9日、富士スピードウェイでシェイクダウンされたチーム・インパルが作り上げたフォーミュラ・ニッポンの2シーターマシン。幸運にもその初走行でリヤシートに座る機会をいただいたが、その体験はFニッポンの凄まじさを体験できる驚異の体験となった。

「富士で2シーターを走らせるので、乗ってみませんか?」というお話しをチーム・インパルからいただき、富士スピードウェイを訪れたオートスポーツweb/週刊オートスポーツ取材陣。到着してみると、2台のFN09に挟まれるように2シーターFN06が鎮座していた。

「コレ、今日平手が乗るんですか? 僕が後ろに乗ってみたいな(笑)」とマシンを興味深く眺めるのは、同じ時間にFN09を走らせる石浦宏明。13時からスタートするセッションを前に、少しずつ平手や関係者が集まるにつれ、AS-web編集部員も心臓バクバク。しょっちゅうサーキットで走っている姿は見ているとはいえ、レース経験と言えばお遊びのスポーツカートくらいなので、未知の300km/h体験はどんなものかまったく想像がつかず。

 チームの方からいくつかサイズがあるレーシングスーツを貸していただき、その中で身長が近いブノワ・トレルイエのスーツをお借りし、着替え。その最中、平手からは「首だけはよくストレッチしておいた方がいいですよ。100Rとかキツいと思うんで」とアドバイスをもらう。マジっすか(怖)。

 着替えてみると、マシンは暖機がスタート。いざ乗るとなると、素人にとっては聞き慣れたRV8Jの音すらおっかない。石浦に「おや、ブノワさんお腹が出たんじゃないですか?(笑)」とからかわれつつも(ほっとけ!)、ドキドキは高まる一方。ところでこのクルマ、すでに1回くらいは走ってますよねぇ?

「いえ、今日が初走行です」

……シェイクダウンですか(泣)。今回、実は乗りながら手持ちでビデオカメラを回そうと思っていたのだが、シェイクダウンだったために止めて欲しい……と言われ、この計画を断念。その間にも着々と準備が進み、いよいよカウルがつけられる。ふだん何気なく聞いていた「コースオープン、○分前です」のアナウンスがあんなにビビるものとは思わなかった(苦笑)。

 コースオープンし、まずは平手がひとりでコースイン。ストレートを1回通過する。戻ってくると、リヤ周辺から何やら白煙が出ている。いったんカウルが開けられ、「どこのオイルだ?」とメカさんたちが取り付く。それを見ていると、「どうぞ」の声が。いや、あの、何か煙出てますけど……と思いつつ、とりあえずサイドポッドをまたぎリヤシート(?)へ座った。

 シートの中では、やや足を広げた体育座りのようなカンジで座る。5点式のシートベルトをギュウギュウに締められた。バックミラーを調節しながら、平手は「コレ、後ろの人も見えるようにしたいな♪」と楽しそう。ワタクシ笑って返したつもりですが、後で写真を確認したら眼が笑ってません(苦笑)。

 そうこうしているうちに、準備が整った様子。平手がカッコよく指を回すと、再びエンジンが始動する。……スルスルとピットアウト……を予想していたら、ちょっとちょっと! ピットレーンからすでに速いんですけど!

「え?」と思った瞬間に、すでにピットB棟も過ぎており、猛然とマシンが加速する。「おぉぉおお〜!?」と声を上げた次の瞬間。

! ……うっぷ。

 頭が前に吹っ飛ばされ、シートベルトに自分の体が食い込む。「?」と思ったら、すでに1コーナーを旋回していた。強烈な減速Gが襲ったと思った瞬間、今度は左に体が引っ張られる。

「うげぇ〜」と思ったのもつかの間、今度は一気に加速し、コカコーラ・コーナーが近づいてきた。またも前に体が引っ張られたと同時に旋回している。ここまでが本当に、すべてが一瞬一瞬のように感じられてしまう。

 平手が警告していた100R。今度は首が外側に持っていかれる。慌てて力を入れ、首を内側に倒す。ヘアピンもまた強烈な減速G! ここまで来てようやく周囲に目が慣れて来たが、ここでふと思い出した。

「コレ、アウトラップだよね……?」

 第3セクター。テレビで見ていたらあんなにゆっくりに見えてしまう区間だが、次から次へとコーナーが迫ってくる感じだ。「おぉっ! プリウスコーナーはこんな奥でブレーキングなのか!」と驚いているうちに、最終パナソニックコーナーを抜け、ストレートに出た。

 とここで、自分の前にメーターが付いていたのを思い出した。すでに200km/h以上出ており、グングン上がっていく。……それを見ていたのだが、300km/hを超えたあたりでメーターが見られなくなった。風圧でヘルメットが上がってしまい顔が持ち上げられる! 正直、何か意識が飛びそうになるほどの風圧だ。さらに言えば、風圧で体が寒いっ! それに耐えているうち、今度は目の前が真っ暗になる。

!! ……うげっ!

 1コーナーのブレーキングでまた頭が思い切り前に飛ばされたのだ。気づくとすでに旋回も終わって、コカコーラ・コーナーに向けて加速している。後で聞いたところでは、約2秒間で300km/hオーバーから一気に200km/h以上減速していたという。インラップより明らかに速いペースでコカコーラを抜けると、今度は100Rでヘルメットが風圧とGで左側に持って行かれる。1周目は耐えられたのに、今度は耐えられない。体の血液まで左に寄っている感覚がした。

 なんとか第3セクターまで耐えていったが、減速のたびにガクンガクンとヘルメットが前後する。走り出しから平手が座っている部分の隔壁を掴んでいたのだが、手と腕がなんだか痺れてきた。最終コーナーを立ち上がり、マシンはピットレーンに向かう。もともとの予定でストレート1回通過の周回だったのだ。ピットレーン入り口をあり得ない速度で進入し、減速。ピット前で停止した。

 ベルトを外してもらい、マシンから降りたが、ここで運転もしていないのに息が思い切り上がっていること、さらに真剣に上腕が痺れていることに気づく。時間にして3分ほどだが、とんでもない体験だった。走行がすべて終わった後、平手と話してみると、「マシンはセッティングも何もしていないので、100%に近い状態だったと思いますけど、自分の中では50%くらいですかねぇ?」とサラリ。……な、なんですとぉ!?

「コーナーじゃ攻められないから、減速の時は思いっきり踏んでましたけどね。ミラーで見てたらヘルメットがガクガクしてて面白かったです(笑)」と平手。こんにゃろ〜(泣)。

 旋回時の横G(100R以外)は、一度でもスポーツカートやレーシングカートに乗ったことがある人ならば、あれの超スゴい版だったと言えば分かるだろうか。何よりあの強烈な減速Gと加速、そして風圧と、はっきり言って筆舌に尽くしがたい体験だった。それに加えて、あの重たいステアリングを回さなければいけないとは、はっきり言って人間技とは思えないほどだ。それを理解させてくれたチーム・インパル、平手に感謝しかない。

 ……ちなみに、平手からは「明日首にも来ると思いますよ」と言われたが、予言通り翌日は腕から首にかけて筋肉痛が来た。たった2周しかしてない上に、運転していないのに……! おそらくGに耐えながら、必死にマシンを掴んでいたからだと思うが、フォーミュラ・ニッポンマシン、恐るべし。JRPさん、ハッキリ言って、パワステ必要だと思います……(苦笑)。

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