本当によく挽回してくれたと思います。
パストールの方は今回は週末を通して速かったです。トラブルもなく、FP2やFP3では常に想定どおりか、ややそれ以上のタイムで走れていました。残念ながら予選ではクルマ側に問題が起き、Q1落ちになってしまいました。この問題でストレートでコンマ6秒以上ロスしていたので本来ならば彼はロマンと同じか、もしくはロマンを上回るタイムを出せていたはずです。ここでもクルマの信頼性不足が出てしまい残念です。
この問題は日曜の朝、解決することができたのでレースでは本来の速さを出せるだろうとは思っていました。この様に本来の位置よりかなり後ろで予選を通った場合は、レースでどれだけフリーの状況で走らせられるかが鍵になります。Q1で落ちてしまった怪我の功名としてはオプション(やわらかい方の)の新タイヤが3セット残ったことです。
金曜日の走行データからレースは概ね2ストップ(ソフト→ソフト→ミディアム)になることが判っていました。ロマンは先ほど言ったようにQ2でオプションタイヤを2セット使ってしまったので、新タイヤは残っていません。ですから、彼の戦略はほとんど動かす幅がありませんでした。前のクルマをアンダーカットしたり、また逆に後ろのクルマをカバーする自由度があまりないんです。そのギリギリの状況の中でロマンはほぼ完璧なレースをしてくれました。
事前に7位にはなれると思っていましたが、6位にはなれると思っていないですし、もし8位になる場合があるとすれば、それはパストールに負ける場合だと予想していました。パストールが自滅したので結果としは、それ以上もそれ以下もない、想定どおりの7位でした。高い評価の良い走りだったと思います。
パストールのレース戦略は、先ほども言いましたが、まずは残っている3セットのオプションのニュータイヤをどう活かすかというのが基本になります。予選16位なので第1スティントはトラフィックに引っかかることになります。
今回の場合、おそらくほとんどのドライバーがソフト→ソフト→ミディアムの2ストップを選ぶとわかっているので、みんなと同じ2ストップを採っていたらトラフィックから抜け出すことができません。フリーエアで走行するためには、3ストップの方がいい戦略になります。次に新品のオプションタイヤをどこで使うかと考えたら、トラフィックで引っかかっている第1スティントで使っても効果が期待できないわけですので、第2、第3、第4スティントで使ったら良いだろうということが想像できます。
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「3ストップに意気込むマルドナド、そして圧巻の走り」