2012年2月にオープンし、レーシングドライバーがブログなどで盛んに紹介している日本初の本格レーシングシミュレーター、“Tokyo Virtual Circuit”。実際にシミュレーターとはどんなものなのか、そしてどこまで実車に近いのかを知るべく、現役トップドライバーを伴って体験してみることにした。

 このTokyo Virtual Circuitは、2月に東京・赤坂にオープンした日本初の本格レーシングシミュレーター。現代のモータースポーツ界では、特にF1を中心に限りなく実車を再現したシミュレーターが導入されており、ドライバーは初体験のコースでもこのシミュレーターを使うことで習熟を終えてレースウイークを迎えることができる。

 とは言え、現在では家庭用ゲーム機でもリアルなグラフィックが楽しめたり、大型のゲームセンターに行けば素人でも楽しめるレースゲームが多数ある。このシミュレーターとは、そういったゲームとはどう違うのか、そしてレーシングドライバーが通い詰める理由とはどんなものなのか……。それを解き明かすべく、実際にTokyo Virtual Circuitに取材をお願いすることにした。

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●編集部員も乗ってみました
 砂子塾長から、走行中に「トップドライバーはこのマシンで1分42秒台を出すよ」と言われた山本は、しばらく走行を続けていたが、なかなか42秒台は出ない。44秒台がベストで、「あれ〜!?」「え〜!?」と言いながら走行を続けていたが、ちょっとコースアウトやミスが出はじめたためいったん中断。「楽し〜い!」と言いながらコクピットから降りてきた。

 なかなか44秒台が切れない山本に対して、「10ラップ程度で44秒台を出すのはすごく上出来だよ」と言うのは砂子塾長。「確かにトップドライバーは42秒台を出すけど、いきなり乗ってちょっと乗っただけで44秒がでるのはさすがFニッポンドライバー。シミュレーターの慣れと、削れるところを削れば42秒台は出るよ」と塾長はFニッポンドライバーの実力に太鼓判を押した。

 しばらく山本には休憩してもらうことにしたが、「じゃあ乗ってみましょうか」と自分にも声がかかってきた。完全にビビっていたので、「もっと遅いクルマないですか?」とお願いしてみたものの、「GP2の大変さを体験してみましょう」ということで、まずはそのまま走ってみることに。ただし、場所はちょっとだけ走ったことがある富士スピードウェイにしてもらった。

 とは言え、ピットアウトしてすぐに回るわ、重いステアリングの操作がまったく追いつかないわで四苦八苦。「600馬力だからね〜」と塾長も後ろで笑う。力任せにステアリングを回すとロクなラインは通らないし、乱暴にアクセルを踏むとすぐに回る。後ろでFニッポン現役ドライバーが見ている状況はムリ! と思い、マシンをGT3カーのアウディR8 LMSに変えてもらうことにした。

 相変わらずクルクル回る状況ながら、GP2とは格段に操作しやすいアウディR8 LMS。ただ、ブレーキングで止まらないことを除けば、慣れればそれなり〜に走れそうな感覚を掴んだところで、だいぶ足が疲れてきたワタクシ。「アウディはABSも付いているから、蹴飛ばす感じでいいよ」と塾長から言われたのでそのとおりにしていたものの、蹴飛ばし続けてたら数周で疲労困憊。体力ないっすわ〜。ちなみに、自分はアウディで富士を1分50秒程度で走れるペースだという。GT300の富士戦の決勝ベストタイムが1分42〜43秒なので、もっと頑張ってみれば良かったかな……と思ったのは後の話。

●いざ、鈴鹿42秒台に再挑戦
 しばらくこのシミュレーターについて歓談した後、山本に鈴鹿サーキット42秒台を目指して再挑戦してもらうことに。ただ、闇雲に走っても仕方ない……ということで、このTokyo Virtual Circuitの売りのひとつでもあるMoTecのデータロガーを使って、先ほどの走りを解析してみることに。砂子塾長の走りと比較して速い部分を見つけたり、S字は4速で行けること、シケインが見えづらいことによる“恐怖心”等々がタイムに現れていたことを分析。ロガーデータを見ながら話している姿は、サーキットそのものだった。

 ふたたび走り出した山本。「今まではフォーミュラ・ニッポンのまま走っていたんですが、ちょっとアジャストしました」と先ほどよりも走りもシャープに見える。まずは43秒台をクリア。さらに、数周を続けるうちに42秒台を見事に達成してみせた。「さすがだね」と塾長も納得の表情だ。

【動画】山本尚貴 Tokyo Virtual Circuit GP2走行(ハードタイヤ)

 最後に、「Fニッポンの冬のテストの最終日くらいで、ラバーが乗り切った状態くらいの感じ」というスーパーソフトを装着して1分40秒台までタイムを縮めた山本は「いや〜本当に楽しい」とご満悦な表情だ。「実際に乗ってみて、正直驚きました。最初のもてぎでは、何も言われないままにやってみたんですが、実車っぽい動きをするし、実車と現実でないところの間にいるような不思議な感覚でしたね。でも、特徴をつかめばつかむほど、実車に近い動きをすると思いました」と初のシミュレーター体験を振り返る。

【動画】山本尚貴 Tokyo Virtual Circuit GP2走行(スーパーソフト使用)

●「ゲームセンターだとは思わない方がいいです(笑)」
「スピード感やGは体験できませんけど、ステアリングやペダルから伝わってくるインフォメーションは本当にリアルだと思いましたね。何も乗らないより、こういうシミュレーターで走った方がトレーニングになると思いますし、セッティングとかの違いも分かると思う。今はテストの時間が限られている中で、こういうシミュレーターで比較ができるのは役に立つと思います。それに、もし今後海外で戦うことがあればぜひここで学ばせてもらえれば(笑)」と山本。

 インストラクターを務める砂子塾長は、「山本君は実際に42秒台を出したけど、やっぱりトップドライバーでないとこれは出ない。素人がいくらやってもダメ。サーキットで本当に速い人でなければ出せない」という。それほどまでに実車を再現してあり、レーシングドライバーの“速さ”がなければきちんと操作ができないのがレーシングシミュレーターという訳だ。

 現在、Tokyo Virtual Circuitはレーシングドライバーが数多く活用。メーカーの若手育成プログラムでも活用されているという。「たくさんお金をかけて、マシンをサーキットに持っていきドライバーの比較テストをやることも必要ない。ここでできると思う」と塾長。

 とは言え、Tokyo Virtual Circuitは素人が足を踏み入れてはいけない場所……という訳でもなさそうだ。クルマ好きが会社帰りなどに立ち寄り、思い思いに走って、その後の“飲み代”をかけて勝負したり……と楽しんでいく人も多いという。

「ゲームセンターだとは思わない方がいいと思います(笑)」と山本は言うが、「F1ドライバーでもこういうシミュレーターを使ってトレーニングをするものなので、そう簡単に操作できるかと言えばそうではありませんが、僕たちレーシングドライバーの大変さを理解してもらえると思いますし、楽しさも分かってもらえると思います」と語る。

 東京のド真ん中に出現した“バーチャルサーキット”。レースを志している人も、そうでない人もさまざまな体験ができる場所であることが理解できた。まずは一度足を運んでみてはどうだろうか。

Tokyo Virtual Circuitの詳しい料金・アクセス等はホームページまで!
http://tokyovirtualcircuit.jp/

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