1月28日から31日にかけて行われたヘレステストでは、パワーユニットの冷却に悩んだチームがあった。4日間でわずか21周しか走行できなかったレッドブルはその筆頭だったろう。順調に周回をこなしたチームにとっても頭の痛い問題であることに変わりはない。

 新しいパワーユニットが根本的に冷却性に大きな課題を抱えているのかというと、そんなことはない。確かに面倒ではあるが、実戦までに時間がないことの方が問題だ。RB10発表時、レッドブルのチーフテクニカルオフィサーであるエイドリアン・ニューエイは次のような内容のコメントを残している。「量産車は入念にテストしてから商品を市場に投入できるが、F1は3回のテスト、12日間走っただけで開幕戦を迎えなければならない」と。

 どのような状況で走っても問題のないように仕上げてから市場に送り出すのが量産車。一方、F1の場合も信頼性は重要だが、マージンをぎりぎりまでそぎ落として設計をするのが常だ。そのマージンの取り具合、攻め具合によって、実際に走り出した際に思わぬトラブルが発生してしまう。

 2013年までの動力源は2.4リッターV8自然吸気エンジンとKERS(運動エネルギー回生システム)の組み合わせだった。KERSはバッテリーとモーター/ジェネレーターユニット(MGU)、KCU(KERS制御ユニット)で構成されていた。エンジンにはエンジンオイルクーラーとウォーターラジエターが付随する。KERSを構成する各コンポーネントも冷却が必要だが、個別に冷却回路を設計するのか、MGUの冷却はエンジンオイルと回路を共有するのかなど、冷却に関する設計はユニットサプライヤーによって異なっていたようだ。

 2014年は1.6リッターV6直噴ターボに2種類のエネルギー回生システム(ERS)を組み合わせた複合システムになる。エンジンに関して言えば、ターボチャージャーが加わるため、圧縮して温度の高まった空気を冷却するインタークーラーを追加する必要があるのが、昨年型エンジンとの最大の相違点だ。ルノーやフェラーリが公開した画像から判断するに、インタークーラーは2013年までラジエターがあった左サイドポンツーンに配置する模様。行き場のなくなったラジエターは右サイドポンツーンに移動する。ここはもともとオイルクーラーが占拠していた空間だったが、スペースを上下に分割してパッケージしているようだ。どうしてそんな芸当が可能なのか?

 2.4リッターV8は750馬力程度を発生していたが、1.6リッターV6ターボは600馬力程度しか発生しない。最高出力が低ければそのぶん発生する熱量も小さく、要求される冷却も小さくて済む。だから、理論的にはラジエターやオイルクーラーはコンパクトにできるはずだ。

 一方で、冷やさなければいけないコンポーネントは増えた。ERSと呼び名を変えたKERSの発展形は最高出力が倍(60kW→120kW)になって、冷却に対する要求は増しているはずである。また、1周あたりに放出できるエネルギー量は10倍(0.4MJ→4MJ)。電気の出し入れが多くなればそのぶん熱の発生量も大きくなり、冷却に対する要求は厳しくなる。さらに熱エネルギーの回生も加わり、専用モーター/ジェネレーターユニット(MGU-H)の冷却も考えなければならない。ターボチャージャーの軸まわりの冷却も重要だ。

 冷やさなければならないコンポーネントが増えるのに加えて、各コンポーネントの適温(あるいは上限)がそれぞれ異なるので、それぞれの事情に合わせて気を遣いながら設計を強いられる。でも、余裕を持った作りをしていたのでは重たくなるし、ボディが肥大化して空力に悪影響を与えてしまう……。

 そんな悩ましい事情を含めて各チームのエンジニアは「冷却が厳しい」とコメントしているのだろう。

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