IZODインディカー・シリーズ第7戦テキサスは9日決勝レースが行われ、ジャスティン・ウイルソン(デイル・コイン)がオーバル戦で初優勝を飾った。2位は終盤までウイルソンと争ったグラハム・レイホール(チップ・ガナッシ)。佐藤琢磨はスピンしリタイアを喫している。
ダン・ウェルドンが事故死して以来、初めてとなる1.5マイルオーバルでのレースとなる今回のテキサスは、インディカーの将来を決するかもしれない重要なものとなっていた。近年のインディカーが売りにしてきた、手に汗握る“パック・レーシング”は危険過ぎるとの結論に達し、オーバルといえども、コーナーではアクセルコントロールが必要なものへとガラリと性格を変えることとなった。
ドライバーたちからのインプットも利用し、インディカーはルールを定め今回のテキサス戦の決勝レースを迎えることとなったが、高速ハイバンクでの228周は、これまでとはまた違ったエキサイティングなレースとなった。
レース序盤は、予選2番手からスタートしたダリオ・フランキッティ(チップ・ガナッシ)がハンドリング不調で後退し、先週デトロイトで今季初優勝を挙げたばかりのスコット・ディクソン(チップ・ガナッシ)が悠々とトップを走り続けた。ディクソンの勝利はほぼ間違いないと思われたほど、2番手以下との間に明確な差をつけて周回を重ねていった。しかし174周目、ディクソンがウォールにヒット! バックマーカーの乱気流を浴びたのが原因で、レスダウンフォースでの戦いはタイヤの消耗が激しく、ディクソンほどの腕とキャリアをもってしてもコントロールしきれなかったのだ。
気温摂氏31度という暑さの中でスタートしたレースは、ゴールが近づいても摂氏29度の暑さが保たれ、気温低下によるグリップ向上は起こらなかった。ゴールまで40周というところではウィル・パワーを先頭にペンスキーがトップ3を占めることとなったが、パワーはリスタートでトニー・カナーン(KVレーシング)をブロッキング。ペナルティを取られて勝負の権利を失うことになる。さらに、ライアン・ブリスコとエリオ・カストロネベスもタイヤのグリップを失って急速にペースダウン。レースは終盤を迎えてマシンコントロール合戦の様相を呈し、最後はレイホールとウイルソンの戦いとなった。
レイホールのペースは速く、2番手に浮上してきたウイルソンに1.5秒差をつけていた。ところがフィニッシュまで2周を迎えようというターン4で、レイホールのマシンがウォールにヒットしてしまう。レイホールは走り続けることこそできたが、ウイルソンにトップの座を明け渡し、2位でゴールするしかなかった。
これでウイルソンは2009年以来となる勝利を獲得。もちろん、今季初勝利でキャリア7勝目となった。そして、これはウイルソンにとっても、デイル・コイン・レーシングにとっても初のオーバル勝利となった。
「エンジニアのビル・パパスに感謝するよ。本当にマシンがファンタスティックだった。周回を重ねるほどにフィーリングが上がっていったんだ。マシンを滑らせるドライバーたちが多い中、僕は自分のラインを守り続ければいいと考えていたんだ。グラハムはスライド量がどんどん大きくなっていた。まさか勝てるとは思っていなかったけど、彼はウォールにヒットしてしまったね」
「時速220マイルで4輪ドリフトを続けていたけど、ターン3の入り口からターン4を脱出するまで4輪がドリフトしっ放し。ファイアストン・タイヤがどんなに高性能でも、グリップがなくなって当然だよ。そういう戦いだったからこそエキサイティングだったし、楽しかった。今までで一番楽しめたオーバルだったね。インディカーのルール作りは正しかったと評価したい」
今回のウイルソンの勝利で、ホンダはインディ500から3連勝。しかも今回のワンツーにより、シボレーとのポイント差は4点にまで縮まった。
琢磨は20番グリッドからのスタートで6番手まで順位を上げ、琢磨らしいアグレッシブな戦いぶりをみせていたが、64周目のターン2出口でスピン、リタイアを喫した。ポジションアップは琢磨の走りで実現していたが、さらに上位を目指せるマシンの仕上がり具合ではなかったという。
「エキサイティングなレースになっていましたね。挑戦のしがいのあるレースでもありました。僕たちは良いスタートを切り、ポジションをいくつか上げました。その後も1台ずつパスしていきました」とレース後の琢磨。
「すべてのコーナーでアクセルのオン・オフが必要で、ドライビングはとても難しくなっていまいたけど、それがレースをおもしろくしていたと思います。僕らはピットストップが良く、リスタートでもポジションアップしました。しかし、マシンの動きが神経質になってきていて、ターン2の出口で突如としてリヤが流れてしましました。次のミルウォーキー、そしてアイオワは去年までいいレースを戦えたコースですから、いいレースを戦い、結果を残せることになるように頑張ります」と琢磨は語った。