26日に行われた第97回インディアナポリス500マイルレースの決勝レースは、12番手スタートだったトニー・カナーン(KVレーシング)が序盤からトップを争い、インディ500初勝利を飾った。6列目18番手からスタートした佐藤琢磨(AJフォイト)は、上位を争うも単独スピンを喫しポジションダウン。再び後方から追い上げ、13位でレースを終えている。

 曇り空の下、雨がレース中に降る心配を残したままインディ500のスタートは切られ、ポールポジションからエド・カーペンター(エド・カーペンター・レーシング)がトップを保ってターン1へと飛び込んで行った。

 4周目にJR.ヒルデブランド(パンサー・レーシング)が単独スピンして壁にヒット。35周目にはセバスチャン・サーベドラ(ドラゴン・レーシング)が他車に接触されてクラッシュ。今日のレースは荒れるかと思われた。しかし、そこからは展開が変わって戦いはクリーンに進んでいく。

 ハイペースでのレースは目まぐるしくトップが入れ替わるエキサイティングな内容となる。カーペンター、カナーン、マルコ・アンドレッティ(アンドレッティ・オートスポート)、ルーキーのカルロス・ムニョス(アンドレッティ・オートスポート)、ライアン・ハンター-レイ(アンドレッティ・オートスポート)、EJ.ビソ(アンドレッティ・オートスポート)、チーム・ペンスキーのエリオ・カストロネベス、ウィル・パワー、AJ.アルメンディンガーらが代わる代わるトップを走行する。

 誰もアドバンテージを持っておらず、2番手に差をつけて逃げを打てるドライバーはひとりもいなかった。ピットストップでのミスを冒すチームも少なく、ハイペースのままレースは終盤へと突入していった。

 レースの行方に大きく影響を与えたのは、194周目に起こったグラハム・レイホール(レイホール・レターマン・ラニガン)のアクシデントだった。レイホールはターン2で単独スピンを冒してクラッシュ。この日4回目のフルコースコーションとなった。

 激しいヒットだったため、そのままレースはゴールとなってしまう可能性があったが、オフィシャルの懸命な清掃作業により、レースは196周を終えたところで再びグリーン・フラッグが振られることとなる。順位間の距離は縮まり、さらにトップ争いは混沌となった。

 ゴールまで4周のスプリントバトル! リスタートはハンター-レイがトップで切られたが、メインストレートでの加速でカナーンがトップへ。彼に続いてムニョスもチームメイトをパスし2位に浮上した。

 この数秒後にターン1で1台がクラッシュ! 昨年度のインディ500ウイナー、ダリオ・フランキッティ(チップ・ガナッシ)がクラッシュしたのだった。レースは再びフルコースコーションとなり、グリーンフラッグは振られぬままチェッカーが迎えられた。ペースカーの後ろで、カナーンはコクピットから左手を突き出し「ナンバーワン!」と人差し指を立てゆっくりとゴールへ。

「とにかくマシンが最高だった。勝てる時というのは、こういうものだ。何もかもがスムーズだった」とカナーン。

「僕は11回勝てずにきていた。11番というカーナンバーはインディで一度も勝ったことがないって、わざわざ今朝教えてくれた人もいたよ。それでも、残り6周でイエローが出て、自分がリーダーじゃなく2番手だった時、今日こそ勝てるかもしれないって思った。リスタートで絶対にトップに立つつもりだったんだ。その後にイエローが出てレースが終わりになる、その可能性は高いと考えたからだ。そして、その通りになったね」。何度も悔しい思いをしてきた、ベテランの経験が勝利を引き寄せた。

 イエローフラッグでのゴールとなったが、今日のレースは史上最速のアベレージ・スピードとなる187.433mphでのゴールとなった。これまでの記録は1990年のアリー・ルイエンダイクによる185.981mphだった。

 これ以外にも記録が盛りだくさんだった。14人のレースリーダーが生まれたが、これは93年の12人を超えてインディの新記録となった。その14人によるリードチェンジは合計68回もあり、昨年打ち立てられた記録34回を超え、一気に倍に増えている。

 12回目の挑戦で優勝したカナーンは、インディ500におけるタイ記録。1957年優勝のサム・ハンクスも12回目の出走で優勝に手を届かせている。

 レースを完走したのは26人。トップと同一周回で19人がゴールしたのもタイ記録だ。26人の完走は1911年に行われた最初のレースと並ぶもので、19人のリードラップ・フィニッシュも09年に並んでいる。

 KVレーシングのカナーンが勝ち、プラクティスから好調だったアンドレッティ軍団はルーキーのカルロス・ムニョスを先頭に2、3、4位と惜しくも栄冠を逃した。ホンダ勢のトップはジャスティン・ウィルソン(デイル・コイン)の5位。

 18番手からスタートした佐藤琢磨は13位。スタートから50周以内で6番手までポジションアップした走りは素晴らしかったが、そこから更に順位を上げてトップ争いに絡むことはできなかった。

 序盤から徐々にハンドリングが狂い始め、そこへ予測外のライン採りで走ったルーキー、ムニョスのタービュランスを浴びたために57周目にスピンを喫した。

 スピンはしたが壁には一切ぶつからなかった琢磨は、エンジンストールで周回後れに陥り、順位は27番手にまで落ちた。しかし、周回後れはピットの好判断によってすぐさま挽回され、再び上位を目指す戦いをスタートさせた。

 タイヤの摩耗が激しくピットインを早めにすることもあった琢磨は、驚くべきパフォーマンスで残り30周を切った時点で9番手にまで復活。しかし、最終的にはトップ10フィニッシュを逃した。

「今日はグリップが足りておらず、苦しい1日になっていた。プラクティスまででは経験していなかったタイヤにブリスターが出るトラブルもあった。13位はとても悔しい結果だ」と琢磨は語っている。

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