1993年以来の未勝利に終わった2014年のフェラーリ。コンストラクターズ選手権でトップ3から滑り落ちたのも、それ以来の屈辱だった。
チームの改革はシーズン中から断行され、昨年1年間で代表は2度交代。ドライバーもフェルナンド・アロンソを事実上放出し、レッドブルからセバスチャン・ベッテルを迎え入れた。シーズン終了後には、技術部門のトップにいたパット・フライやチーフデザイナーのニコラス・トンバジスも事実上、更迭。大なたが振るわれた中で、新生フェラーリがどんな新車を開発してくるかが注目されていた。
フェラーリは新車SF15-Tに、大胆な改革を施してきた。もっとも大きな変更は、コクピット位置である。スタジオ撮影での写真を比較すると、今年のマシンは昨年のマシンより、コクピットの後端にあるヘッドレストの位置が50\bmm以上も前方に出ている。
フェラーリは発表していないが、ホイールベースに変更はなさそうなのでドライバーのポジションだけが若干前に迫り出した形となっている。その理由として考えられるのが、コクピットを前に出すことでリヤのスペースを広げて、空気の流れをスムーズにし、ダウンフォースを稼ぐという方法だ。
コクピットが前方に移動した理由として、もうひとつ考えられるのが、パワーユニットの改善に伴うデザインの変更である。「昨年のパワーユニットがライバルに対して性能が十分出ていなかった」と、パワーユニット部門責任者のマティア・ビノットが認めているように、2014年マシン「F14 T」が勝てなかった最大の理由は、パワーユニットが非力かつドライバビリティに欠けていたことだ。それはパワーユニットの性能を犠牲にしてまで空力を優先したためだと、フェラーリのある関係者も語っている。
そこでフェラーリはメルセデスに対抗するために、パワーユニットの性能を上げてきた。性能が上がれば、熱量が増え、冷却系を見直さなければならず、結果的にコクピットを前方に出したのではないか。
それ以外で特徴的なのは、ノーズの変更だ。昨年はノーズの先端がフロントウイングの前端より手前だったが、今年はフロントウイングをはるかに超えるロングノーズとなった。これは昨年のカモノハシ・ノーズよりも長くなっただけでなく、2年前のF138よりも前方に伸びた超ロングノーズである。この処理は1日前に新車を発表したマクラーレンと同じで、ライバルたちとは異なる処理。マクラーレン同様、正常進化ではライバルたちに勝てないというフェラーリの現状を反映したものではないだろうか。
逆に変更を加えなかったのは、フロントサスペンションにプルロッド式を継続させたこと。ただし、その角度は昨年よりも傾斜がつき、プルロッドらしく変更されている。
ただし、フェラーリが復活するために重要なことは、こうした目に見える部分の変更ではない。最大の問題はパワーユニットの改良にある。すでにフェラーリはいくつかの変更を行っているが、パワーユニットの開発のために使用できるトークン(開発点数)を残している。つまり、パワーユニットの開発は以前、十分ではなく、シーズン中にどのような開発を行うかが勝利をつかむために重要になってくるというわけだ。そして、その開発具合によってSF15-Tの空力も進化するものと考えられる。
今回の改革が成功するかどうかはわからない。しかし、昨年未勝利に終わったフェラーリがコンサバなマシンを作ってもそこに活路は見いだせない。失敗を恐れずにアクレッシブなマシンを登場させたことは、少なくとも評価したい。