1999年に来日し、全日本F3選手権を経て2001年からは全日本GT選手権/スーパーGTに参戦、09年まで日本で活躍したセバスチャン・フィリップ。その後は、ドライバーマネージメントに携わり後進の指導にあたっているほか、現在はフランスの名門ARTチームの幹部としての顔ももっている。

 ARTは今シーズンからメルセデス陣営の一員としてDTMへの参戦を開始しており、フィリップもメルセデスのチームユニフォームに身を包みDTMの現場で活躍中。スーパーGTとDTMを内部から知るフィリップは、2017年に車両規則の完全統一を目指す両シリーズの違いをどのように捉えているのか。

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Q:今季から、メルセデスAMG C63でDTMへ新規参戦をしたARTですが、チーム内でのあなたの役割を教えてください。

「ARTでは、DTMをはじめ、GP2、GP3で全般的なチームディレクターを務めている」

Q:これまでの様々な経験を踏まえて、スーパーGTとDTMの違いはどのようなところにあると感じていますか?

「まずスーパーGTとDTMとではプロジェクトに関わる人数や費用が大きく異なる。DTMではマシン本体やパーツ、装備、エンジニアやメカニックなどはもちろんのこと、レース全体で動く金額がスーパーGTよりも大きいんだ。特にエンジニアの数は、スーパーGTとは比べられないほどに多い。組織においても、エンジニアリング以外の面、例えば広報やオーガニゼーション、スポンサー関連、ロジスティックなどの対応をする各セクションも、DTMのメーカーの方がかなり大きな規模で、専用に組織化されている」

Q:両シリーズにおける大きな違いのひとつにタイヤがありますが、その点についてはどのように感じていますか?

「スーパーGTでは数多くのタイヤメーカーが開発を行っている。タイヤによって展開が大きく左右されてレースが面白くなるということは僕自身も体験しているから、よく分かっているよ。ただ、現在のDTMで動いている巨額の費用に加えて、さらにタイヤのために金銭的な負担が増えるのは好ましくはないだろう。“タイヤ戦争化”してそのシチュエーションが過熱していくことが、必ずしも良いとは思わない」

Q:現在のDTMのワンメイクタイヤでのレースは、どのように評価していますか?

「タイヤのクオリティという点はまた別の問題になるからコメントは控えるけれど、DTMにおける“ワンメイクレース”という点では満足しているよ。予選、そして2戦のレースをたった4セットのタイヤで走り切らなくてはならないのだけど、ワンメイクだから全車が同じコンパウンド、同じ条件で勝負をすることになる。タイヤマネージメント力は、ドライバーにとってはもちろん、チームにとっても挑戦であることは間違いないよ。そもそもDTMのタイヤ重量はスーパーGTの倍近くあるし、タイヤ自体がまったく別のものなんだ」

Q:DTMとスーパーGTが2017年にレギュレーションが統一化され、第1回目の交流戦が行われる予定です。

「両国の三大メーカーが参戦する最大のレースが交流戦を行うのはとても楽しみだ。日本では長くレース活動をしていたから、今僕が関わっているDTMと一緒にレースができることをとても楽しみにしている。でも、大まかなところでもタイヤ、DRS、ドライバーチェンジ、給油など、ドイツと日本それぞれのレギュレーションにはまだ違いがあるから、それが今後どうなるか気になるよね」

Q:交流戦は17年に日本で、18年にドイツで行われる予定ですが、その後に日本のメーカーがDTMへ、そしてドイツのメーカーがスーパーGTへ参戦することはあると思いますか?

「それは恐らくないと思う。ロジスティックの問題を除いたとしても、日本とドイツの距離は想像するよりもずっと本当に遠く離れている。なかなかその距離感を埋めるのは難しいのではないかと思うよ。その上、両国の全メーカーにとっても巨額な費用を費やしてシリーズ参戦をするメリットが思い浮かばないんだ。だから、アメリカも含めて年に1回どこかで交流戦を開催するという形で十分ではないかな」

Q:最後に、日本のファンへひとことメッセージを!

「ドライバーとしてではないけれど(笑)、スーパーフォーミュラの最終戦へ行く予定なんだ。鈴鹿で僕を見つけたら、ぜひ声をかけて欲しい」

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