フロリダ州のセント・ピーターズバーグ市街地コースで開催されているベライゾン・インディカー・シリーズの開幕戦。初日トップタイムをマークした佐藤琢磨(AJフォイト)が予選でも速さを見せ、通算4度目となるポールポジションを獲得した。

 電話会社のベライゾンを冠スポンサーに迎えたインディカー・シリーズが開幕戦を迎えた。

 今年もシーズン最初のレースはフロリダ州のセント・ピーターズバーグで開催。コースはダウンタウンの道路とタンパ湾沿いの空港の滑走路を使った全長1.80マイルだ。

 プラクティスが2回行われた金曜日にはなんとか持った天気だったが、土曜日の予選を前に強い雨と風がメキシコ湾から来襲。予定より3時間30分以上も遅れて午後5時40分に予選は始まった。

 路面はまだ完全に乾いておらず、三段階の予選の最初、2グループに分かれてのQ1には全22台がレインタイヤでアタックした。

 10分間という短いセッションだというのに、第1グループは開始早々にグラハム・レイホール(レイホール・レターマン・ラニガン)がタイヤバリアに突っ込んで赤旗に。残り4分間で走行が再開されると、今度は昨年度ウイナーのジェイムズ・ヒンチクリフ(アンドレッティ・オートスポート)がスピンしてエンジンストールを喫し、またしても赤旗。アタックの行えた時間が極めて短かったことで、タイミング良く速いラップを記録できずにQ2進出に失敗するトップコンテンダーも現れた。

 プラクティス3までで4番手につけていたセバスチャン・ブルデー(KVSH)は予選13番手。ヒンチクリフは赤旗の原因を作ったためにベスト2ラップが剥奪され、19番グリッドを与えられることとなった。

 Q1のグループ1からQ2に進んだのは、トニー・カナーン(チップ・ガナッシ)、ライアン・ハンター-レイ(アンドレッティ・オートスポート)、マイク・コンウェイ(エド・カーペンター・レーシング)、マルコ・アンドレッティ(アンドレッティ・オートスポート)、そしてエリオ・カストロネベス(チーム・ペンスキー)だった。
 
 Q1の第2グループは赤旗もなくスムーズに進んだ。路面が刻々と変化していることもあり、1ラップ毎にトップ6が入れ替わるスリリングな展開となった。セッション終了まで路面は濡れたまま、あるいはハーフウエットという状態で、全員がレインタイヤでセッションを戦い抜いた。昨年度チャンピオンのスコット・ディクソン(チップ・ガナッシ)、昨年度ランキング6位のジャスティン・ウィルソン(デイル・コイン)、佐藤琢磨の順でトップタイムをマーク。

 金曜にトップタイムをマークし、予選日のプラクティス3でも3番手につけていた琢磨はトップでQ2進出を決めた。2番手はディクソン、3番手はルーキーのカルロス・ムニョス(アンドレッティ・オートスポート)で、4番手もルーキーのジャック・ホークスワース(ブライアン・ハータ・オートスポート)。セント・ピーターズバーグでの5年連続ポールポジションを狙うウィル・パワー(チーム・ペンスキー)は5番手で、6番手はセバスチャン・サーベドラ(KV/AFSレーシング)だった。

 第2グループでは、昨年度ランキング3位のサイモン・ペジナウ(シュミット・ピーターソン・モータースポーツ)が、プラクティス3までで6番目に速いタイムを出していながらQ2進出に失敗し、予選14番手となった。ウィルソンもQ1での敗退で予選順位は16番手。

 ファン・パブロ・モントーヤ(チーム・ペンスキー)は、オープンホイール復帰初戦で苦戦を強いられている。プラクティス3を終えてもマシンのセッティングを仕上げ切れず、不安定なコンディションも味方につけることができず。Q1で敗退の予選18番手となった。

 Q2開始前に少しだが太陽が顔を見せた。そして、このセッションでは使用タイヤが3パターンに割れた。ウエットタイヤで走り出す者、ハードコンパウンドのスリック、プライマリータイヤ(=通称ブラックタイヤ)を選ぶ者、そして、ソフトコンパウンドのスリック、所謂レッドタイヤで最初からアタックする者がいたのだ。

 空はまた曇りに戻ったが、路面の乾燥は急激に進み、最終的に全員がレッドタイヤでアタックを行うセッションとなった。まだ場所によってはウエットコンディションだったが、レッド装着で最初からアタックした琢磨が1分3秒3244を残り2分を切ってからマークし、さらにタイムを1分3秒0131まで縮めてトップをキープ。2番手タイムを出したのはハンター-レイで、3番手はパワー、4番手はアンドレッティ、5番手はカナーンだった。

 最後のポジション、6番手は最後のアタック・ラップで王者ディクソンがふたりのルーキーたちを上回ってものにした。ここでカストロネベス、プラクティス3までで最速だったライアン・ブリスコ(チップ・ガナッシ・レーシング)が敗退した。

 Q1とQ2をクリアした6人=ファイアストン・ファスト・シックスによる予選ファイナルステージは、路面がドライに近いコンディションで争われた。全員がレッドタイヤで走行。さらに変化を続ける路面を読み、果敢にアタックすることがポール獲得には必要となった。琢磨はユーズドのレッドでコースに飛び出し、セッティング変更の効果を確認。ピットに戻ってフレッシュタイヤに履き替え、全力でアタックした。琢磨は5周目に1分2秒1609を出してカナーンからトップを奪った。彼はその次の6周目はペースを落としてタイヤの温度を一度下げ、7周目にもう一度アタックした。時間的に見てこれが最後のアタック。琢磨は1分1秒8686に自己ベストを更新し、2番手となったカナーンに0.2951秒の差を突きつけての堂々たるポールポジション獲得をやってのけた。

 3番手はハンター-レイで、4番手はパワー、5番手はディクソンだった。アンドレッティはピットで待機して路面の良くなったセッション最後に一発勝負する作戦を採用したが、狙いは外れて6番手という結果になった。

 各予選セッションの間にはセッティング変更が必要な場合もあり、その変更、タイヤの選択、短いセッションでの戦い方など、多くの要素が複雑に絡み合う、難しく、そしてとても見応えある戦いだった。ドライバーたちは路面の変化に対応し、経験を頼りにした読みもフルに活用して戦っていた。繊細かつ大胆なドライビングが求められる戦いだ。チームのエンジニアリング、メカニックたちの技量までもが試される、インディカーならではのスリリングでエキサイティングな予選は、雨の中でも長時間待ち続けた熱心なインディカーファンたちを大いに湧かせた。

 今季初、キャリア4回目のポール獲得を果たした琢磨は、「ファンタスティックな一日になりました。これ以上は望めないシーズンスタートを切れたと思います。今日の自分たちのパフォーマンスには本当に満足しています。オフシーズンの集中的なテストを行った努力が実りました」

「セント・ピーターズバーグでの僕たちのマシンは、昨年も競争力が高かったと思います。しかし、昨年から今年にかけてはタイヤやエンジンなど、いろいろなものが変わっています。そうした状況下、今日の予選は短い間に天候が劇的に変わるコンディションで争われました。水溜まりこそありませんでしたが、路面は滑り易く、走行ラインを選んでアタックを続けていました。予選と予選の間にはマシンのセッティング変更を行う必要がありました」

「僕たちはそれらの変更に対する判断や、タイヤの選択においてベストの答えを見出し、クルーたちはミスなく完璧な仕事をしてくれました。明日のレースでは不運に遭遇せず、やるべき仕事をチーム全員が確実にこなし、望む結果を手にできるよう戦いたいと考えています」と語った。

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