全日本選手権フォーミュラ・ニッポンで開発が進められている電気アシストシステムの『システム-E』が、当初予定されていた2012年からの導入が先送りされることとなった。
鈴鹿、SUGOに続き3回目のテストとなったシステム-Eのテスト。フォーミュラ・ニッポン合同テストに合わせて行われることとなった今回の富士でのテストでは、トヨタ開発車を松田次生が、ホンダ開発車を道上龍と山本尚貴がドライブ。過去2回のテストでは、トヨタ車、ホンダ車ともフォーミュラカーの激しい振動に対するシステムユニットの作動チェックなどトラブル対策に追われることとなったが、今回は2車とも実際にシステムを活用し走行した。
ホンダ開発車にとって今回の富士テストで判明したのはバッテリーの性能という課題。システム-Eの目的として、自動車用のリチウムイオンバッテリーの開発競争という部分があるが、ホンダの坂井典次Fニッポンプロジェクトリーダーによれば、そのバッテリーの性能によりアシスト量や時間などの確認に課題が出たという。
今回のテストでは、1ラップの中でアシスト量と回生量が釣り合うバランスをトライ。また、バッテリーが電気の流出入によって発熱するため、いかに冷却し性能を発揮させるかという部分をチェックしたという。
ドライブした道上によれば、今回はストレートで5速に入った時点でシステムを作動させるように組み込み、出力を少しずつ上げていくテストを実施。効果を体感できたとのこと。また、2〜4速で全開になった時点で、エンジン回転のマップによりシステムを作動させるように組み込んだところ、低速からの立ち上がりではアシストによりホイールスピンが発生してしまいアクセルを戻さざるを得なかったため、「自分が使いたい時に使えるようにした方が個人的にはいいと思いました」とのこと。
一方のトヨタ車は、従来のオーバーテイクシステム同様に使用できるように、10秒間をレース中に10回ほど作動できるような想定のもとテストを実施。これまでのテストでは漏電センサーが作動してしまったり、モーターの不具合などが発生してしまったりというトラブルが発生。モーターのトラブルはレブリミッターに当たった時に発生していたということで、今回ドライブした松田は、リミッターに当てないドライブを依頼されたという。
SUGOではオーバーテイクシステムを多用していたこともあり、トヨタ車は今回エンジントラブルが発生。初日はその作業に時間を取られてしまったものの、2日目は順調にテストを消化。結果的に、ホンダ車と同様バッテリーの能力と信頼性に課題を見出したという。
モーターに対し、トヨタ車では60アンペアほどの電流をかけテストを実施。結果的に25馬力ほどのアシストが得られたという。「ようやくきちんと評価ができた。25馬力程度ですが、きちんとデータも得ることができた」とトヨタの松浦幸三システム-E開発リーダー。25馬力という出力は、現状ホンダ車も同様のようだ。
ドライブした松田は、「いろいろ試しましたが、60アンペアほどがやはり良かったです。今回、ストレートとヘアピンでオーバーテイクボタンを押して走ったんですが、データ上でも車速の伸びが明確に出た。体感も同じように感じましたね。下のギアで押すとやはりホイールスピンしてしまいますが、4〜5速で押すと体感できる。ただ、6速だと空気抵抗で伸びが感じられなくなる」とシステム-Eの感想を語る。
「50馬力の出力が出ればオーバーテイクできると思う」と松田。導入されれば、今以上にオーバーテイクをレース中に見ることができるはずだが、まだバッテリーの電気の流出入に対するポテンシャルの不足により出力を上げることができていないこと、現行のFN09に装着したとき、空力をスポイルしてダウンフォースが不足するなど、まだ実際の運用に課題が多い。そのため、フォーミュラ・ニッポンを運営する日本レースプロモーションでは、当初予定していた2012年開幕での導入を先送りするとした。
理由としては、東日本大震災にともなう開発の遅れ、また開幕戦までに十分に開発が間に合わないことなどを白井裕JRP社長は挙げた。ただ、将来の運用に向けて来季も開発はしっかりと続け、将来のモノコックの改良、もしくは新規導入なども含めて検討していくという。
なお白井社長はこの場で、2012年もフォーミュラ・ニッポンでは現行のFN09を継続して使用していくことを正式に明らかにした。白井社長によれば、将来のシャシー選定やアジア展開、また複数のタイヤメーカーによるコンペティションの復帰なども含め、少しずつ明らかにしていくとしている。
