2012 SUPER GT Race Report
ZENT CERUMO SC430 #38
立川祐路/平手晃平
第7戦 オートポリス < SUPER GT IN KYUSYU 250km >
◆10月2日(日)Race
決勝総合結果 3位
< 決 勝 > 天候:曇り |コース状況:ドライ
決勝日を迎えた阿蘇外輪山のオートポリス上空は、土曜とは打って変わってどんよりとした曇り空。気温 15度と肌寒いほどの冷え込みとなったこの日、LEXUS TEAMZENT CERUMO は午前9時20分のフリー走行を前にピットストップ作業のシミュレーションを入念に行うなど、朝早くから決勝での追い上げを期してしっかりと準備を整える。前日の予選ではスーパーラップに進出も、10番手に留まった#38 ZENT CERUMO SC430は、マシンバランスにはまだまだ改善すべき点もあり、決勝を前にしたフリー走行では決勝を想定したセットアップ作業など、やるべきことも多い。このため、平手がステアリングを握った#38 ZENT CERUMO SC430午前9時20分のセッション開始と同時にピットを離れた。
コースインした平手は、計測2周目を1分48秒539とすると、翌周には1分44秒586で3番手に。そこから1分45〜46秒というラップタイムで周回を重ねた平手は、午前9時34分にピットイン。一旦ガレージの中に収められた#38 ZENT CERUMO SC430は、メカニックたちの手によってセットアップ修正を施されると、再び平手のドライブでコースに復帰。1分46秒058にまでタイムを上げると、今一度ピットに向かった#38 ZENTCERUMO SC430は、早くも残り3分ほどとなったセッション終盤にピットアウト。このままチェッカーを受けた#38 ZENT CERUMO SC430は、最終的にセットアップとタイヤ評価をこなし、8番手というポジションでフリー走行を終了。このセッションではドライブしなかった立川も、この後に行われたサーキットサファリの時間帯にフィーリングを確かめると、LEXUS TEAM ZENT CERUMOは決勝前のすべての走行を終えることとなった。
慌ただしくピットウォークを終え、サポートイベントのGT ASIAのレースが終了した午後零時55分、早くも決勝に向けたスタート進行が始まった。8分間のウォームアップに臨んだのはスタートドライバーを務める平手だ。ウォームアップを終え、決勝への最終チェックを終えた#38 ZENT CERUMO SC430が向かったのは、イン側の9番グリッド。朝のフリー走行で黄旗追い越しをしてしまった#1 ウイダー HSV-010が、6番グリッドから降格されたため、#38 ZENT CERUMO SC430のスターティンググリッドがひとつ繰り上がったのだ。グリッド上でスタート進行を待つ間、リラックスした表情を見せる平手。
気温17度、路面温度24度となって迎えた午後2時のフォーメイションスタート。平手はゆっくりとタイヤを温めると、午後2時04分、ついに54周の決勝をスタートした。
惜しくも2周目の混乱の中で#36PETRONAS TOM'S SC430の先行を許し、10番手で2周目を終えた平手は、背後に迫る#23MOTUL AUTECH GT-R と接戦を演じる。3周目の2コーナーではインを奪われかけた平手だったが、返す刀で3コーナーでは10番手のポジションを奪い返す。
4周目に1分44秒556の自己ベストをマークした平手だったが、5周目には#23 MOTUL AUTECH GT-Rの先行を許し12番手に後退。さらに攻防の中で平手は9周目に最後尾にまでドロップしてしまう。実はこのとき、既に#38 ZENT CERUMO SC430のリヤタイヤは消耗が進み始め、ペースが苦しくなって来ていたためだった。しかしこれは予想外ではなく、LEXUS TEAM ZENT CERUMO は朝のフリー走行での結果を踏まえ、スタートで履くタイヤのライフが短い可能性を予見しており、状況に応じて2ストップから2ストップに作戦を切り替えるという2段構えの戦略を用意していた。
瞬時に2ストップ作戦に方針転換した高木監督以下、LEXUS TEAM ZENT CERUMO は10周目に平手を呼び寄せ、予定通り状態の良くないリヤのみ2輪を交換する。同時にピットインした#6 ENEOS SUSTINA SC430は8番手を走行していたものの、4輪を換えたこともあり、ピットで逆転した#38 ZENT CERUMO SC430が先にコースに復帰する。
14番手でレースに戻るも、リヤのみニュータイヤを履いたために序盤こそバランスに手こずった平手だったが、タイヤが温まってくると1分44〜45秒台のハイペースで周回し始める。先行するマシンたちは1分50秒に届くほどのペースダウンをしていることもあって、平手は見る間に30秒近かったギャップを削り取って行く。先行したマシンたちがピットインを行い始めた18周目には12番手、19周目には10番手と、早くもポイント圏内に復活。22周目には#35D'STATION KeePer を捕らえるなどして8番手と、ライバルたちのピットインを後目に見る間にポジションアップを果たした#38 ZENT CERUMO SC430は、なんと28周目にはトップに躍り出る。
無線でマシンとタイヤの状態を刻一刻と交信しながら、ピットのタイミングを計っていたLEXUS TEAM ZENTCERUMO は、34周目についに平手をピットインさせる。ここでスタッフは4輪タイヤ交換と給油を行うと、残り20周を立川に託すことになった。#17 KEIHIN HSV-010の後ろ、6番手でピットアウトした立川は、タイヤが温まると周囲を大きく上回るペースで周回し始めると、38周目にはもう#17KEIHIN HSV-010とテール・トゥ・ノーズに。激しく抵抗する#17 KEIHIN HSV-010を40周目の3コーナーで仕留め、5番手に浮上した立川は、42周目には自己ベストとなる1分44秒952をマークするなど、平手同様怒濤の追い上げを見せる。
数秒開いていた4番手の#36 PETRONAS TOM'SSC430に見る間に詰め寄った立川は、ついに44周目、その差をコンマ3秒と射程に収める。47周目の第2ヘアピンではいったん前に出たものの、イン側で粘る#36 PETRONASTOM'S SC430を抜き切れなかった立川だが、49周目の3コーナーでは狙いすましたようにインを奪ってオーバーテイク。これで#38 ZENT CERUMO SC430は4番手に躍進することに。
この時点でトップ3台は30秒近く先行していたため、LEXUS TEAM ZENT CERUMO も立川も“追撃もここまでか……”と4番手でのフィニッシュを想定していた53周目、なんと2番手を走行していた#39 DENSO SARD SC430がトラブルでストップ。労せずして3番手に浮上することとなった#38 ZENT CERUMO SC430は、そのまま3番手でのフィニッシュに。急遽2ストップに作戦を切り替えたことが奏功し、ともすれば大苦戦となる可能性もあった決勝を、見事3位表彰台で締めくくることとなった#38 ZENT CERUMO SC430。残念ながら#23 MOTUL AUTECH GT-R が優勝し、#46 S Road MOLA GT-R が2位に入ったため、シリーズチャンピオンという可能性は消えてしまったが、残る最終戦のもてぎでもここ2戦続いている好調をキープし、今季2勝目を目指したいところだ。
ドライバー/立川 祐路
「作戦がうまく行った、これに尽きますね。スタートで履くタイヤの状況が良くなかったので、あらかじめこういう事態は想定していましたし、チームがうまく対応してくれた結果だと思います。僕のスティントとしては、さほど無理をしたというようなことは無く、タイヤの状態が周りより良く、ペースが速かったので当たり前と言えば当たり前かなと。僕は平手が2回目に履いたリヤタイヤと同じ仕様のものを4本換えて出たのですが、こちらの予想どおりのパフォーマンスでした。終盤のバトルでも、こちらの方が良い状況でバトルしているので、オーバーテイクはそれほど大変というわけではなかったですが、4位より前は離れていたので、これ以上は届かない状況だったのですが、最後はラッキーもあって3位になれました。残念ながらチャンピオンの可能性は無くなってしまいましたが、その分もてぎでは思い切ったレースをしたいですね」
ドライバー/平手 晃平
「スタートで履くタイヤが、フリー走行で確認したら4〜5周でパフォーマンスが大きく落ちてしまうことが分かっていたので、2ストップは予定に入っていましたし、もう一方のタイヤの方が安定して良いペースで走ることが出来るということも確認済みでしたから、早くピットに入っても慌てること無く追い上げて行くことが出来ました。最初は凄いアンダーステアで苦しんだのですが、コクピット内でスタビを調整したりした結果、すぐにフィーリングも安定してくれて、良い走りが出来たと思います。立川さんに繋ぐ2回目のピットインのタイミングは、僕から無線でチームにタイヤの状況を伝えつつ、タイミングを決めましたが、3位にまで行けるとは思いませんでしたね。ポイントではレクサス勢のトップで最終戦に臨めるので、気分も良いですし、最終的にシリーズランキングで少しでも上位で終われるよう頑張ります」
監督/高木虎之介
「10周という短い周回でピットに入ることとなったわけですが、あの作戦もスタート前に既に選択肢の中に入れていたもので、うまくいけば走り続けて通常の2ストップになるけれど、状況によっては最短ならGT300に引っ掛かり始める7〜8周目くらいで入るかもしれないと想定していました。スーパーラップで使用したタイヤでスタートしなければならなかったのですが、そのタイヤではあまり長い周回はこなせないだろうという読みがありましたからね。リヤのみ交換で6号車の前に出ることも出来ましたし、二つ目の作戦でチームとしてもうまく対処できたと思いますし、その後の平手も良いペースで走ってくれました。6位以内に行ければと思っていましたが、まさか4位、さらに表彰台までは予想してませんでしたね。最終戦のもてぎではウエイトも無くなりますし、ドライバーに頑張ってもらって良い流れで終わりたいですね」
