スーパーフォーミュラをテーマに、シリーズ参戦ドライバーひとりひとりにスポットを当てて紹介していくオートスポーツwebのオリジナルインタビュー企画『ソコが聞きたい!』。第3回目は、2015年のスーパーフォーミュラで、ここまで5戦を終えてランキング首位につけているP.MU/CERUMO・INGINGの石浦宏明にフォーカス。前後編の2回でお届けします。

 スーパーGTでもLEXUS TEAM ZENT CERUMOからGT500クラスを戦っているほか、ニュルブルクリンク24時間にも参戦している石浦。スーパーフォーミュラでは、今季第2戦岡山で初のポールポジションを獲得すると、決勝でも初勝利を挙げ、セルモにとっても23年ぶりの優勝をもたらした。その後、第4戦もてぎでも再びポール・トゥ・ウインを飾るなど4戦連続で表彰台を獲得し、絶好調と言えるシーズンを送っている。第5戦までの自己採点も「90点くらい」と高い。だが、石浦は2011年限りで当時のフォーミュラ・ニッポンのシートを一度失い、14年からシリーズに復帰した経緯もある。そんな石浦が秘める国内トップフォーミュラへの思い、そして今季の飛翔の理由とは。(※このインタビューは第5戦オートポリスの現場で収録しました)

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Q:今年、国内トップフォーミュラ参戦6年目にして初優勝を挙げた石浦選手ですが、2011年限りで一旦シートを失っています。その当時を今振り返ると、どのような心境だったのでしょうか。

石浦:同世代のドライバーたちが活躍しているのを見るのは、ちょっと辛かったですね。その時スーパーGTで組んでいた(脇阪)寿一選手にも励まして頂いたのですが、やっぱり乗りたい気持ちはありました。しかも、シートを失った2011年の最後のレース(JAF Grand Prix FUJI SPRINT CUP)は2位だったので、自分としては初優勝が目前という状況だったんです。それが悔しさというか、すごく残っていました。

Q:その時以降、乗りたいという気持ちはずっと残っていたということですね。

石浦:いつチャンスが来てもいいように、シーズンオフにもF3でテストをしたりして、フォーミュラの感覚を忘れないようにしていました。それと実は、2013年には、土屋武士さんに「石浦が本気でやりたいんだったら自分たちでチームを作ろうよ」と言ってもらっていたんです。武士さんはエンジンのことでトヨタにも相談してくれましたし、トムスの舘(信秀)さんや星野一義さんなどいろいろな方から「やったほうがいいよ」、「応援するよ」という言葉をもらっていました。そんな中、武士さんとふたりでそれぞれスポンサーを探したりとか、復帰に向けて動いていたんです。

Q:その動きは、最終的にはどうなったのですか?

石浦:最終的に実現はしませんでしたが、相談をしている過程で、“動いている”ということが伝わって「そんなに乗りたいんだったら」というお話を頂けるようになったり、協力してくれる方が少しずつ増えてきたんです。今のチームで復帰することになったのも、F3のコーチとしてSUGOへ行った時に、P.MU/CERUMO・INGINGのピットの前でフリー走行中の作業の流れを見ていたら、セルモの社長から「なんで君は乗っていないんだ?」と声をかけられたことがきっかけだったんです。行動に移したことでいろいろなチャンスが出てきたので、乗りたいと思い、活動し続けていてよかったなと思っています。

●「立川さんが無線を聞いてくれているだけで安心感がある」
Q:やはり石浦選手としては、フォーミュラへの強いこだわりもあったということですよね。

石浦:ありましたし、まだ勝てると思っていたので、なぜ乗れないのだろうという気持ちでした。乗れれば絶対にやれるという自信があったので、それを証明したかったんですよね。

Q:つまり、勝てる速さは11年の時点でもあったものの、様々な環境が整ってきた結果として今の活躍があるということでしょうか?

石浦:それもあると思いますが、じゃあ前の状態でなぜ勝てなかったのかと聞かれると、メンタルの部分もあったと思います。もちろん今は自分のレベルが上がった部分もあると思いますが、チームとうまくいっていることで、メンタル的に自分の力が出しやすくなったのかなと。例えばひとつミスをしてチームとの信頼関係が崩れるような状況だと、余計にプレッシャーがかかってしまいますが、今はそういう関係ではなく、ミスをしても結果を出せていれば大丈夫だろうと思えているので。

Q:たしかに、今年の石浦選手はサーキットでもリラックスしているように見えます。何かきっかけがあったのでしょうか?

石浦:チームの雰囲気とか、立川(祐路)監督の存在ですね。立川さんは、スーパーフォーミュラではチーム監督なのですが(※スーパーGTではチームメイト)、チームの中にドライバーがもうひとりいるような感覚なんですよね。立川さん自身もSF14に乗ったことがありますし、相談してお手本とする人が横にいて、無線を聞いて僕の状況を理解してくれているというだけで安心感があります。僕と国本(雄資)選手だけでは共有しきれない部分も、立川さんが全部を見てくれているという感覚があるんです。それに、エンジニアの村田(卓児)さんも立川さんも、GTも含めると1年中ずっと一緒なんですよ。その3人でずっとレースの濃い話をできるので、同じチームで両方(SFとSGT)に乗るというメリットが確実にあるなと感じています。

Q:チームとの関係性や信頼感が良い循環を生み出しているということですね。

石浦:そうかなと思っています。それと、考えてみると1度勝った後は、だいぶ気持ち的にも変化がありました。以前は、表彰台というのは「なかなか登ることができなくて、たまに上手くいった時に登れる」というイメージがあったのですが、今は「表彰台にはいつでも登れる」という感覚になっていて、優勝も「難しいけれどがんばればできる」というように、自分の中で、遠いと思っていたところが普通に感じられるようになっているんです。チームとしても、去年くらいから僕と国本選手で交互で表彰台に乗れるようになってきて、少しずつ「表彰台が当たり前」みたいに意識が高くなってきているんです。今年急に速くなったように思われがちなのですが、実は、そんなことはないんですよね。

Q:第2戦終了後からずっとランキングも牽引していますが、ここまで来たら当然、チャンピオンを狙う気持ちもりますよね?

石浦:狙ってはいますが、いつも予選が終わったら言っているように、決勝レースはなるようにしかならないと思っているんです。レースで何が起こるかなんて分からないですし、狙ったから勝てるものでもないですからね。同様にチャンピオンについても、獲れそうだから獲りにいきたいというものでもないと思っています。一戦一戦をうまくやっていった結果、チャンピオンを獲れたらいいなという感覚ですね。もちろん獲りたいですけど、獲るために急に何かをしますとか、気持ちが変わりますということはないです。

Q:つまり、石浦選手がフォーミュラでフォーカスしているのは、優勝やタイトルよりも、どちらかと言えば予選の速さということなのでしょうか?

石浦:そうですね。決勝は何よりも最前列からスタートするということが大切なんですよね。勝ったレースは両方ともポールからのスタートでしたし、今まではポールが獲れなかったから勝てなかったんだなと感じています。また、富士戦のように予選で沈んだ時にも、以前だったら上がって来られなかったかもしれませんが、今は上位に上がれるようになったので、そのあたりは1勝したことでメンタルが変わったことも大きいのかもしれません。

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 後編では、石浦が自身の強みや現在の速さの要因、そしてWEC世界耐久選手権への思いなどを語ります。(→後編はこちら

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