12月21日〜22日の2日間、台湾の大鵬湾国際サーキットで開催された『TSFアジアオールスターチャレンジ』。日本から多くのドライバー、チームが参加し、まだ“黎明期”とも言える台湾のモータースポーツ界に刺激を与えたが、この大鵬湾国際サーキットで日本のレースは開催できるのだろうか?

 羽田から台北松山空港に飛び、そこから台北駅まで移動。日本製の新幹線に乗り、終着の左営駅へ。そこからクルマで1時間ほど走ると、2011年にオープンした大鵬湾国際サーキットに到着する。道中、日本企業の看板をこれでもかと見て、台北駅内のレストランは日本食だらけ。左営駅からの高速道路の道すがらも日本車が多く見られ、現地の人々はいずれも実にフレンドリー。事前に「親日」とは聞いてはいたが、これほどとは思ってもみなかった。

 そんな台湾だが、モータースポーツ文化という面では、まだまだ未成熟な印象なのが正直なところ。2011年に旧日本海軍の航空基地跡に作られた大鵬湾国際サーキットの開業に合わせ、台湾の富裕層がフェラーリやポルシェのカップカー等でレースや走行会等を楽しんでいるが、レースのオーガナイズという意味ではまだまだだ。

 一方で、大鵬湾国際サーキットでは日本のレースの招致も目指している様子。具体的なターゲットはスーパーGT、そしてスーパー耐久だ。どちらかというとニーズに合致しているのはスーパー耐久で、日本車のマーケットがしっかりとあり、スーパー耐久で多くのメーカーが関係するアフターパーツのマーケットニーズとも合致する。ただスーパーGTは台湾のモータースポーツファンにとっては“憧れ”であり、今回参戦したGT300マシンのGAINER DIXCEL SLSは多くの注目を浴びた。

 実はスーパー耐久については今季も開催を目指していたということだが、条件面で折り合わず。それでも、『TSFアジアオールスターチャレンジ』にはS耐クラス上位から3台の車両が参加。STカップクラスで、ST2クラスのランサーが優勝を飾っている。

 では、この大鵬湾国際サーキットで、スーパーGT、スーパー耐久のレースは開催できるのだろうか? ピット棟、ピットレーンは広さは十分。一方、コースはややバンピーで、前半区間はF1もできそうなほど広くランオフも充実しているのだが、コース中盤から一気にコース幅は狭くなり、すぐにコンクリートウォールが迫る。実際の走行の様子は、今回参戦した吉本大樹がポルシェカレラカップカーでの車載動画をアップしてくれているので、是非見て欲しい。

PIC Asia All Star Challenge 2013 Race1 start/H.Yoshimoto

 今回の『TSFアジアオールスターチャレンジ』に参加した日本人ドライバーに、スーパーGTで走ったらどうなのかを聞くと、「GT500は厳しいのではないか?」という声も多い。特にコース後半区間は低速コーナーが多く、GT500ではその空力の良さが活かせない可能性もある。また、コース後半は「抜けない」部分であり、数秒タイムが遅いマシンが前にいても、なかなか先行することはできないのだとか。

 そのため、スーパーGTの場合はGT500、GT300の速度差が後半セクションで問題になる可能性は多く、スーパー耐久でももしST-GT3からST5までが走った場合、その速度差はスーパーGT以上に危険になる。ただ、どちらも速度差がそこまで大きくなければ、「走れない」ということはないだろう。GT3車両でレースができたことからもそれは伺える。

「スーパーGTを開催できるかどうか?」という質問に対しては、今回フェラーリ458チャレンジをドライブした脇阪寿一が、独特の観点を語ってくれたのでご紹介しよう。

「スーパーGTは、広くても狭くてもいいの。それが走れるか走れないか、抜けるか抜けないかは関係ないよ。そういう問題じゃない」と寿一。

「狭いところで走れば、それはそれでいろいろなことが起きるから、お客様がそれを楽しめる部分もある。広さの面を言ったら、モナコでF1なんてできないでしょう。だから、スーパーGTでも十分できるんじゃないかな?」

「今回はちょっと風邪気味だけど、それがなかったらもっと台湾を楽しんでいるよ(笑)。僕たちが教えることに対してもすごく感謝の気持ちを表してくれるし、皆が楽しんでいる。すごくもてなしてくれて、それがすごくありがたいよね」

 たしかに寿一の言うとおり、国内でもスポーツランドSUGOや岡山国際サーキットのようなタイトなサーキットでは、富士スピードウェイ等とは違った何が起きるか分からない楽しみ方がある。大鵬湾国際サーキットでもしスーパーGTを開催したら、同様のパターンになる可能性はあるだろう。

 あとは、日本メーカーがいかに台湾にビジネスチャンスを見出し、台湾側がどれほど日本のレースを見たいかだろう。ただ、開催コストという面や、中国との関係なども大きな問題として横たわる。しかし台湾で今後モータースポーツ文化が成熟していくポテンシャルは十分に感じることができた。“最も近いモータースポーツ先進国”である日本は、その発展にもっと寄与していっていい。

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