ポコノ・レースウェイで開催されたIZODインディカー・シリーズ第11戦は、7日に決勝レースが行われ、スコット・ディクソン(チップ・ガナッシ)が勝利。2位にチャーリー・キンボール、3位にダリオ・フランキッティが入り、チップ・ガナッシ勢が表彰台を独占した。佐藤琢磨(AJフォイト)は、序盤に上位を争うもピットインの際に他車と接触。左リヤにダメージを負いリタイアとなった。
ペンシルベニア州の山中にあるユニークなオーバル・コース、全長2.5マイルのポコノ・レースウェイで行われたシリーズ第11戦では、ホンダ・エンジンを使うディクソンが今季初勝利を飾った。新スペックでパワーアップもなされたホンダ・エンジンだが、今回は燃費性能でシボレーに大きな差をつけて勝利を掴んだ。
2位はチャーリー・キンボール、3位はダリオ・フランキッティで、チップ・ガナッシ・レーシングは設立以来初めての1-2-3フィニッシュを達成。この勝利はホンダにとっての今季4勝目で、ディクソンにとってはキャリア通算30勝目。さらには、チップ・ガナッシ・レーシングの共同オーナーでもあるターゲットにとっての100勝目、そして、ホンダにとってのインディカーでの200勝目と記念すべき勝利となった。
1989年以来となるポコノでのインディカー・レースは、快晴の下で始まった。ポールポジションのマルコ・アンドレッティ(アンドレッティ・オートスポート)は優勝候補の筆頭で、彼はスタートからトップを守り続けた。しかし、今日のアンドレッティ勢は次々に不運やトラブルに見舞われた。
まずはジェイムズ・ヒンチクリフが、スタート直後のターン1でクラッシュした。予選3番手でフロントロー・アウト側グリッドからスタート。チームメイトふたりの後ろ、3位を保ってターン1を曲がり始めた、その時にリヤが突然流れた。
予選でクラッシュしたEJ.ビソは、マシンの修復が完全でなかったのかマシンのハンドリングが定まらず、レースを走り続けることができなかった。
そして予選2番手で、レース序盤にアンドレッティの後ろの2番手を走り続けていたライアン・ハンター-レイ(アンドレッティ・オートスポート)は、2回目のピット・イン時にピットレーン入り口で佐藤琢磨に追突されてマシンに大きなダメージを被り、優勝戦線から脱落した。マシンをガレージで修復させたハンター-レイは、最終的に20位でゴールした。
4台体制のアンドレッティ・オートスポートだが、ポールスタートのアンドレッティだけがレースを戦い続け、彼はトップを走り続けていた。しかし、このトップを走り続けたことが逆に彼を勝利から遠ざける結果となった。
先頭を走り続けた彼は燃費が悪く、ゴールまでにライバル勢より一度多くのピットストップを行わねばならない可能性が出てきてしまった。アンドレッティは最多リード・ラップを記録したが、ゴールが近づいてからはペースを大きく落とすしかなくなった。彼は失意の10位でゴール。またしてもシーズン初勝利を掴むことはできなかった。
アンドレッティがペースを落とした後は、予選4番手のウィル・パワー(チーム・ペンスキー)がレースをリードするかに見えたが、4回目のピットストップを終えたレース終盤、トップに立ったのはディクソンだった。木曜日のオープンテスト終了時点でエンジンのマイレッジが2000マイルに近づいたため、思い切って新エンジンへの交換を彼らは決意。それによって10グリッド降格のペナルティを受けるが、ポコノでのレースならその不利を跳ね返すことも可能と考えたのだ。そして、その通りのレースをディクソンは戦うことができた。
17番グリッドからスタートしたディクソンは、1周目に14番手まで浮上し、序盤の30周で早くもトップ10入りを果たした。その後も彼は着々と順位を上げていった。
琢磨とハンター-レイのアクシデントが起こったのは61周目。その時点ではまだ燃費が大きなファクターになるとは明らかになっていなかった。しかし、ここからのスティントで燃費の重要性が一気に浮き彫りになった。そして、ホンダ・エンジンが優位にあることが判明した。
3回目のピットストップをディクソンは100周目に行ったが、パワーは1周早い99周目だった。そして、ここからの60周=2スティントはさらに燃費セーブが戦いの焦点となり、ディクソンがトップを走り、彼をチームメイトのキンボールとフランキッティが追いかけた。その後ろにはホンダエンジンを使用するサイモン・ペジナウ(シュミット・ハミルトン・モータースポーツ)が浮上してきていた
。
しかし、ペジナウは周回遅れのピッパ・マン(デイル・コイン・レーシング)に進路を塞がれ、パワー、さらにはジョセフ・ニューガーデン(サラ・フィッシャー・ハートマン・レーシング)に先行を許して6位フィニッシュとなった。
「ターゲットの100勝目、ホンダの200勝目、記念すべき勝利を達成できて嬉しい。今日、本当に勝てるとは思っていなかった。しかし、レースでは燃費の差が決定的だった。トップに立ってからのスピードも十分だった」
「ポコノは本当に素晴らしいコース。ここはインディカーが走るために作られた、チャレンジしがいがあるコースだ。とにかく走っていて楽しい。今日は気温の高いコンディションになって、レースペースがどのぐらいになるかの判断が難しかった。僕らはアグレッシブに行くことにした。それが正解だった」とディクソンは笑顔で語った。
琢磨はスタートでエリオ・カストロネベス(チーム・ペンスキー)をパスし、ピットストップとリスタートでパワーとトニー・カナーン(KVレーシング・テクノロジー)にも先行して3番手までポジションをアップ。優勝争いも可能、トップ3は十分に狙える走りを見せていた。
ピット入り口でのアクシデントは、マシンの仕上がりの良さ、上位を狙える状況だからこそ発生したものだった。ピットストップでの順位逆転も目指し、イン・ラップで一気に差を縮めようと考えたためだ。チームはマシンをガレージに運び、修理してレースに戻ることをトライ。しかし、ベルハウジングのサスペンション・マウントが破損しており、修復には長時間の作業が必要と判断され、マシンを停めることとなった。