F1速報web限定で「アフター・ザ・レース」を執筆している今宮純氏による、ここでしか読めない2015年F1総集編シリーズ。第2回はグランプリのオーガナイズについて。大成功に終わったと言えるメキシコGPの復活。鈴鹿、日本GPの現在。消えゆく伝統のグランプリと新規開催の明暗を考える。

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1992年のような熱気と書き換えられた記憶

 メキシコには負けたが、ロシアには勝った日本──観客動員数の話だ。23年ぶりに復活したアウトドローモ・エルマノス・ロドリゲスは初日から9万人近いファンで賑わい、3日間の合計では33万人。情熱的なラテンアメリカの気質と、母国の英雄たる故ロドリゲス兄弟が礎となったF1文化が融合し、華やかなフィナーレは、まさに「ポディウム・オブ・ザ・イヤー」だった。

 新生メキシコGPは、かつての面影を残しつつもユニークな最終コーナー、バンク角は6度を超えるペラルターダが消え、ベースボール・スタジアムに変身、個人的な印象としては別コースのように見えた。1992年は第2戦で3月22日決勝、開幕は3週間前の南アフリカGPで、次は2週間後のブラジルGPだった。日本から大移動の旅で、アフリカ~中米~南米大陸を1カ月あまりの間に飛びまわらねばならなかった。

 23年前の記憶……アイルトン・セナが金曜の予選でクラッシュして負傷、入院したが翌日に戻って意地の6番手。日曜朝パドックで会うと痛々しく足をひきずり、レースはミッション・トラブルによりリタイア。ゲルハルト・ベルガ―のマクラーレン・ホンダが4位、ウイリアムズ・ルノーがワンツー、ベネトン新鋭ミハエル・シューマッハーが3位に立った。

 メキシコGPと同じく23年ぶりに復活した現マクラーレン・ホンダが、あの年より酷い情況下で大苦戦を強いられたのは語るまでもない。マシンを降りたセナがコース脇でヘルメットを背に座り込んで見つめていた姿が、今年のブラジルGPでアロンソが日光浴する姿と追憶のスクリーンに、だぶって映った……。

 おそらく今年メキシコGPの観客にも、そう感じたベテランファンがいらしたのではないか。2007年からF1誘致を計画、2011年から具体的に“復興”へと取り組んだ主催者の努力があって、第16回メキシコGPは成功した。拍手と喝采のフィナーレはネガティブなF1不人気論をはねかえす明るさにあふれていた。

鈴鹿スタイルと大統領の新興グランプリ

 順番が逆になるが、今年の日本GPは9月27日決勝に繰り上げられ、初日は心配どおり雨に見舞われた。それでも3万人が訪れ、土曜と日曜は昨年を超える入場者と発表。合計16万5000人、日本人ドライバー不在でも熱気ある鈴鹿はチーム関係者だけでなく海外メディアを驚かせ、思い思いのコスプレや自作グッズが話題になった。

 他にない「スズカ・スタイル」が大ウケ、お子さん連れが多いことにも興味を持ったようだ。鈴鹿が次世代ファンを育てようとする配慮が評価され、チーム側もドライバーとのふれあいに協力、あちこちで、さまざまなイベントが開催された。これはモナコやイタリア、イギリスでは見られない景色だ。バーニー・エクレストンさんは欠席だったが、こういうオーガナイズこそ、いまのF1に求められるものだ。

 翌々週の第2回ロシアGPは立派なソチ五輪会場にハコものが並ぶ。今年もウラジミール・プーチン大統領が列席、じきじきにエスコートするエクレストンさんは、ご満悦に見えた。1930年生まれの彼は、旧ソ連で“F1サーカス”を興業するのが長年の夢だった──80年代の後期に、直接そう伺った。

 しかし早くも第3回の開催が一部で危ぶまれている。2年目は天候不順もあって4日間で14万9000人、メキシコの半分にも満たず、日本にも及ばなかった。2020年まで開催契約があり、ナイトレースも検討されているものの注視したい。

 ニュルブルクリンクのドイツGPが消滅し、メキシコGPが盛況で終わった、全19戦の2015年。そのうちヨーロッパは、わずか7グランプリ。それだけ新興が増え、どんどんクラシック・コースがなくなっていく。スパ、モンツァ、シルバーストンまでも危うい内情が漏れ伝わる。温故知新ではないが、いまこそレトロGPとモダンGPの調和が図られるべきではないだろうか。来年の21戦は、いくらなんでも多すぎる。希少価値が薄れ、心に残るようなレーシング・ドラマを我々は覚えてはいられない。

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