ライバルとは異なる独特なアリクイノーズ
2年ぶりにF1に復帰した小林可夢偉が加入することになったケータハムのニューマシンは、日本人のF1ファンだけでなく、海外のF1関係者からも注目を集めた。それはケータハムの新車CT05のノーズが、ライバル勢のそれよりも一層独創的だったからである。
チーム創設5年目のケータハムのような若いチームにとって、経験と心的パワーに勝るトップチームと肩を並べて戦うことは容易なことではない。そのため、時間がかかるエアロダイナミクスの開発は、どうしても後手に回るケースが多く、トップチームが驚くようなユニークな開発がなかなか行えない。
ところが、今回のように車体の寸法に関するレギュレーションが大きく変更されると、トップチームが経験というアドバンテージが生かしにくくなるため、下位チームは空力的なチャレンジを思い切ってできる。今年のCT05はそんな出来映えとなっている。
まず目を惹くのが、ライバル勢とは異なるアプローチでデザインされた2段ノーズである。基本的にはフォース・インディアやトロロッソと同じ“アリクイ”型ノーズをしているのだが、ライバル勢が前輪車軸より750mm以上前方に伸ばされた衝撃吸収構造体からステーを出して、フロントウイングを吊り下げているのに対して、ケータハムはアリクイノーズの先に短いステーを出して、フロントウイングを直接吊り下げている。
またフロントサスペンションがプッシュロッド方式からプルロッド方式に変更もされている。プルロッドは昨年チャレンジしたマクラーレンが採用したものの、なかなか実績を残すことができず、結局1年で開発を断念したほど、使いこなすのが難しい代物である。
期待されたヘレスのテストではシステム系に問題が生じて、ポテンシャルを推し量ることはできなかったが、レギュレーションが変更となった新しいシーズンに大胆なトライを行ったチャレンジ精神は大いに評価できる。
「ルノーエンジンのトラブルで最後まで走れませんでしたが、とりあえず54周走れたんで、そこそこのデータは取れました。いまは、できるだけクルマのデータを取ることが大切。まだまだエンジンのパワーは出せるようなので、まだまだこれからという感じ。次のバーレーン・テストまで2週間あるので、それまでにいろいろと宿題をこなさなければなりませんね」(可夢偉)
すでにトヨタがドイツに持っている風洞施設を使用しているケータハム。これまでの50%モデルから60%モデルで開発が進めてられており、開発レベルにおいて、ようやくライバル勢と肩を並べられるようになった。またケータハムにはかつて可夢偉がトヨタF1で一緒に仕事をしたスタッフが多く在籍しているという点も可夢偉にとっては力強い。
新生ケータハムと2年ぶりに復帰した可夢偉の2014年はスタートしたばかり。今後の進化を楽しみしたい。