2014年2月に、日本でも劇場公開が決定している映画『ラッシュ プライドと友情』。1976年のF1ワールドチャンピオンを争ったジェームス・ハントとニキ・ラウダの間に起きたドラマを、『アポロ13』、『ダ・ヴィンチ・コード』等を手がけたロン・ハワード監督が描いたものだが、この映画の試写会に訪れる機会があったので、オートスポーツweb的レポートをお届けしよう。
現在もF1史に刻まれる壮絶なタイトル争いが展開された年、1976年。この年のF1は、この年ヘスケスからマクラーレンに移籍し、名車M23を駆ったハントと、75年にワールドチャンピオンを獲得し、連覇を目指し312T/312T2を駆ったラウダの間で、ふたりのマッチレースが展開された。その間にはスペインGPでのマクラーレン失格事件、ドイツGPでのラウダの事故等、さまざまな出来事があった。
この『ラッシュ プライドと友情』は、そんなチャンピオン争いを展開したハントとラウダのふたりを描いたものだが、酒好きでヘビースモーカー、プレイボーイで自由奔放だが、繊細な神経の持ち主であり、勝利だけを渇望し続けたハントと、レースへのあくなき情熱をもち、データやテストの重要性を説きプロフェッショナルでストイックに王座を求め続けたラウダという正反対なふたりのキャラクターが、さまざまなエピソードで綴られている。
●入魂のリアリティが、ストーリーを際立たせる
こういったクルマが登場する映画の場合、とかく気になるのはそのリアリティ。ストーリーに集中しようとしても、クルマや時代考証にリアリティがないとそちらが気になってしまうもの。しかし、この映画ではそのあたりは心配ご無用。一部史実と異なったり、ディテールが異なる部分が実際にはあるのだが、かなりマニアックなファンでなければ気付かないはずだ。マシンもハントのM23、ラウダの312T2をはじめ、脇を固めるティレルやロータスなどもきっちり描かれている。
何より驚いたのは、ハント役を務めるクリス・ヘムズワース、ラウダ役を務めるダニエル・ブリュールがかなりの“ハマり役”というところ。実際に写真で見比べてしまうとソックリという訳ではないのだが、かなり忠実にふたりの雰囲気を出している。脇役ではあるが、クレイ・レガッツォーニ役のピエルフランチェスコ・ファヴィーノなどもかなりいい“味”が出ていた。
●F1を知らない人にこそ観てほしい映画
ストーリーは、映画の日本語タイトルにもあるとおり“プライドと友情”が描かれており、爽やかな感動で終わることができる。その上で、この映画は「F1を知らない人こそ見て欲しい」と感じることができた。それは、この映画が史実をもとにを描いているものであり、壮絶な勝利への渇望、そして“命がけの世界”だった当時のF1における、極限状態での友情を描いたものだからだ。F1を知らない人は、F1に関する知識は持っていかなくてもいいので、「これは実話がベース」という観念を持って映画館にいってほしい。
もちろん、モータースポーツファンもぜひ観て欲しい作品であることは間違いない。ただし、「アラを探しにいこう」とか「レースシーンを見にいこう」という目的で観ることはあまりオススメしない。あくまでこの『ラッシュ プライドと友情』はF1、モータースポーツという舞台で実際に起こった史実をもとにを描いたドラマだからだ。
主人公のひとりであるハントはすでに他界してしまったが、もうひとりの主役であるラウダ自身も「映画としてもとても面白い作品で、ずば抜けた完成度だと思っている。レースシーンの迫力はもちろん、私とハントというふたりのレーサーの関係や葛藤が観る人の心に響く作品だ」と評した。
試写会後、しばらく経つと「もう一度観たい」と思わせる『ラッシュ プライドと友情』。今は2月の劇場公開が実に楽しみなところだ。
●作品情報
タイトル:『ラッシュ プライドと友情』
公式HP:http://rush.gaga.ne.jp
公開表記:2014年2月 TOHOシネマズ 日劇ほか全国ロードショー
配給:ギャガ
Rush – Trailer 3(英語版)
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オレさま烈伝 其の弐拾弐 ジェームス・ハント 電子版
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