2014年シーズンでもっともコンストラクターズ選手権の順位を上げたチームがウイリアムズだった。前年の9位から6つも順位を上げての3位は、2003年の2位以来、11年ぶりのトップ3だった。

 このウイリアムズの躍進の原動力となったのが、昨年ダブルタイトルを獲得したメルセデスのパワーユニットであることは間違いない。しかし、フェラーリやルノー勢だけでなく、同じパワーユニットを搭載していたマクラーレンとフォース・インディアをも上回ることができたのは、車体側での開発も成功していたことを意味する。そして、2015年のマシンFW37はそのアドバンテージを残しつつ、細部を最適化する手法で、より洗練されたデザインをまとっている。

 2014年にウイリアムズがライバルに対して有していたアドバンテージとは、空気抵抗の少ないエアロダイナミクスである。昨年、19戦中、平均時速がもっとも高かったイタリアGP(モンツァ)の予選で2台そろって最高速が時速350kmを超えていたのはウイリアムズだけだった。そして、その空気抵抗の少ないエアロダイナミクスは、FW37にも受け継がれている。

 昨年のFW36もサイドポンツーンの開口部は非常にコンパクトだったが、FW37ではそれがさらに絞られ、開口部周囲は丸みを帯び緩やかに傾斜がかかっている。これは、前方から流れてきた空気がサイドポンツーンの開口部のエッジに衝突した際に剥離を起こしにくく、後方へ流れる空気に乱流を引き起こさないための工夫だと考えていいだろう。

 サイドポンツーンの開口部の面積が抑えられたということは、サイドポンツーン内のパーツがよりコンパクトになったことも意味している。そのことをうかがわせるのは、サイドポンツーンが昨年よりも一層、後方へ向けて傾斜していることだ。FW36もサイドポンツーン入口から一気に後方へ向けて下がっていく傾斜角のマシンだったが、サイドポンツーンの中腹あたりからはその角度が緩やかになり、後端ではほぼ水平状態となっていた。それがFW37ではサイドポンツーン中腹までの傾斜角はよりは緩やかになっているものの、後端まで一貫して傾斜している。これにより、サイドポンツーンの上面を流れる空気が、大きくえぐられたサイドポンツーン下側を流れる空気と後端で合流し、より高速で後方へ流れることになる。つまり、空気抵抗を増やすことなくダウンフォースを稼ぐという効率の良いエアロダイナミクスとなっている。

 ダウンフォースが増していることは、ヘレステストで前半2日間のステアリングを握ったボッタスも感じている。「空力が改善されている。去年よりもコーナーで安定しているから、自信を持って攻めることができる」

 FW37はサイドポンツーン以外にも、細かな部分が改良されている。まず、サイドポンツーンの上面と下側を流れる空気の流れを整流するバーチカルフィンだ。昨年はサイドポンツーンの入口を上方から見た場合、ややスクエアな形状をしていたため、そのすぐ脇に取り付けるバーチカルフィン上部とサイドポンツーンとの間が接近し、干渉しないようにバーチカルフィンの上方に切り欠けを設けていた。しかし、今年はサイドポンツーンの入口が丸みを帯びているため、バーチカルフィンはほぼスクエアな形状となっている。

 もう1点、FW37の改良で見逃してならないのはコクピット下にあるキールの処理だ。昨年のマシンFW36の特徴のひとつに長すぎるキールがあった。通常、キールはマシンを横から見た場合、コクピットの開口部の前端付近の下に存在している。ところがFW36はコクピットの開口部の前端よりも前方まで伸び、フロアの前端付近まで迫り出したデザインとなっていた。ところが、これが今年のFW37ではほかのマシン同様に、コクピットの開口部の前端あたりまで下げられている。これはキールの前方にあるノーズに関するレギュレーションが変更されたことが影響を与えているものと考えられる。
 なお、レギュレーションの変更によって、「アリクイ」型ノーズの変更を余儀なくされたウイリアムズが採った処理は、レギュレーションに適合する突起物を残したままノーズを前方に低く伸ばした、いわゆる「親指」型ノーズとなっている。

 全体的に細かく改良されており、昨年同様のパフォーマンスは期待できる出来となっているFW37。しかし、ライバル勢のアクレッシブさに比べると、コンサバな印象がぬぐえないのも事実。したがって、今シーズンもトップ3を維持するためには、シーズン中の開発が必要不可欠となることだろう。

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