3回の世界王者、サー・ジャッキー・スチュワートは、ジェンソン・バトンが移籍を決定した際に、もっと先のことを考えて判断をすべきだったと、バトンがマクラーレン入りし、ルイス・ハミルトンと組むことを心配する世間の声に同調した。スチュワートが言うにはバトンの短期的なチャレンジ精神が、この先、長い間、彼の評判に影響するかもしれないという。
ハミルトンは彼が9歳だった頃からマクラーレンとつながりがあり、その強い関係は2度のワールドチャンピオン、フェルナンド・アロンソを持ってしても割って入ることができず、精神的に強いと知られているアロンソですら、契約満了を待たずしてチームを去ることとなってしまった(下記関連ニュースを参照)。
このことからバトンは、ライオンの寝床に自らいけにえとして入っていき、プライドを傷つけられてしまうのではないかと周囲は心配している。
こんなことになる可能性があるくらいなら、ブラウンGP(現メルセデスGP)とおとなしく契約を延長すれば良かったとも言えるが、実はこのとき、バトンには選択肢がなかったのではないかとスチュワートは見ている。
「すべてを知っているのではないのだが、おそらく彼は3〜4週間先に決断をしていたのではないだろうか。メルセデスと会っていたと思われるときに決断をしていると思う。その時は単に金額だけを考慮に入れていて、チームに残留したときのロス・ブラウンやチームの仲間と築き上げてきたものを持ち続けるというメリットは考慮に入れてなかったのだろう」とスチュワートはクラッシュネット・ラジオで話している。
「彼はとどまるべきだったと思う。バトンは頻繁にチームを移っている。時としてそれが失敗に終わっていることから学ばないといけないのだと思うのだが。
シーズン序盤はクリーンでスムーズなドライビングで息をのむような活躍ぶりだった。しかし、後半に入りチームメイトのルーベンス(バリチェロ)の活躍が目立つようになった。
正確なところは知らないが、メルセデス・ベンツがブラウンGPを買収しようと考えたときに、シーズン後半のバトンのドライビングを見て、彼を欲しいと思わなかったのかもしれない。提示金額で彼はマクラーレンを選んだつもりだったが、実は選ばされていたのではないだろうか」
「バトンは間違いなくもがき苦しむことになると思う。それはハミルトンが、私が見た中で最も素晴らしい才能を持っているドライバーのひとりだからだ。性能の劣っているマシンをドライブしているときでも、その能力を見せていた。
ジェンソンにはそれができないという意味ではない。だが、ジェンソンはそのようなドライバーとこれまで組んだことがない。彼にとっては新しい経験になる」
「(ブラウン以外では)マクラーレンが唯一の良いシートだったし、これ以上のチームはない。だけど、ジェンソンは、チームとそれなりの期間を共にし、確立されたナンバー1ドライバーのいるチームに加入することになるのだ。
私にとってはそれは良い選択とは言えない。もし自分だったら、今年は多くのドライバーが勝ち星を挙げるだろうから、チャンピオンを防衛できなかったとしても、将来を考えた選択をしただろう。
マクラーレンは素晴らしいチームだ。これ以上の設備を持ったチームはない。だが、私だったら、さっさと決断を下して、オフシーズンをもっと快適に過ごすように務めていただろう」